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バフェットが選ぶ素晴らしい企業 その株はこう探す

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(13)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。
ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営(容姿は本人と変えています)。
ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
ナナコ ゴローの妹。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

米国の著名投資家、ウォーレン・バフェットが投資対象として選択するような「素晴らしい企業」の特徴を教わってきたゴローとナナコ。今回はそうした企業の探し方をろくすけさんから学びます。

ろくすけ 探し方に入る前に、「素晴らしい企業」の3つの要件を復習しておこう。何だったか、覚えているかな?

ゴロー ①業績が安定して成長する②少ない投資でたくさん稼ぐ③堅固な「堀」に守られている――の3つです。1つ目の要件は「安定性」が肝で、景気が良い時も悪い時も売り上げや利益のぶれが小さくて、増加基調で推移していることが望ましいんでしたよね。

2つ目は、少ない投資で大きな収益を上げるから事業投資の効率が高い。事業投資の効率が高いかどうかを判断するには、企業の営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)と投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)のバランスの推移をチェックすることが必要だと習いました。

ナナコ 営業CFと投資CFを足し合わせたフリーキャッシュフロー(FCF)がプラスだと投資効率が高く、企業の内部にどんどんお金がたまっていきます。

3つ目の要件は、企業が堅固な競争優位性を持って参入障壁を築いていることを意味していて、そうした参入障壁を築く5つのパターンを学びました。

有価証券報告書の数字を確認する

ろくすけ 2人とも話したことをしっかり覚えているね。では、3つの要件を満たす企業の探し方を説明していこう。私は実はアクティブ型の投資信託に組み入れられた企業の株から探すことが多い。

ゴロー 株価指数に連動するように設計されたインデックス型の投信とは違って、アクティブ型の投信は、運用する人が自分の裁量で投資手法や購入する株を決めているんでしたね。

ろくすけ そうだ。運用手腕の優れたファンドマネジャーが投信に組み入れている株の発行企業には素晴らしい企業が多い。

ナナコ 敏腕マネジャーのお眼鏡にかなったから、組み入れられているんですものね。

ろくすけ だからと言って、それだけで購入することはできないよ。自分で調べて、素晴らしい企業の要件を満たしているかどうかを確認することが必要だ。

まず月次などで発行されている投信の運用リポートを読む。そこで紹介されていた組み入れ銘柄の事業内容に興味を持ったら、扱っている商品やサービスの詳しい内容をその企業のホームページなどで調べて概要を理解する。その次に、企業が発行している有価証券報告書を確認する。

ゴロー 有価証券報告書。企業がどこかに提出する書類ですか?

ろくすけ その通り。企業内容の開示資料で、各年度が終了したら3カ月以内に金融庁に提出することが義務付けられている。ホームページにPDFなどの形で掲載されているので、誰でも無料で読むことができる。

アバントの有価証券報告書

書式が決まっていて、真っ先に見るのは2ページ目にある「主要な経営指標等の推移」だ。ここに企業の経営に関するデータが過去5期分掲載されている。素晴らしい企業の3つの要件を満たすかどうかの判定に必要なデータは全てここに載っているんだよ。

ここで実物を見てみよう。これは、前に堅固な競争優位性を持って参入障壁を築いている企業の例として紹介したアバントの有価証券報告書だ。

ナナコ 連結会計・連結決算を行うためのシステムを開発・販売している企業でしたね。

ゴロー 売上高と利益の数字を見ると、期を追うごとに増加しているのがすぐ分かりますね。これで1つ目の要件はクリアでしょう。

ナナコ 営業CFと投資CFの推移を見ると、営業CFのプラスの額が投資CFのマイナスの額を常に大きく上回っています。これならFCFは常にプラスになるから企業の内部にどんどんお金がたまる。その証拠に、現金および現金同等物も期を追うごとに増加しています。

ろくすけ こうして見ると、前に東インド会社を例に取って説明したように、企業の価値が複利で雪だるま式に増えていくことがイメージできるだろう。

「堀」の存在はROEで確かめる

ゴロー 3つ目の要件の堅固な堀で守られているかどうかはどの数字を見たらいいのでしょうか?

ろくすけ そこが今回の大きなポイントだ。正解は「自己資本利益率」。一般にはROEという略語の方がよく知られている。

ナナコ ROEは当期純利益を自己資本で割って100を掛けて算出するんですよね。大学の授業で、株主から預かったお金でいかに効率よく利益を上げているかを示す指標と習いました。2014年に経済産業省が公表した「伊藤リポート」と呼ばれる報告書では、企業は最低8%超のROEを目指すべきだと提言されたんですよね。

ろくすけ よく知っているね。私は15%以上を素晴らしい企業か否かの目安にしている。自己資本には当期純利益から配当を控除した利益剰余金が組み込まれていくので、ROEが高いほど、自己資本が増加するスピードが速くなる。ただし、高いROEを長期間キープすることは難しく、次第に下がる傾向がある。なぜだろうか?

ゴロー ROEが高いということは、もうかるビジネスを営んでいるということですよね。もうかるビジネスには新規参入が相次ぐ。そうなると競争が激化して、稼ぎづらくなっていく。うん、待てよ。逆に高いROEを長期間維持していれば、それは新規参入がないことを示すのでは……。

そうか、高いROEをキープできている企業は新規参入を防ぐ堅固な堀で守られている。つまり、ROEの長期推移を見れば、堀があるかどうかが分かるわけですね。

ROEの2つの留意点

ろくすけ ご名答。高い水準をキープしているだけでなく、上昇傾向にあるとなおいい。ROEについては過去5期分ではなく、10期分は見た方がいい。企業は過去の有価証券報告書もホームページに掲載しているから、それで数字をたどれるよ。

ナナコ アバントのROEは20%前後で安定していますね。

ろくすけ ROEには留意すべき点が2つある。一つは、分子の当期純利益には一過性の営業外損益や特別損益が含まれるので、本業の稼ぎを的確に示す数字ではないこと。もう一つは、分母が自己資本であることだ。

企業は自己資本の他に借入金も事業に投じている。有利子負債も含めないと本当の資本効率は分からない。そこでROEの欠点を補う経営指標として分子に税引き後営業利益、分母に自己資本と有利子負債を使って算出するROIC(投下資本利益率)が注目されている。

次のグラフは、物流分野のアウトソーシングや障害者の雇用支援、人材派遣、人材紹介を手掛けるエスプールのROICとROEの推移を比較したものだ。有利子負債が加わると分母が大きくなるので、ROICは通常ROEよりも低くなる。この点も覚えておこう。

エスプールの「わーくはぴねす農園」では、企業と雇用契約を結んだ障害者が農作物を育てている

(次回に続く)

今回のまとめ 素晴らしい企業かどうかは有価証券報告書の数字で分かる

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著者 : 日経マネー
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