米国株の上昇は続くか バイデン新政権下の展望
プロに聞く投資戦略

「2021年も米国株にはオーバーウエート(強気)だ。建設的なマーケットが続く」
世界最大の資産運用会社、米ブラックロック。同社の日本法人でチーフ・インベストメント・オフィサー(最高投資責任者)を務める福島毅さんはこう語る。米国株に強気の見方を示すのは、ブラックロックだけにとどまらない。米国の他の資産運用大手も同様だ。

「SPDR(スパイダー)」というブランドのETF(上場投資信託)で知られる米ステート・ストリートの運用部門、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ。その日本法人のマネージング・ディレクター、横谷宏史さんも「米国株の上昇相場は続く。ダウ工業株30種平均など米国株の主要指数は年率7%程度のリターンを期待している」と話す。
日本にもファンが多い伝説のファンドマネジャー、ピーター・リンチ氏が在籍していたことでも有名な米フィデリティ。同社の日本法人、フィデリティ投信でシニア・プロダクト・ストラテジストを務める藤原嘉人さんも、「米国企業の持続的な成長力とコロナ禍で悪化した経済の回復という2つの要因の相乗効果によって、米国株は堅調に推移する」と分析する。
緩和マネーが相場を下支え
強気の見通しの背景には、中央銀行の米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和がある。コロナ禍を受けて実施したゼロ金利政策をFRBは23年末まで続ける方針だ。
この金融緩和で金利の指標になっている米10年物国債の利回りは1%を割り込んだ。利回りがさらに下がって価格が上昇する余地がなくなり、投資対象としての魅力が失われた。
金融緩和で膨れ上がった投資マネーは他に行き場を失い、株式市場へと流れ込む。その結果、「相場の調整があってもすぐに株が買い戻される」(ブラックロックの福島さん)という状態が続く。

さらに、1月20日に就任したジョー・バイデン米大統領が率いる民主党政権は、コロナ禍で悪化した経済を立て直すために、大規模な財政支出を実行する方針だ。新型コロナウイルスのワクチンの接種開始と相まって、景気回復への期待も膨らんでいる。
コロナ禍に襲われた20年は、それを追い風にして業績を拡大した米IT大手のGAFAMやテスラなど、ハイテク分野のグロース(成長)株に資金が集中。それが全体相場の急回復をもたらした。
「経済の回復が鮮明になれば、シクリカル(景気循環)株やバリュー(割安)株にも投資家の買いが広がるだろう」(ステート・ストリートの横谷さん)

投資の仕方には工夫が必要
騰勢が続くとみられている米国株だが、投資の仕方には工夫も求められそうだ。先述したように20年の相場は、資金が集中していたハイテク株を買えば大きくもうけることができる分かりやすい状況だった。21年の相場はそれとは様相が異なる可能性があるからだ。
「GAFAMの成長は止まらないが、ハイテク一辺倒でいいステージは終わった」。フィデリティの藤原さんはこう指摘し、クオリティー(質)の高いシクリカル株や中小型株にも分散投資すべきだと説く。

ブラックロックの福島さんも、ハイテク株を主軸にしながら中小型株にも分散投資する必要性を挙げる。ステート・ストリートの横谷さんも「企業のクオリティーに着目して選別することが重要だ」と主張する。
(中野目純一)
[日経マネー2021年3月号の記事を再構成]
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