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保有特許に注目 「その他製品」関連の技術成長企業

工藤特許探偵事務所

技術的な観点から有望銘柄に注目する「工藤特許探偵事務所」。過去2年間におけるYK値(下囲み参照)の成長率が高い銘柄を、業種ごとに紹介している。

今回取り上げるのは「その他製品」。家具や文具など、生活に身近な製品を手掛ける企業が多く属する業種だ。印刷会社が持つ素材関連特許、椅子やベッドなどの家具関連特許、ボールペンやインクなどの文具関連特許が注目されている。電子楽器や美容用機器のようなニッチ分野に注力する中小企業も多い。扱うのはシンプルな構造の製品が多いが、実は模倣しやすい製品ほど特許が大きな力を発揮する。特許という観点では奥の深い製品分野だ。以下、YK値成長率上位4銘柄を紹介する。

第1位パラマウントベッドホールディングスは医療・介護用ベッドの最大手。YK値が伸びたのもこのベッドに関する技術だ。医療・介護用のベッドは低床である方が安全で便利なのだが、低床であるほどベッド下のスペースが狭くなるため、角度調節などの機能を組み込むのが難しくなる。同社のベッドは独自の仕組みで、低床でありながら多様な機能を実現している。高齢化で介護需要が増える中、同社の製品もさらに売り上げを伸ばしていくだろう。将来有望な市場として東南アジアや中南米を重視。さらなる国際化も目指している。

第2位オカムラ。オフィス家具の国内シェアはトップクラスだ。オフィス家具のIoT化やAI(人工知能)の活用など先端分野にも取り組んでいる。天板の高さを自由に調節できるデスクの特許でYK値を伸ばした。これは複数の人でデスクをシェアする場合や、用途に応じて天板の高さを変更する必要がある場合に有用。コロナ禍や働き方の多様化の影響で、オフィスの在り方に変革が求められる流れの中、同社の活躍も期待できる。

第3位三菱鉛筆はボールペンやサインペンなど筆記具の大手。近年は画面入力用のタッチペンなど、デジタル分野の製品にも注力している。得意とするボールペンやインクでさらにYK値を伸ばした。ペーパーレスの時代でもボールペンのような基本的な筆記具への需要は底堅い。日本の高品質な筆記具は海外でも大きな需要がある。同社の売り上げも堅実に推移するだろう。

第4位凸版印刷。印刷大手で素材やIT関連事業や電子部品なども手掛ける。DX(デジタルトランスフォーメーション)事業も推進しており、2025年度営業利益において同事業の構成比30%を目指す。YK値が伸びているのは2次電池の外装素材に関する技術。この素材は家庭用の蓄電池や、電気自動車用の電池などに使用できる。脱二酸化炭素の潮流に乗り、この製品の将来も有望とみる。

今回取り上げたのは、日常的によく目にする製品を手掛けている企業だが、いずれもその技術力は確固たるものだ。紹介した4銘柄以外では、2次元バーコードシステムや食品用の容器に強みがある共同印刷、コラーゲンやゼラチンを提供するニッピ、シートやフィルムに強みがあるリンテックなどが技術優良銘柄として挙げられる。

この連載では、企業が保有する特許(=技術力)に着目して有望銘柄を発掘する。「企業が保有する特許の経済価値(技術力)の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき、成長株を探していく。
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YK値とは? 技術力(特許価値)で成長株を探す方法


YK値は工藤一郎国際特許事務所が開発した指標で、出願された特許に対する閲覧請求や無効審判など、ライバル企業が特許の内容を調べたり、無効にするために弁理士に支払った費用から算出する。弁理士コストは50万~100万円程度、訴訟を含めた場合は数百万円程度であり、YK値はこの金額を基準として算出する。なお、実際の手続きには弁理士コスト以外も必要で、全体では弁理士コストの10倍、数千万円程度になることもある。ただし、全体のコストと弁理士コストはおおむね比例するため、弁理士コストから技術の価値は推定できる。YK値は特許価値評価ウェブサービス「PATWARE」で参照可能。

YK値が上昇すると時価総額(株価)の増加も期待できる。図は日東電工の過去30年間の株価とYK値の推移だが、両者には一定の相関が見て取れる。このコラムでは成長株を探すため、過去2年間のYK値上昇率に着目。業種ごとに増加率上位銘柄を成長株として紹介する。特許価値の変化が株価に反映されやすい中小型株が対象だ。なおYK値は株価には着目していない。株価が既に割高になっている場合もあるので、PERやPBRなども合わせて参考にしてほしい。
工藤一郎(くどう・いちろう)
弁理士。工藤一郎国際特許事務所所長。大阪大学工学部卒。NECで磁気ヘッド開発に従事した後、知的財産部などで特許実務に携わる。2000年4月に工藤一郎国際特許事務所設立。特許の経済的価値の数値化や、特許価値の比較を容易にする技術業種分類などを開発。
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