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個人の20年の運用成績、6割がプラス 海外投資広がる

2万5000人調査で見えた個人投資家のリアル(上)

(更新)
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日経マネーが毎年実施している「個人投資家調査」。今年の結果からは、コロナショック後の相場上昇に乗って資産を順調に増やした投資家が多いことが明らかになった。米GAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)などの人気株の大幅上昇や、ネット証券の売買手数料の引き下げで、米国株をはじめとした海外投資を手掛ける個人が増えたことも背景にある。調査結果を2回にわたり紹介する。

上昇相場に乗った個人の運用は好調

調査は個人投資家を対象に4月15日~5月7日にインターネット上で実施。2万5544人から回答を得た。回答者の投資歴は1年未満が22.9%、1年以上5年未満が29.4%、5年以上10年未満が12.2%。10年以上のベテラン投資家は27.2%だった。未経験者も8.3%いた。

投資先では日本株が最も多く65.6%(複数回答)。2番目に多かったのが日本株の投資信託・ETF(上場投資信託)で31.3%が保有していた。前年調査と比べ保有率が伸びたのが先進国株の投信・ETF(28.7%)と先進国の個別株(17.7%)で、投信・ETFは前年調査より6.5ポイント、個別株は4.6ポイント増えた。

2020年3月のコロナショック以降、急回復を遂げた株式相場を背景に、個人投資家の運用成績は好調だった。投資歴6カ月以上の人のうち、20年のリスク資産の運用成績がプラス(投資元本に対する騰落率がプラス1%以上)だった人は58.8%。日経平均株価が30年ぶりに3万円台に乗せるなど、日本株が上昇基調だった21年1~3月は64.3%にのぼった。

「勝ち組」に多い投資スタイルは

20年のリスク資産の運用成績がプラスだった人の投資スタイルでは、インデックス型投信やETFなどを使った海外主体の「国際分散投資」(20.2%)が最多。「日本の高配当・優待株」(15.8%)、「先進国株」(14.8%)が続いた。保有する資産をみると、プラス運用だった人は先進国株や先進国株投信の保有率が全体平均より高い。20年の年間上昇率は日経平均株価が16%に対し、ハイテク銘柄の割合が高い米ナスダック総合株価指数は43%。巨大IT企業をはじめとしたハイテク株の強さが際立った。米国株をはじめとした海外資産への投資が好パフォーマンスにつながったようだ。

昨年1年間の日本株の運用成績がプラスだったのは52.5%。10%以上のリターンをあげた人も24.7%いた。日本株で10%以上のリターンをあげた人の銘柄選定基準をみると「成長性重視」がトップ。「割安」、「配当利回りが高い」が続いた。

「資産1億円超え」の3割は会社員

1億円を超える資産を築いた個人投資家は603人。全体に占める割合は2.4%(前年は1.9%)だった。年代は50代が最も多く、60代が続いた。投資歴10年以上のベテラン投資家が8割以上を占めた。職業では、前年調査で「無職(リタイア)」を抜いてトップになった「会社員」が今年も最多で3割を超えた。女性の億超え投資家も53人いた。

億超え投資家に多い投資スタイルでは、日本の高配当・優待株投資(18.3%)と大型優良株投資(18.0%)がほぼ同率。先進国株投資(14.1%)が続いた。先進国株投資を手掛ける億超え投資家は前年調査より5.5ポイント増加した。

投資の目的は「老後資金」、若年層には新潮流も

個人投資家が投資をする目的で最も多かったのは「老後の資産づくりのため」で4割を超えた。20~60代の全ての年代でトップで、50代では57.0%、60代は49.4%に達した。

20~40代で老後資金に次いで多かったのが「早期リタイア実現のため」。20代で19.2%、30代で17.1%と2割近くにのぼった。数年前から米国の若者層に広がっている「FIRE(Financial Independence, Retire Early、経済的に自立し早期退職を果たす)」ブームが、日本の若い投資家層にも影響を及ぼしていることが見て取れる。

税制優遇制度の活用広がる

つみたてNISA(少額投資非課税制度)を利用している人は47.2%で、前年調査より6.8ポイント増加した。年代別では若い層ほど利用率が高く、20代で65.8%、30代で58.8%に達した。投資歴別にみると「6カ月未満」(66.5%)が最も高く、「6カ月以上1年未満」(61.8%)が続いた。

つみたてNISAは、金融庁が長期の資産形成に向くと認めた低コストの投信の中から運用商品を選ぶ仕組み。年40万円まで投資でき、最長20年間非課税で運用できる。大手ネット証券では100円から積み立てが可能で、いつでも引き出し可能。まとまった資金がなくても始めやすく、自動的に積み立てられて手間がかからない点が、投資初心者を引き付けているようだ。

iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用していたのは29.9%(前年は28.1%)。40代の利用率が最も高く、50代が続いた。iDeCoは掛け金が所得控除の対象となり、受取時も税の優遇が受けられるなど節税メリットは大きいが、運用資金は原則60歳まで引き出せない。使途が老後資金に限定されることもあり、20代の利用は2割強にとどまった。

新しいサービスで利用者を大きく伸ばしたのが「ポイント投資」。利用率は50.3%で、前年調査より8.2ポイント増えた。30代の利用率(59.3%)が最も高い。ロボットが資産運用方針を指南する「ロボットアドバイザー(ロボアド)」は12.8%、キャッシュレス決済は69.7%でいずれも前年と同水準だった。

投資歴6カ月未満の投資初心者は15.2%。30代以下が過半数を占めた。証券口座開設のきっかけは「自分で老後の資金を確保したいと思った」(54.5%、複数回答)が最も多く、「投資でもうけたいと思った」(41.8%)、「経済の勉強をしたいから」(25.3%)が続いた。

調査結果の詳細は21日発売の『日経マネー』8月号に掲載している。

日経マネー 2021年8月号 コロナ後相場の稼ぎ方&勝負株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/6/21)
価格 : 800円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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