8億円減から浮上したテスタ氏 新年は利益10億円目指す
2021年の日本株相場 億万投資家の必勝戦略(上)

「2020年は暴落の後に急回復するなど経験したことのない相場が続き、印象的な1年になった」
こう振り返るのは、著名専業投資家のテスタさんだ。08年にリーマン・ショックによる暴落を経験した投資歴15年のベテラン投資家にとっても、20年の株式市場はサプライズの連続だったという。

テスタさんが株式投資を始めたのは05年のこと。元手800万円で、1日で売買を完結させるデイトレードからスタートした。秒単位の値動きを捉えて売買し、利益を積み重ねていく「スキャルピング」を実践し、10億円以上の利益を得た。「銘柄ごとの値動きを徹底的に分析した」と話す。
13年からは、成長企業の株を中長期保有する投資に徐々に転換してきた。運用資金が大きくなり、小型株を扱うことが多いデイトレでの運用は難しくなったからだ。
運用資産は30億円超まで拡大した。これまで売却して確定してきた利益の累計は約42億円。コロナショックに揺れた20年も、前年末比2億5000万円のプラスで終えた。
もっとも、コロナショックで一時は運用資産が8億円も減少した。その原因となったのが日経平均先物の売り建てだ。先物の売り建てでは、日経平均が下落すると利益が出る。コロナ禍で下落相場が長引くと想定して実施した取引だったが、相場が早期に反発して、損失を被った。「全体相場の動きは予想しない主義だったが、今回はつい先を読んでしまった」
ウイズコロナ銘柄で成功、5億円の売却益を得た銘柄も

その後の巻き返しに貢献したのは、今の主軸である成長株投資だった。個別企業の業績などのファンダメンタルズ(基礎的条件)を分析して有望株を探し出す。ショック直後に購入したホープの売買では、5億円の利益を得た。
同社は、自治体の広報誌などの広告枠を自治体に代わって販売する事業や、電力の小売りを手掛ける。コロナ禍で株価は低迷していたが、「自治体からの受注は景気に左右されにくい点に注目した」と話す。
「さらに、コロナ禍で需要が減少し、電力卸市場での仕入れ価格が下がれば、電力小売りのコストが減少して、利益率が改善するとも考えた」。想定通り電力の販売が拡大して株価は急伸。買値の2倍以上で売却することに成功した。
コロナ禍を追い風に業績を伸ばす企業の株も売買した。例えば、在宅時間の増加で家庭でできる習い事に人気が集まるとみて、オンライン英会話サービスを提供するレアジョブを20年4月に購入した。会員数は巣ごもり需要で大きく増加し、株価は上昇。1億円の利益を確定した。
21年はコロナ後を見据えた投資を展開
20年後半には、投資の戦略を変更。一転して、今度はコロナで業績が悪化して価格が大きく下がった銘柄の反発を狙うことにした。

「そうした期待のある銘柄の中には、既に買いが集まって割高になっているものも多い。そこでコロナ禍が収束しても、業績の回復に時間がかかりそうな会社の株を選んでいる」と説明する。
「コロナショックの前の株価に戻るだけでも2倍高が取れる」と考え、暴落で株価が半分以下になった銘柄をスクリーニングで抽出。業容を分析し、業績の回復に時間がかかることが想定される銘柄を選び出して購入した。
駐車場の上に空中店舗を建設することを土地のオーナーに提案して設計・施工を請け負う事業を手掛けるフィル・カンパニー、テレビやネットで実演販売を展開するコパ・コーポレーション、フィットネスを中心に様々な事業を営むRIZAPグループなどを買ったという。コロナが落ち着いて業績が回復するまでは持ち続ける構えだ。
コロナの感染再拡大で全体相場が急落したら買い増す。一方で、四半期決算をチェックし、業績の回復が見込めなければ売却して、別の銘柄を購入する。年間利益10億円を目標に21年の相場に挑む。
(大松佳代)
[日経マネー2021年2月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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