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お金はシンプルに大切 運用は長期・分散で(岸博幸)

マネーの履歴書 慶応義塾大学大学院教授・岸博幸さん

慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸さん。同研究室で「稼げる地域活性プロジェクト」を手掛けるほか、民間企業の社外取締役なども務める。お金は「シンプルに大事」と語る岸さんに、子供時代からのお金との向き合い方や資産運用についての考え方を聞いた。

お金の大切さを実感した少年時代

一橋大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。2006年に経済産業省を退官。同年、慶応義塾大学DMC統合研究機構助教授に就任し、08年から同大学大学院のメディアデザイン研究科教授。(撮影/工藤朋子)

小さい頃、お金に苦労した記憶があります。というのも、中学2年生ぐらいの時に両親が離婚し、半ば家を飛び出すような形で母、姉との3人暮らしを始めた時の経験が印象的だからです。

その当時は1970年代であったにもかかわらず、私の家には冷蔵庫もなかった。途中から手に入ったのですが……。母がパートで稼いで家を支えてくれていたものの、それはもう生活が大変でした。時には私の学費を出すために母が着物を売っている姿などを見て、シンプルに「お金って大事だな」と感じたことを覚えています。

高校、大学は奨学金を利用して進学。一橋大学では経済を学んだ。

将来について、じゃんじゃんお金を稼ぐといったことは目指していませんでした。たまたま家系に役所の人間が多かったことに影響を受け、自分も同じような道を目指しました。

就職してからも、お金の使い方について大きく変わったことはありません。お金を使うタイミングがないほど忙しかったこともありますし、就職後は自分の収入で母を養うようになっていたので、それほど余裕があったわけでもなかったんです。

2006年に経済産業省を退官してからは、テレビなどのメディアへの出演も始める。

20年間ずっと「民間の世界を見たい」という気持ちがくすぶっていました。色々なことに興味があり、その好奇心を満たしたい性格なのです。

経産省を辞めてから、ふとしたきっかけで声が掛かり、まずはテレビに出るようになりました。当然うまく話せるわけがなく、最初は難しいことが多かった。ところがなぜか、やしきたかじんさんに気に入られて番組のレギュラーをやらせてもらい、そこで鍛えてもらうことになりました(笑)。「テレビではこうやって話すんだ」と。

そのうちバラエティーなどにも出演するようになり、自分が全く想像することのなかった方向へと人生が転がっていきました。実際、色々な人と会って好奇心が満たされることも多く、ありがたいと感じます。

教授を務める慶応大学大学院では、学生と共に地域活性プロジェクトにも取り組んでいる。

メディアデザイン研究科の学生メンバーの半分以上は外国人。米国、欧州、中東、アフリカ、東南アジア、南米……と本当に多様な地域から学生が集まってきていますし、彼らは優秀です。日本のクリエーティビティーを求めて、それを学びに来る需要は高いと感じています。

研究室の地域活性プロジェクトにおいて、「稼げること」は絶対条件です。さらにこれからは、SDGs(持続可能な開発目標)の時代。日本は地球温暖化にばかり目を向けているけれど、欧州では循環経済の時代が当たり前に来ている。間違いなくその流れは日本にも来るはずで、地域活性においても重要なキーとなっていると考えています。

うんと昔から循環経済を実行しているのが、伝統文化の漆です。塗装が剥げれば何度も塗り直して使えるし、そのたびに売り上げが得られる。漆が有名な福井県鯖江市の地域活性に5年ほど前から携わっているのですが、そこでは漆のタンブラーを商品化し、よく売れました。

プロジェクトなどでは「稼ぐ」ことを考える一方、個人の資産については「増やす」ための運用も行う。

個人的にはこれからの時代、資産運用は必須だと考えています。ただ、「長期・分散」だけは絶対に守りたい。金融の世界にはものすごくどう猛にもうけを求めるプロがいて、そうした「肉食」には普通の「草食」の人間は勝てっこないと考えているからです。子供の頃の経験から、貧しい暮らしがいかに大変かは知っている。リスクの最小化は、何よりも大切です。 

岸博幸さんのマネーのターニングポイント


●お金の重要性を初めて認識した、母と姉との3人暮らし
中学生の頃に両親が離婚し、生活が一変。初めは冷蔵庫も買うことができない生活で、「貧乏自慢には自信がある」(岸さん)。そうした経験を通して、必要最低限の水準のお金は必須であると感じた。資産運用においては、「リスクの最小化」を最重要視している。

●仕事と人生の広がりをもたらしたキャリア転換
2006年に経済産業省を辞めたことで、「想像もしない方向に人生が転がっていった」と岸さん。メディアなどで様々な背景の人物と出会い、仕事の在り方が大きく変わった。

「マネーの履歴書」は、様々な分野の第一線で活躍する人のマネーヒストリーやお金哲学を紹介するコラムです。

(聞き手は大松佳代)

[日経マネー2021年11月号の記事を再構成]

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