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日本の得意分野「繊維・フィルム」関連の技術割安銘柄

工藤特許探偵事務所

フィルムや繊維に機能を持たせる技術は日本企業の得意分野。写真はリケンテクノスの抗ウイルスフィルム

「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき、技術力に比べて株価が安い「技術割安株」を、工藤一郎国際特許事務所の力を借りて探してみた。

機能性フィルムはコロナ対策やEVでも活躍

服や日用品はもちろん、電気製品や輸送用機器など、あらゆる商品・工業製品に使われている素材の一つが「繊維・フィルム」だ。シート状に加工して使われることが多く、薄さや強度といった物理的な特性に加え、光学特性や電気特性など様々な性能が要求される。特に高機能な製品は日本企業が競争力を発揮している分野だ。以下、「YK値」(下囲み参照)に対して株価が割安となっている上位4銘柄を紹介する。

第1位リケンテクノス。フィルムやプラスチックの複合材料を扱っている。中でも食品包装用フィルム、スマートフォンや窓ガラスの保護フィルムを得意とする。電力メーターのケースなどに使われるACS樹脂に関する知的財産などを旭化成から譲受する契約を締結するなど、プラスチック事業の領域をさらに広げている。

2020年には表面に付着したウイルスを減少させる抗ウイルスフィルムを上市。スマホやタッチパネル用の新型コロナ対策商品として注目された。今後もマーケットニーズに合わせた製品開発で成長が期待される。

第2位クラボウは繊維と化成品が主力の企業。ジーンズ用厚手繊維を主に各種繊維、産業資材用化成品などを手掛ける。2016年にはバイオマス発電事業も開始。新型コロナウイルスにも有効な抗ウイルス機能繊維加工技術を持ち、白衣やカーテン、マスクなどに採用されている。

技術面ではFRP(繊維強化プラスチック)関連分野に強みを持つ。FRPは軽量ながら高強度であり、腐食しにくいといった特徴がある。小型船舶の船体やユニットバス、家電製品の外装などのほか、最近は電気自動車のボディー用素材としても活用が進んでおり、今後、需要拡大が期待できる。

第3位帝人。繊維大手の一角で、繊維複合材料や樹脂、医薬なども手掛けている。タイヤなどに使用されるアラミドの生産の世界最大手(世界シェアは約50%)。現在注目を集める炭素繊維でも世界トップクラスのシェアを誇る。

近年は先端素材として注目されている炭素繊維に注力しており、世界トップクラスのシェアを誇る。繊維・フィルムの分野全般にわたって世界トップレベルの技術力を持ち、その地位は当面、揺るがないだろう。

第4位住江織物はインテリアと自動車・車両内装向けが主力の繊維メーカー。鉄道車両シート地の国内シェアは約70%。伝統的な技術にも強く、美術工芸品の織物や国会の赤じゅうたんなども手掛ける。

抗菌、消臭、防汚など、繊維に機能を付加する加工技術に強みがある。リサイクル材料を高比率で用いたカーペットを開発するなど、環境に対する意識も高く、マーケットの変化に対応した新たな商品の開発と、それに伴う業績の拡大も期待できる。

今回取り上げた4社は、抗ウイルス繊維や軽量の素材など、高い技術で社会の要求に応える製品を提供している。要注目の銘柄だ。

YK値とは? 特許価値で割安株を探す方法

「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき割安株を探す。特許の経済価値は工藤一郎国際特許事務所が開発したYK値を用いる。YK値とは、出願された特許に対する閲覧請求や無効審判など、ライバル企業が特許の内容を調べたり、無効にするために弁理士に支払った費用から算出する。弁理士コストは50万~100万円程度、訴訟を含めた場合は数百万円程度であり、YK値はこの金額を基準として算出する。なお、実際の手続きには弁理士コスト以外も必要で、全体では弁理士コストの10倍、数千万円程度になることもある。ただし、全体のコストと弁理士コストはおおむね比例するため、弁理士コストから技術の価値は推定できる。

独自に選んだテーマごとに各社のYK値と時価総額を図のような軸を持つグラフにマッピングすると、妥当と思われる近似曲線が浮かび上がる。この近似曲線から左に大きく離れている企業(図ではA社)は、特許価値、つまり技術力比で時価総額が低い(割安)と考えられる。
同事務所によると、A社の位置は2年ほどかけて近似曲線に近づいていく傾向がある。これは、特許技術が製品化されて収益に寄与。時価総額が膨らむためと考えられる。この連載では、業種ごとの近似曲線から、左への乖離が大きいほど、株価が割安な銘柄として扱う。
工藤一郎(くどう・いちろう)
弁理士。工藤一郎国際特許事務所所長。大阪大学工学部卒。NECで磁気ヘッド開発に従事した後、知的財産部などで特許実務に携わる。2000年4月に工藤一郎国際特許事務所設立。特許の経済的価値の数値化や、特許価値の比較を容易にする技術業種分類などを開発。

[日経マネー2021年4月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年4月号 ニューノーマル時代の新10倍株で勝つ!
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/2/20)
価格 : 750円(税込み)
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