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スゴ腕億万投資家が対談 不透明相場の攻略法を明かす

短期の値動きには動じず、優良株を持ち続ける

20日の東京株式市場は、新型コロナウイルスの感染再拡大やワクチン接種の遅れが懸念されて急落。日経平均株価の下落幅は一時、前日比600円を超えた
新年度入りした日本株市場。スゴ腕の億万投資家は足元の相場をどう捉え、どのような銘柄で勝負を仕掛けているのか。個人投資家の間で根強い人気を保つ著名投資ブロガー、奥山月仁さん(ハンドルネーム)とろくすけさん(同)2人に、相場観と投資戦略をじっくりと聞いた。

――お二人とも株式投資で億円単位の資産を築かれました。改めてどんな銘柄が資産の拡大に貢献したのかを教えてください。

奥山月仁さん(以下、敬称略) 初期に貢献したのは小型の成長企業の株です。2012年12月にアベノミクス相場が始まる前には、有望な小型の成長株がすごく割安な価格で放置されていました。そうした株に投資する中で、低価格のトンカツ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスが買値の20倍になるなど、複数の銘柄が大化けしてくれました。

15年頃からは投資の対象を変更しました。小型の成長株で割安な銘柄が見当たらなくなったからです。そこで、割安な銘柄が目に付き始めた大型株にシフトしました。長期の不振を脱して大きく業績を伸ばす可能性を感じたソニーグループに集中投資して、大きな利益を上げました。

投資対象の変更には、地方から東京の本社への異動も影響しました。地方にいた時には仕事中もクルマで移動することが多かったので、人気のお店が自然に目に留まりました。本社勤務ではそれがなくなり、業務のデジタル化など、仕事を通じて気付く変化に関連した銘柄を探す形に変えました。

現金のたまる会社に投資

ろくすけさん(以下、敬称略) 私は08年に本格的に個別株に投資し始めました。同年9月に起きたリーマン・ショックの直前です。色々と試行錯誤する中で考えたのが、資産を大きく減らさずに済む手堅い銘柄に投資することです。

そこで、定期使用料などの形で一定の収入が継続的に入るストック型のビジネスを手掛ける企業に着目しました。仕事を通じて、信用リスク保証を行うイー・ギャランティや企業の福利厚生代行を手掛けるリログループといった企業に関心を持ちました。

「これらの法人向けサービスは解約されにくい。契約件数の増加に連動して業績が拡大していく」と思ったのです。実際にこの2社の株を購入しました。2つとも買値から10倍以上に上昇し、資産の拡大に大きく寄与しました。

ストック型ビジネスを手掛ける企業の株に投資する中で、ROE(自己資本利益率)という経営指標に注目するようになりました。これは、企業が株主から預かったお金でいかに効率よく利益を上げているかを判定する指標です。

ROEは、時間がたつにつれて次第に下がっていく傾向があります。他社との競争が激しくなり、利益を上げにくくなるからです。そうならずに高いROEをキープできるのはどんな企業か。それを考えた時に、キャッシュフローが潤沢で、事業の継続に必要な投資が少ない企業であれば、現金がどんどんたまることに気付きました。

それ以降は、そうした企業の株に投資するようになりました。今の保有銘柄では、ニトリホールディングスが典型です。現金があり余るほどたまるから、島忠の買収や事業領域の拡大に取り組めています。

割安な銘柄はまだ多い

――今の相場はどう見ていますか。日経平均株価がバブル崩壊後最高値を更新し、割高な銘柄が目立ちます。有望株を見つけにくくなったと感じていますか。

奥山 今は投資シナリオの前提を変えていく必要がある局面と捉えています。コロナ禍をきっかけに人々のライフスタイルが変容しました。それに応じて、これまで成功を収めてきた投資法を見直す必要が生じています。例えば、先述したアークランドサービスのように、外食や小売業の銘柄で利益を積み重ねてきましたが、今はそうした銘柄への投資で勝つ自信がありません。人々のライフスタイルの変容に伴って、コロナ前の状態には戻らない企業が多いとみているからです。

