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過熱する米国のIPO 緩和マネー流入で既に20年の1.7倍

米国株投資家もみあげの現地リポート(8)

今回は米国のIPO(新規株式公開)の実情を紹介します。米国では、2020年からIPOブームが続いています。20年には前年の2倍の451社、21年は10月15日時点で20年の約1.7倍の789社がIPOを果たしました。

このコラムは
米国株式市場の動向を現地で体感。米国株投資のタイムリーな情報をブログで発信し、個人投資家の間で人気を博している会社員投資家のもみあげさん(ハンドルネーム)。このトレンドウオッチャーが旬のトピックを個人投資家の目線で分かりやすく紹介します。

コロナ禍の投資ブームが波及

IPOが急増している背景には、やはり投資マネーの膨張があります。新型コロナウイルスの感染拡大で凍り付いた経済活動を再始動させるために、世界の中央銀行が未曽有の金融緩和を実施。膨大なマネーが株式市場に流れ込み、コロナショックで暴落した株価は急回復して、米国株は史上最高値を更新しました。

急激な株高が株式投資ブームを引き起こし、20~30代の若い世代が株式投資に新規参入して、証券口座の新規開設が急増。これがSNS(交流サイト)で話題になった「ミーム株」と呼ばれる銘柄を急騰させた米ゲームストップ株騒動の間接的要因にもなりました。

このように金融緩和による膨大なマネーの流入と個人投資家の裾野拡大によって、IPOで上場を目指す新興企業の資金調達も容易になりました。これがIPOブームの背景です。

年内には米アマゾン・ドット・コムが出資しているEV(電気自動車)メーカーの米リヴィアンの上場が予定されており、22年にはオンライン決済サービスの米ストライプやゲームストップ騒動で注目されたインターネット掲示板のレディット、ご近所SNSアプリのネクストドアなどの上場が見込まれています。

なお、20年には未上場企業の買収を目的とした特別買収目的会社(SPAC)の上場ブームも、IPOの急増に一役買いました。21年も、SPACの上場件数は10月15日時点で468社と、全体(789社)の59.3%を占めています。ただし、SPACの上場件数は米証券取引委員会(SEC)が監視を強化したために4月以降に急減し、SPACブームは下火になっています。

IPOの後にも上昇を続ける銘柄が相次ぐ

ところで、IPO株投資では日本と米国で大きな違いがあります。日本では個人投資家が上場前に公募に応じてIPO株を購入し、初値で大きな値上がり益を狙うのが盛んです。これに対して米国では上場前にIPO株を購入できるのは主に機関投資家。個人投資家はほとんど割り当てがなく、購入できないのが実情です。

そこで米国の個人投資家が狙うのは、取引初日における大幅な値上がり益です。21年1~6月に上場した銘柄の上場初日の騰落率は平均40.5%。19年と20年の同期間の騰落率(それぞ21.7%と28.2%)を大きく上回っています。

こうした売買に加えて、20年にはIPOした銘柄を買い持ちして値上がり益を狙う投資も盛んに行われました。そのため、通常はIPOからしばらくの間はベンチャーキャピタルなど上場前からの株主の売却が続いて株価は低迷する傾向があるのですが、20年は上場後も大きく上昇し続ける銘柄が相次ぎました。株式市場に流れ込んだ投資マネーがここにも向かったからです。

下は、IPO銘柄に特化した資産運用会社、米ルネサンス・キャピタルが運用しているETF(上場投資信託)のチャートです。このETFは、同社が開発した上場2年以内の新興企業を対象とした株価指数に連動するように運用されています。価格は設定された13年から19年にかけてはほぼ横ばいで推移していましたが、20年に急騰しました。これは上場2年以内の新興企業株が買われて大きく値上がりしたからにほかなりません。

実際、このETFの組み入れ上位には、コロナのワクチンを開発した米モデルナや配車サービスの米ウーバーテクノロジーズなど、コロナ禍の相場でウイズコロナ銘柄として人気を集めて大きく上昇した銘柄が並んでいます。

この新興企業ブームも21年には軟調に転じました。ハイテク株と同様に米長期金利の上昇やテーパリング(量的緩和の縮小)の前倒しの影響を受けているとみられます。投資を控えて様子見をした方がいい局面がしばらく続きそうです。

【今回のポイント】米国ではIPOブームが続くが、新興企業の株価は軟調に転換

もみあげさん
米国駐在中の会社員投資家。2018年から米国の成長企業の個別株とETFを売買。運用資産1400万円を4000万円まで増やす。個人投資家に人気のブログ「もみあげの米国株投資」のURLはhttps://www.momiage.work/。20年10月には著書『もみあげ流 米国株投資講座』(ソーテック社)を出版した。
イラスト/じゅんぺい@macsJUM
日経マネー 2021年12月号 ここから上がる日本株&米国株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/10/21)
価格 : 750円(税込み)
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