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上値重い日本株 だがデジタル関連の伸びしろは大きい

広木隆のザ・相場道

日本株は上値の重い展開が続いている。過去最高値圏で推移する欧米株に劣後する構図が鮮明だ。その背景はまさに本コラムで以前も指摘した、日本の新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応のまずさだろう。ワクチン接種が進み、経済活動再開期待が高まる欧米と比較して、日本の「後進性」が嫌気されている。

為替や株価に 「国力」は関係ない

筆者はこれまでマーケットを語る時、「国力」に言及したことはない。マーケットは「国力」とは関係がないからだ。その良い例として『弱い日本の強い円』(佐々木融著、日経BP)をしばしば挙げてきた。少子高齢化で人口は減少、世界最悪の財政赤字を抱え、東日本大震災では原発事故まで発生した日本。こんなに「弱い国」の通貨がなぜ買われるのだろうか。

答えはインフレ率の格差だ。インフレ率が高い国は同じお金で買えるモノの量が減り、通貨の購買力が下がる。為替レートは2つの国の通貨の交換比率なので購買力が下がった通貨は長期で下落するのがセオリーだ。米国は日本よりインフレ率が高く、ドルの購買力は低下した。長期で円高・ドル安が進んできたのはこのためだ。為替レートは「国力」では決まらない。

株価にもこれが当てはまる。良い例が2014年度だろう。同年度の日本の実質国内総生産(GDP)成長率は消費増税などの影響もあり、前年度比1.0%減と、世界金融危機の余波が響いた09年度以来5年ぶりのマイナスを記録したが、国内企業の業績は過去最高益を更新した。日本株全体が「グローバル景気敏感株」といわれるように、日本の株式市場でけん引役となる銘柄には世界で稼ぐ企業が多い。国内景気がさえなくても、米国や中国の景気が良ければ業績を伸ばせるのだ。つまり、株価も「国力」とは関係がない。

この観点からすれば、たとえ日本が感染拡大を抑制できずに経済再開が遅れ国内景気の停滞が続いたとしても、企業業績に大きな影響はなさそうだ。日本のコロナ対応の遅れを材料に株価が上がらないのは株式市場の間違った解釈であり、足元は買い場であると言えるだろう。

2021年3月期決算では、日本電産エムスリーなど好業績を発表したにもかかわらず急落する銘柄が散見された一方、オービック野村総合研究所のように、テクニカル分析でローソク足の終値が始値を大きく上回る「大陽線」を描いた銘柄も目立った。富士通は株式併合考慮ベースでおよそ20年ぶりの高値圏で推移する。これらの企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の中核企業の筆頭だ。堅調な理由はなぜだろう。

デジタル関連株の収益拡大続く

コロナ危機は日本が様々な面で遅れていることをあぶり出したが、その最たるものがデジタル化の遅れだった。ワクチン接種が進まない要因にもなっており、今後さらに多くの問題が報告されるだろう。だからこそ政府はデジタル庁を新設する予定なのだが、改めてデジタル化推進は待ったなしであることを強く意識する局面にあるとみている。株式市場でもこのテーマは本命の一つと捉えてよさそうだ。

DX関連銘柄にはグロース(成長)企業が多く、米国の長期金利上昇などを受けて株価調整を迫られてきた。ここにきて長期金利の上昇も一旦は止まったかに見えるが、米ナスダック総合株価指数が5月に入り、大きく下げる場面があるなど完全には落ち着いていない。米長期金利やハイテク株の動向に左右される展開が当面は続くと思われるが、DXは収益の伸びに対する投資家の確信度が高いテーマであり、遅かれ早かれ上昇基調に回帰すると予想する。

こうした銘柄は中長期で見ると上昇トレンドが継続している。例えばオービックと富士通の株価推移を過去3年程度、「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と称される米IT大手と比べてみると、フェイスブックやグーグルと同程度かやや上回る。日本が「デジタル後進国」であることは間違いないが、そこが弱点であるだけに株価上昇の「伸びしろ」が大きいとも言えそうだ。コロナをきっかけに一気呵成(かせい)にデジタル化で巻き返せれば、日本のもう一つの弱点である労働生産性の低さも改善できる。日本のピンチをチャンスに変えることに貢献する企業は、株式市場からも高い評価を得られるであろう。

広木 隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
日経マネー 2021年7月号 大化け期待のNEXT成長株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/5/20)
価格 : 750円(税込み)
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