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マスク氏の売却で急落したテスラ株 逆回転の始まりか?

米国株投資家もみあげの現地リポート(9)

11月初旬にそろって最高値を更新した米国株の3指数は第2週、6週間ぶりに下落に転じました。10日に発表された米消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.2%上昇と予想を上回る伸びとなり、インフレ懸念が強まったことが嫌気されました。

このコラムは
米国株式市場の動向を現地で体感。米国株投資のタイムリーな情報をブログで発信し、個人投資家の間で人気を博している会社員投資家のもみあげさん(ハンドルネーム)。このトレンドウオッチャーが旬のトピックを個人投資家の目線で分かりやすく紹介します。

米国株の先行きが不透明感を増す中、市場関係者の耳目を集めているのが、米EV(電気自動車)メーカー大手、テスラ株の値動きです。CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が6日、保有株の一部を売却して納税に充てる是非を問う投票をツイッターで実施。賛成が多数を占めました。

それを受ける形でマスク氏が売却を始めたことが米証券取引委員会(SEC)への届け出で明らかになり、株価は8~9日の2日間で16.2%も下落しました。10日に反発しましたが、マスク氏が保有株の売却を続けてテスラ株のトレンドが上昇から下落に転じるのかどうか、市場は動向を注視しています。

業績の急改善で評価が一変

テスラの株価は、ツイッターでの投票を発端とする騒動が起きる前の11月4日に、1243ドル49セントの上場来高値を付けていました。10月20日に発表した2021年7~9月期決算が、四半期ベースで売上高と当期純利益が過去最高を更新。株価は同日から1.4倍超に上昇したのです。

19年10月には同社の株価は50ドルを下回っていました(株式分割を反映)。それが2年余りで約25倍になったわけです。時価総額ではGAFAMの一角を占める米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)を追い抜きました。

株価上昇の原動力の一つは、業績の大幅な改善です。最終赤字が続いていたテスラの業績は、前期(20年12月期)に売上高315億3600万ドル(約3兆5951億円)、当期純利益6億9000万ドル(約786億円)を計上し、最終黒字に転換しました。

今期(21年12月期)は、売上高が前期比1.6倍の513億4330万ドル、当期純利益が同10倍の69億ドルになる見通し。売上高当期純利益率も前期の2.2%から今期は13.4%に大きく改善する見込みです。これで同社の評価も一変。多くのアナリストがレーティングを「売り」から「買い」に変更し、目標株価も2倍以上に引き上げました。

もっとも、テスラ株が急上昇を遂げたのは、業績の改善が主因ではありません。11月12日時点の予想PER(株価収益率)は171.5倍。マスク氏の保有株の売却を巡る騒動が起きる前には200倍を超えていました。ここまで株価を押し上げた主因は投機買いだとみられます。

下のグラフは、テスラと米太陽光発電関連装置メーカーのエンフェーズ・エナジー、米燃料電池メーカーのプラグパワーの株価の推移を比較したものです。10月から11月上旬にかけて3社の株価がほぼ同じ軌道で上昇した様子が見て取れるでしょう。

10月31日~11月13日には英国で第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されました。197の加盟国・地域の首脳や関係閣僚らが地球温暖化対策を話し合ったこの会議を機に、脱炭素関連の有力銘柄が物色される。そう読んだ投機家が先回り買いを仕掛け、3社の株価が一斉に上昇したと推察されます。3社の株価はCOP26の開幕と同時に一旦頭打ちになったので、投機筋はそこで売却して利益を確定したのでしょう。

オプションが値動きを増幅

10月下旬には、テスラ株のオプション取引でコール(買う権利)の買いも急に膨らみました。オプションはわずかな元手で大きな利益を上げられるデリバティブ(金融派生商品)で、コールの買いは株価が上昇すると利益が出ます。

米国では個人投資家の間で個別株のオプション取引を利用した投機的な売買が広がっていて、それがテスラに集中したのです。10月25日のオプション取引の売買高は354万枚(1枚は100株をカバー)。現物株(6262万株)の約5.7倍に膨らみました。

マスク氏の保有株の売却を巡る騒動が起きて下落した9日には、株価が下落すると利益が出るプット(売る権利)の買いが膨らんだと報じられています。マスク氏の保有株売却をきっかけにテスラ株の潮目が本当に変わるのか。テスラ株の動向から目を離せない日々が続きそうです。

【今回のポイント】テスラ株の値動きはオプション取引で増幅されている

もみあげさん
米国駐在中の会社員投資家。2018年から米国の成長企業の個別株とETFを売買。運用資産1400万円を4000万円まで増やす。個人投資家に人気のブログ「もみあげの米国株投資」のURLはhttps://www.momiage.work/。20年10月には著書『もみあげ流 米国株投資講座』(ソーテック社)を出版した。
イラスト/じゅんぺい@macsJUM
日経マネー 2021年12月号 ここから上がる日本株&米国株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/10/21)
価格 : 750円(税込み)
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