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総会には会社のカラーが出る 億万株主はここをチェック

スゴ腕個人投資家の株主総会活用術(下)

投資先企業の経営陣に直接会って質問もできるなど、参加すると個人投資家にとってもメリットが多い株主総会。総会の本番では、具体的にどのような点に注目したらいいのか。スゴ腕個人投資家たちの活用術を紹介するシリーズの最後は、彼らに当日のチェックポイントを解説してもらった。

ポイント1 総会の裏方をチェックする

「株主総会には、会社の体質が色濃く反映される」と話すのは、株式評論家としても活躍するスゴ腕個人投資家の坂本慎太郎(Bコミ)さんだ。体質が現れるのは、総会の議事進行や質疑応答といった表舞台に限らない。会場までの案内や受付の対応といった裏舞台からも感じ取れる。

優待株投資家のmtipsさん(ハンドルネーム)は「ささいなことが意外と大事。受付の丁寧な対応から、きっとこの会社は、総会を準備するメンバー全員が成功を目指して力を合わせてきたに違いない。そう感じられることがあったりする」と語る。

一方で、会社の悪い面が垣間見えることも。「受付の対応がずさんだったり、案内図のプラカードを持った人がスマホを見ていたりした。その一方で社長が質疑応答で『人材育成に力を入れている』と話していて、現場を把握していないと思った」(mtipsさん)

ポイント2 経営トップのプレゼンを聞く

「株主総会でのグローバル企業やIT企業の社長が披露するプレゼンテーションは、一流のエンターテインメントだ」。mtipsさんはこう指摘する。

「つい見ほれてしまうこともある。営業職の人なら、自分のプレゼンスキルの向上にも役立つのではないか」と続ける。

専業投資家のろくすけさん(ハンドルネーム)は「最近は事業報告の動画を流して、それにナレーションをかぶせるというパターンが多い。その際に社長が自分の言葉でビジョンを語っているかどうかをチェックしている」と話す。

社長が自分の言葉で語っているかどうかを重視するのは、他のスゴ腕も一緒だ。「招集通知に記載された事業報告を読み上げる社長は評価できない。言葉を補って分かりやすく説明しようと努める社長は好感が持てる」と専業投資家のアイルさん(ハンドルネーム)は語る。

ポイント3 質疑応答に耳を澄ます

株主の質問に社長や役員が回答する質疑応答は、株主総会のハイライトだ。「事前にどんな質問が出るか分からない。どう回答するかで、頭の回転が速いかどうかが分かる」とろくすけさんは話す。

さらに、業績などの数字が頭に入っているか。役員の回答からは担当事業に対する情熱を感じられるか。こうした点をろくすけさんはチェックしている。

mtipsさんは「機関投資家などプロの質問が勉強になる。私は自分では質問せず、聞き役に徹している」と語る。

専業投資家の内田衛さんは「自分が聞きたいことを他の株主が質問してくれることもある。さらに他の株主の質問から、思いも寄らぬ有益な情報を得られることもある。質疑応答はじっくりと耳を傾けることが必要だ」と強調する。

ポイント4 役員間のやり取りを見る

社長と他の役員の回答のバランスやコミュニケーションの様子を確認する。質疑応答では、この点も重要なポイントだ。

アイルさんは「社長と役員が役割をしっかりと分担できているか。その点をチェックする。社長と事業担当の役員がバランスよく回答するのが好ましい」と話す。

坂本さんは「役員の回答に社長が補足するかどうか。それが一つのポイントだ」と指摘する。「補足しなかったり、自分に対する質問でも、いちいち他の役員に確認したりする社長は、会社を掌握し切れていない可能性がある」

さらに、坂本さんは次のようなポイントも挙げる。「役員の回答を遮って自分で説明したり、強い口調で役員に回答を促したりする。そんな社長の場合は、ワンマンの懸念がある」

ポイント5 株主の質をチェックする

「株主総会では、株主のレベルを確かめるのも重要なポイント」。ろくすけさんはこう指摘して次のように続ける。

「株主総会に参加すると、株主からよく練られた質問が多く出る会社とそうでない会社があることに気付く。この違いは、実際に複数の総会に参加してみないと分からない」

総会に参加する前に招集通知に記載された事業報告や決算短信などの資料を読み込み、その中で抱いた疑問を聞いたり、数字の背景にある経営者の考えを引き出したりする。こうした良問が多い場合には、長期で株を持とうとしている株主が多いと考えられる。「株価も安定する」とろくすけさん。

坂本さんも株主の顔ぶれをチェックする。「その会社の商品やサービスのファンが多いと、長期保有が多いと推定できる」と話す。

ポイント6 説明会や懇親会にも参加する

株主総会では、総会が終了した後に会社の説明会や役員との懇親会を開く企業も多い。「総会は議事録が残るので、質疑応答の回答は想定問答に沿ったものになりがちだ。説明会では、緊張が和らいだ社長がざっくばらんに質問に応じ、踏み込んだ回答をしてくれることが多い。人柄もより感じられる」とアイルさん。

総会では聞き役に徹しているmtipsさんも、懇親会では社長との談笑の輪に加わって言葉を交わすようにしている。

坂本さんも「説明会では社長から前向きな発言が聞かれることが多い」と話す。「総会の招集通知に明記していなくても、説明会を開く企業もある。通知に明記されていない場合は、企業に電話して説明会の有無を確認するといい」(坂本さん)

法改正で完全オンライン化が実現へ
企業の情報開示姿勢に懸念も

コロナ禍で採用が拡大しているのが、総会の模様をインターネットで配信する「オンライン株主総会」だ。「バーチャル株主総会」とも呼ばれる。

会社法で会場を設けることが求められているため、会場との併用で実施されている。ネット配信を視聴するだけの「参加型」とネットで質問や議決権行使もできる「出席型」の2種類がある。

東京証券取引所の調査(6月13日時点)などによると、今年6月に株主総会を開催する3月期決算企業2172社のうち、オンライン株主総会を開催する予定の企業は318社。前年同月の実績(91社)の3.5倍に増える見込みだ。318社のうち、9割超の298社は参加型。出席型は20社で、前年同月の実績(9社)の2倍に増える見通しだ。

6月9日には、会場を設けずネット配信だけにする完全オンライン株主総会の開催を解禁する条文が盛り込まれた産業競争力強化法の改正案が、参議院で可決されて成立した。しかし、法案の成立が遅れたために招集通知の発送などの作業が間に合わず、6月に実施する企業はない見通しだ。一方で複数の企業が、完全オンライン総会を実施できるようにする定款の変更議案を今年6月の株主総会で諮る予定だ。

スゴ腕たちも賛否両論

完全オンライン化には、先行している米国でも、「株主の質問を恣意的に採否するようになるのでは」といった懸念が広がっている。日本でもアイ・アールジャパンホールディングスの定款変更議案に対して、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が反対を推奨した。「株主と経営陣の有意義な交流を妨げる可能性がある」と理由を挙げている。

スゴ腕たちの間でも賛否が分かれている。「完全オンライン化で会場の制約がなくなり、個人株主が参加しやすい日時に開催する会社が増える契機になるかもしれない」(アイルさん)。こうした期待がある一方で、「会場でのリアルな総会でしか体験できない臨場感がある。リアル総会は残してほしい」という声も根強くある。

(中野目純一)

[日経マネー2021年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年8月号 コロナ後相場の稼ぎ方&勝負株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/6/21)
価格 : 800円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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