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自動運転の車で交通事故 責任を負うのは誰?

生保損保業界ウオッチ(損害保険)

自動運転のバスが選手に2日間のケガを負わせた東京パラリンピック・選手村での事故で、バスのオペレーターが過失運転致傷の疑いで2022年1月、書類送検されました。自動運転車でも、運転者は責任を免れないのでしょうか。

自動運転は、交通事故の低減や渋滞緩和、高齢者の移動手段確保など、我が国の社会課題解決につながると期待されています。市場化やサービス提供に向けた取り組みが進められていますが、技術的・社会的・法律的に乗り越えるべき課題は多く、事故時の損害賠償責任の所在の明確化もその一つです。

政府は、自動運転の技術レベルを「0~5」の6段階に分ける米自動車技術者協会(SAE)の定義を採用しています(下表)。これを踏まえ事故時の責任の所在を見ると、自動運転でないレベル0は、民事上・刑事上の責任は当然、操縦主体である運転者にあります。レベル1および2は、衝突被害軽減ブレーキや車間距離制御装置など操作の一部にシステムが関与する「運転支援車」で、こちらも運転者が責任を負います。前述のバスはレベル2で運行されていました。

レベル3のクルマは日本では21年3月、世界に先駆け発売されました。必要に応じ運転者が運転に戻ることを条件に、高速道路など限定領域での自動運転は既に可能です。レベル4は限定領域での無条件の自動運転、レベル5は完全な自動運転ですが、こちらの実現はまだ先でしょう。

責任の所在を整理する過渡期

レベル3以降は操縦主体が運転者からシステムに代わり、責任所在の複雑化も考えられます。そこで国土交通省の専門家会議は当面の間、技術レベルの異なる自動運転車が混在する過渡期と位置付け、事故時の責任関係を整理。これを基に対応が進められています。

まず重要なのは、被害者の迅速な救済です。そこで責任の所在を問わず、システム原因の事故でも自動車損害賠償保障法に基づく損害賠償責任を運転者等に負わせ、被害者救済を図ることが基本とされます。メーカー等が責任を負うべきシステム原因の事故については、保険金を負担した保険会社がメーカー等に事後的に求償を行えるよう検討が進められています。自賠責保険を超える賠償は、運転者に責任があれば自動車保険でカバーできますが、システム欠陥やハッキングによる事故は責任所在の判明に時間を要します。そこで被害者救済が遅れないよう、運転者に責任がなくても被害者が救済される「被害者救済費用等補償特約」が多くの自動車保険に現在、自動付帯されています。

特約や補償範囲などが商品によって異なる保険の比較はなかなか大変。この連載では保険に詳しいファイナンシャルプランナーが商品選びの勘どころを紹介します。

清水香(しみず・かおり)
学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」委員。社会福祉士。

[日経マネー2022年4月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年4月号 中長期でがっちり儲ける 次世代10倍株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/2/21)
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