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医薬以外でも存在感 「バイオテク」関連の技術割安銘柄

工藤特許探偵事務所

健康食品として注目されるオリゴ糖もバイオテクノロジーの産物の1つ(写真はイメージ=PIXTA)

「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき、技術力に比べて株価が安い「技術割安株」を、工藤一郎国際特許事務所の力を借りて探してみた。

意外に広いバイオテクノロジーの応用分野

バイオテクノロジーとは、生物の特性や機能を応用して、実社会に有益な利用法をもたらす技術全般をいう。現在、最も注目されている応用分野はバイオ医薬や再生医療だが、微生物を利用した食品製造や、植物を材料に燃料やプラスチックを作り出すバイオマスなど、様々な分野で幅広く応用されている。今回は「バイオテクノロジー」関連銘柄に着目、以下「YK値」(下囲み参照)に対して株価が割安な上位4銘柄を紹介する。

第1位昭和産業。製粉、油脂の大手で、穀物加工品を中心に食品素材や配合飼料を提供している。同社によれば食品メーカーの中で穀物取扱量は日本一だという。近年は食品原料関連企業のM&Aを積極的に行っており、機能性食品など、事業分野拡大を目指している。

バイオ関連では、でんぷんに転移酵素を作用させて製造する機能性の食品素材などに強みを持つ。機能性オリゴ糖の一種、「イソマルトオリゴ糖」などが代表例だ。このほかにも様々な生体調整機能を持つ製品を取り扱っている。今後、食に対する健康意識の高まりにつれて業績を伸ばしていくだろう。

第2位森下仁丹。祖業は仁丹だが、現在は健康食品や医薬品の通信販売とシームレスカプセルが主力製品。シームレスカプセルとは、医薬品粉末や液体などを包み込む極小の球形カプセルのことで、医薬品成分を保護、腸まで届くようにして効能を高めたり、飲みやすくしたりできる。

同社開発のシームレスカプセルは、微生物やDNAもカプセル化することができ、コロナ向けのワクチンを口から摂取できるようになる可能性があるなど、大きな将来性を秘めている。2020年12月には「第9回高機能プラスチック展」へ出展。シームレスカプセルの活用範囲を広げようとしている。

第3位長瀬産業。機能化学品などを取り扱う化学商社大手だ。商社でありながら、研究活動にも注力。2012年に林原を子会社化することでバイオ関連を強化。米IBMと共同でAI(人工知能)を用いた素材開発のためのクラウド情報サービスを展開するなど、常に新規分野へ挑戦している。

特に近年はバイオを駆使した物質生産技術の開発を行っており、独自の技術を多数持つ。物質生産技術は模倣がされにくく、長期的に強みを維持できる傾向がある。堅実に業績を伸ばしていくだろう。

第4位多木化学は化学肥料の大手。機能性材料や水処理薬剤なども手掛ける。人造肥料の開発に日本で初めて成功した会社。近年も活発な研究開発を行っており、2018年にはバカマツタケ(マツタケの近縁種のキシメジ科のキノコ)の完全人工栽培に成功したことで注目を集めたが、再生医療用の細胞培養用コラーゲン溶液にも強みがある。

この溶液は熱帯魚ティラピアのうろこ由来。魚類には人に感染するウイルスが確認されておらず、細胞培養時の安全性が高いといわれている。再生医療分野での活躍も期待できる企業だろう。

今回取り上げた銘柄は中長期的に見て、大きな成長の源泉となる技術を有していると思われる企業である。今後どのように成長していくのか注目していきたい。

YK値とは? 特許価値で割安株を探す方法

「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき割安株を探す。特許の経済価値は工藤一郎国際特許事務所が開発したYK価を用いる。YK価とは、出願された特許に対する閲覧請求や無効審判など、ライバル企業が特許の内容を調べたり、無効にするために弁理士に支払ったりした費用から算出する。弁理士コストは50万~100万円程度、訴訟を含めた場合は数百万円程度であり、YK値はこの金額を基準として算出する。なお、実際の手続きには弁理士コスト以外も必要で、全体では弁理士コストの10倍、数千万円程度になることもある。ただし、全体のコストと弁理士コストはおおむね比例するため、弁理士コストから技術の価値は推定できる。

独自に選んだテーマごとに各社のYK値と時価総額を図のような軸を持つグラフにマッピングすると、妥当と思われる近似曲線が浮かび上がる。この近似曲線から左に大きく離れている企業(図ではA社)は、特許価値、つまり技術力比で時価総額が低い(割安)と考えられる。
同事務所によると、A社の位置は2年ほどかけて近似曲線に近づいていく傾向がある。これは、特許技術が製品化されて収益に寄与。時価総額が膨らむためと考えられる。この連載では、業種ごとの近似曲線から、左への乖離が大きいほど、株価が割安な銘柄として扱う。
工藤一郎くどう・いちろう
弁理士。工藤一郎国際特許事務所所長。大阪大学工学部卒。NECで磁気ヘッド開発に従事した後、知的財産部などで特許実務に携わる。2000年4月に工藤一郎国際特許事務所設立。特許の経済的価値の数値化や、特許価値の比較を容易にする技術業種分類などを開発。
[日経マネー2021年3月号の記事を再構成]
日経マネー 2021年3月号 優待&高配当株 2021年の稼ぎ方
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/1/21)
価格 : 750円(税込み)
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