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億万株主は総会にこう備える 社長にドッキリ質問も用意

スゴ腕個人投資家の株主総会活用術(中)

スゴ腕の個人投資家たちは投資先企業の株主総会に積極的に参加して、経営陣の人となりや組織風土をチェックしている。そのノウハウを紹介するシリーズの2回目は、スゴ腕たちが総会出席に向けて行う準備作業に焦点を当てる。

ポイント1 開催日時や説明会の有無をチェック

株主総会に向けた準備の第一歩は、総会の開催概要を確認することだ。招集通知で開催日時や会場の場所、当日のスケジュールなどをチェックしよう。実はこれだけでも、企業の総会に対する姿勢が分かると、専業投資家のアイルさん(ハンドルネーム)は指摘する。

「平日は仕事などで参加しにくい株主も多い。そうした事情を勘案して土日に開催するといった配慮をしている企業や、自社の事業や商品などを理解してもらうための説明会を開く企業は、個人株主を尊重するスタンスを取っている会社とみていい」(アイルさん)

ポイント2 総会の関連資料を読み込む

株主総会に参加する前に、スゴ腕たちは株主総会の招集通知に掲載された事業報告や決算短信などの資料、企業の関連サイトの情報などをチェックする。例えば、専業投資家のろくすけさん(ハンドルネーム)は過去の株主総会の質疑応答を見返して、発言した内容をその後に実行しているかどうかを確かめているという。

株式評論家としても活躍している坂本慎太郎(Bコミ)さんは企業の求人サイトをチェックし、どんな人材を募集しているのかを確認している。さらに坂本さんが勧めるのが、市販の株主総会想定問答集に目を通すこと。「企業がどんな想定をしているのかを知ることで、深い質問ができるようになる」(坂本さん)

ポイント3 総会ならではの質問を練る

資料を読み込んで疑問が湧いたら、株主総会で質問することを検討しよう。「質問なんてハードルが高い」と思うかもしれないが、まずは気負わずに質問してみるといい。スゴ腕たちも次のようにアドバイスする。

「良い質問をしようと考えなくてもいい。疑問に思ったことを素直に質問すればいい」(アイルさん)

「議案に関する質問だけにしてくださいなどと言われることもあるが、それに縛られずに聞きたいことを聞けばいい」(坂本さん)

総会に慣れてきたら、総会でしか聞けないことを引き出す質問を考えたい。「業績目標などの数字はIR(投資家向け広報)でも確認できる」。坂本さんはこう指摘し、次のように続ける。「将来の成長イメージや成長を実現する道筋などは経営者でしか語れない。こうした定性的なことを総会では質問すべきだ」

アイルさんも、「知りたいのは今期や来期以降の見通しだ。事前に資料を読み込んで、見通しを聞き出す質問を考える」と話す。

社長の回答で再購入を見送り

ろくすけさんは疑問を整理して、IRに照会するものと総会で社長や役員に聞くものとに区別しているという。「社長や事業を担当する役員しか回答できないのは、長期のビジョンや事業の見通しといった大局に関する質問だ」と語る。

大局を聞く質問の他に、社長や役員のとっさの反応を見る質問も用意する。これは能力をチェックするためだ。例えば、食品メーカーの株主総会の質疑応答で、新設工場の売上高が3億円に満たなかったことを指摘。その上で、自分で試算した工場の損益分岐点の数字(売上高20億円)を示して、実際はどうなのかと尋ねた。「社長の頭に数字がしっかり入っているかどうかも確かめたかった」(ろくすけさん)

同社の社長は「おっしゃる通り、20億円の売上高をつくらないと採算は取れない。今期は同工場の売上高は7億2000万円の計画。来期中には20億円まで何とか持っていきたい」と回答。これを受けて、ろくすけさんは新設工場で採算が取れるようになるまでには時間がかかると判断し、このメーカーの株の再購入を見送った。

ろくすけさんは、企業が決算短信などの開示資料に詳しく記していないことも聞くように心がけている。例えば、家具・インテリアチェーンのニトリホールディングスが21年5月に開いた株主総会では、婦人服ブランドの「Nプラス」について質問した。招集通知の事業報告や決算短信などに詳しい記述がなかったからだ。「大規模ショッピングセンターの店舗を閉じて、代わりにニトリの店舗内への出店が増えていた。そこで出店戦略について聞いた」と振り返る。

この質問には商品担当の役員が回答した。「Nプラスの出店は実験の段階。実験の結果、大商圏型のショッピングセンターに比べて、主要な顧客層である主婦が多く住む小商圏型の店舗が好調であるため、ニトリ店舗内へ出店している」と説明したという。「恐らく買収した島忠との統合を優先しているのだろう。無理な拡大路線を取ってはいない点は安心した」(ろくすけさん)

こんな質問はNG

「株主総会の質疑応答で、自己紹介や株の購入経緯を長々と話す人がいる。他の株主の質問時間が減るので、そういうことはやめてほしい」

こう語るのは坂本さんだ。さらに次のように続ける。「店舗の椅子が座りにくいなど、苦情を言う人もいる。企業はウェブサイトなどにお客様相談窓口を設けているのだから、苦情はそちらに寄せるべきだ。総会では、もっと本質的な質問をしてほしい」

アイルさんも「長い質問は迷惑だ」と話す。さらに「株価が下がったことへの不満を言う人もいるが、やめてほしい」と付け加える。ろくすけさんは、「総会では総会でしか聞けないことを質問すべきだ。招集通知の事業報告に記されていることや、IR(投資家向け広報)に聞けば分かることは聞くべきではない」と話す。

お土産や懇親会の廃止に不満の声も

「以前から減っていたお土産や懇親会がコロナショックで一気になくなり、株主総会に参加する楽しみが減った」

キャリアデザインセンターのお土産はゴディバのチョコレート
こう話すのは、株主優待目当ての株も保有する専業投資家の内田衛さんだ。特に楽しみにしていたのは、焼酎を主力とする酒類メーカー、オエノンホールディングスが総会後に開催していた「株主様向け展示試飲会」。料理を楽しみながら同社の製品を試飲することができて、株主たちに人気だった。20年3月の定時株主総会から、開催が中止されている。

不二家のお土産は自社製品の詰め合わせ
優待株投資家のmtipsさん(ハンドルネーム)も、同社の試飲会を楽しみにしていた一人。お土産や懇親会が一斉になくなって残念に感じている。特に好きだったのは、キャリアデザインセンター不二家のお土産だ。キャリアデザインセンターは20年12月、不二家は21年3月の定時株主総会で、それぞれ配布を中止した。

(中野目純一)

[日経マネー2021年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年8月号 コロナ後相場の稼ぎ方&勝負株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/6/21)
価格 : 800円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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