保険が住宅ローンを肩代わり 覚えておきたい団信の基本
生保損保業界ウオッチ

■フラット35は任意、民間は加入必須で8大疾病などにも対応
■健康状態と住宅ローン借り換えに注意が必要
住宅ローン返済中の「万が一」に備える
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンを借りた人が返済期間中に死亡または高度障害状態になった場合、残債相当分の保険金が貸し手の金融機関に支払われ、ローンが完済されるという生命保険です。民間金融機関で住宅ローンを組むには団信加入が必須ですが、「フラット35」は任意です。フラット35とは、住宅金融支援機構と提携する金融機関が扱う全期間固定金利型住宅ローンのことです。
以前のフラット35の団信(機構団信)はローン返済とは別に保険料を支払うタイプでしたが、2017年10月以降申し込み受け付け分から金利に含まれるようになりました(新機構団信)。
保障内容もリニューアルしています。以前は死亡・高度障害状態になった時に保険金が支払われましたが、新機構団信は死亡・身体障害状態に該当した時に支払われます。

特約を付加した新3大疾病付機構団信は、死亡・身体障害状態に加え、「3大疾病により所定の状態に該当した時」「病気やケガで所定の介護状態に該当した時」にも保険金が支払われます。この特約の有無で住宅ローンの金利が変わります。
民間金融機関の団信は、死亡と高度障害状態だけを保障するものから、3大疾病や8大疾病までカバーするものなど多彩です。保障が手厚いと安心感はありますが、金利が高くなるのが一般的。住宅ローンを組んでから保障内容を見直すことはできません。保険金が支払われる条件も複雑ですから、必ず中身を確認し、コストと必要性のバランスを見極めましょう。
健康状態によって加入できないケースも
団信も一般の生命保険同様、加入前に健康状態などを告知します。告知内容によっては団信に加入できず、住宅ローンが組めないこともあります。そのような場合でも、引き受け基準緩和型の団信であれば、加入できるかもしれません。
もう一つ気を付けたいのが借り換えです。住宅ローンを借り換えると、それまでの団信は契約終了となります。団信の保障内容を見直すチャンスである半面、健康状態に問題があれば借り換えできないこともあります。住宅を購入する際には、ライフプランをよく考え、借り換えをしなくても済むような内容でローンを組みましょう。
最近は共働きが当たり前になり、住宅ローンを夫婦で組むケースも増えています。夫婦がそれぞれ住宅ローンを借り、互いに連帯保証人になる「ペアローン」と、夫婦のうち1人が主債務者となり、もう1人は連帯債務者として主債務者と同等の返済義務を負う「連帯債務型型」があります。
前者は夫婦それぞれが団信に加入しますので、どちらかに万一のことがあった場合、その人の残債が保険金で清算されます。後者の場合、主債務者は団信に加入できますが、連帯債務者が加入できるかどうかは金融機関等によって異なります。なお、新機構団信には、どちらかに万一のことがあれば全ての残債が清算される「デュエット(夫婦連生団信)」という連帯債務型のプランもあります。
大手生命保険会社勤務の後、ファイナンシャルプランナーとして独立。生活設計塾クルー取締役を務める。『医療保険はすぐやめなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。一般社団法人FP&コミュニティ・カフェ代表。
[日経マネー2021年7月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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