保有する特許に着目 「機械」分野の成長株を探す
工藤特許探偵事務所

企業が保有する特許・技術の経済的価値を数値化した指標であるYK値(下囲み参照)。この値が中長期で上昇している銘柄を「技術成長株」と定義し、業種ごとに上昇率が高い銘柄を紹介する。
今回取り上げるのは「機械」分野の技術成長株。産業用機械や機械部品、ロボットなどを手掛ける企業が多く、技術力が企業の成長を左右する業種の一つだ。機械分野で注目されているのは、水処理など環境機械やドローン(小型無人機)に関する技術だ。特に中小企業では、機械部品や製造機械に関する開発が活発であり、これらの分野でYK値が上昇している。
YK値の上昇率1位はトーヨーカネツ。物流センター内の搬送システムを手掛ける。機械やプラントだけではなく、コンサルティングなどを含めたソリューション事業も展開する。
特許的に強みを伸ばしているのはピッキング支援などのセンター内搬送に関するシステム。AI(人工知能)やAR(拡張現実)を活用したシステムなども開発している。現在、物流業界は慢性的な労働力不足状態。物流センターの業務を効率化するシステムの需要は伸びていくと考えられるため、同社の成長も期待できる。
第2位は北川鉄工所。鋳造技術をコアに金属部品や工作機器を提供する会社だ。立体駐車場事業も手掛ける。2018年に無線操縦ヘリコプター大手のヒロボーと、産業用ドローン(小型無人機)の開発・製造・販売を行うAileLinXを設立。これに関連し、ドローン関連の保有技術が大きく伸びている。産業用ドローンは物流業界を革新する可能性のある技術であり、今後の動向に注目していきたい。
第3位は野村マイクロ・サイエンス。半導体製造などに必要な超純水製造装置を提供している。ベトナムに子会社を設立するなど、アジアを中心に海外市場にも積極的に展開する。伸びているのはやはり超純水関連の技術だ。水処理という産業に必須の分野に特化し、技術力を着実に向上させている。今後も順調に業績を伸ばしていくだろう。
第4位の月島機械は上下水道の水処理プラントなどを手掛ける。20年には高速かくはん機関連のプライミクスを傘下に収め、リチウムイオン2次電池部材(電解液など)の製造装置などに進出。リチウムイオン2次電池材料などに関する技術力が大きく向上した。2次電池はスマートフォンやEV(電気自動車)などに必須のデバイス。この分野で強みを発揮することで同社の成長は加速していくだろう。
今回取り上げた銘柄はいずれも、高い技術力を生かして積極的に新規分野を開拓している企業といえる。
YK値とは? 技術力(特許価値)で成長株を探す方法
YK値は工藤一郎国際特許事務所が開発した指標で、出願された特許に対する閲覧請求や無効審判など、ライバル企業が特許の内容を調べたり、無効にするために弁理士に支払った費用から算出する。弁理士コストは50万~100万円程度、訴訟を含めた場合は数百万円程度であり、YK値はこの金額を基準として算出する。なお、実際の手続きには弁理士コスト以外も必要で、全体では弁理士コストの10倍、数千万円程度になることもある。ただし、全体のコストと弁理士コストはおおむね比例するため、弁理士コストから技術の価値は推定できる。YK値は特許価値評価ウェブサービス「PATWARE」で参照可能。


[日経マネー2021年6月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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