一方で、「脱炭素」のような新しい流れが出てきました。脱炭素はインターネットと似ているという印象を持っています。インターネットの登場で、ビジネスや社会の在り方がそれまでとそれ以降とで大きく変わりました。脱炭素でも同じようなパラダイムシフトが起きる可能性があるとみています。

ろくすけ 私は将来のキャッシュフローを予測して企業の本来価値を求め、それに対して株価が割安な株を買うという投資をしてきました。それを続けていけばいいと考えています。足元では消費者向けビジネスを手掛ける企業の株は、コロナ禍の収束による将来の業績回復を織り込んで、値上がりした銘柄が多い。一方で、企業向けビジネスの企業の株は、値上がりせずに割安な銘柄がまだ多くあります。

銘柄選びでも時流を意識

奥山 それは確かですね。コロナ禍で業績が一時的に悪化し、価格も落ち込んだ企業の株の中には、これから業績の回復が見込めるにもかかわらず、値上がりしていない銘柄があります。そうした銘柄の一つとして、私はプロトコーポレーションを購入しました。

この会社は、自動車ディーラーや中古車販売店、パーツ販売店などの商品在庫データを広告出稿という形で集めてデータベース化し、自社の情報誌や中古車検索サイトを通じて提供するという事業を展開しています。つまり、中古車販売のDX(デジタルトランスフォーメーション)を行っている企業です。コロナ禍で中古車の輸出が止まって業績が一時的に悪化しましたが、回復しつつある。ですが、購入した時にはまだコロナ前の水準には戻っていませんでした。

一方で、コロナ禍を追い風に業績を伸ばした企業の中には、これから失速する会社もあれば、さらに業績を拡大していく会社もあります。ソニーは、DXやAI(人工知能)の普及という時流に乗って、さらに業績を拡大していく。そう期待して再投資しました。

脱炭素で期待しているのは日産自動車です。脱炭素でEV(電気自動車)の普及が進む中、EVに注力してきた日産が、自動車業界再編の目玉になる可能性もあるとみています。

ろくすけ 最主力のアバントでは、私も時流を意識しています。連結会計・連結決算を行うシステムの開発・販売を軸に事業領域を広げていて、「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」という時流に乗って成長がまだ続くと考えています。

2番目の主力であるダブルエーは、「オリエンタルトラフィック」などのブランドで、婦人靴のSPA(製造小売り)を国内外で展開しています。19年11月に上場した新興企業ですが、経営の効率が高く、婦人靴のファーストリテイリングになる可能性があると期待しています。

3番目の主力のeBASEは、商品情報データベースのパッケージソフトを開発・販売し、ソフトの導入企業から保守費用を毎年受け取るストック型ビジネスも手掛けています。商品のバーコードを読み取ると原材料やアレルゲン、栄養素といった情報が表示される一般ユーザー向けアプリを開発し、それを小売業の企業に販売して新たな顧客を開拓しようとしています。

相場の急落にも備える

――米10年物国債利回りの動向で乱高下する不安定な相場展開が続いてもいます。相場の急落に備えて何か手を打っていますか?

ろくすけさんが今回の対談に奥山さんの著書を持参。それにサインを記す奥山さん

奥山 米ゲームストップ株騒動や米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの事件は、08年のリーマン・ショックの直前の状況を想起させます。ですから、米国発の暴落を警戒しています。保有株を大型株に寄せているのは、その備えという側面もあります。中小型株では、いざという時に売れず身動きが取れなくなりますから。

ろくすけ 暴落の直撃を避けるのは難しいので、機関投資家の買いで価格が戻りやすい銘柄を持つようにしています。ニトリやHOYAが当てはまります。あとは主力でない銘柄を分散して少しずつ持っていて、いざという時にはそれらを売って有望株の購入資金に充てる方針です。

(中野目純一)

[日経マネー2021年6月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年6月号 ここから上がる最強の日本株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/4/21)
価格 : 750円(税込み)
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