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日経平均3万円台 実は危うい「バブルではない」説

広木隆のザ・相場道

日経平均株価が、30年半ぶりに3万円の大台を回復した。急ピッチの株高に、「今の株高はバブルか」という議論が市場でかまびすしくなっている。

新型コロナウイルスの脅威が去ったわけではない。日米の新規感染者数は峠を越えつつあるが、それでも深刻な状況は続いている。こうした状況での歴史的株高に対し、違和感を持つ市場関係者は少なくないようだ。投機的な個人投資家が主役となった米ゲームストップ株の暴騰劇も、こうした見方に拍車をかけている。

そもそも、「バブル」とは何か。株価が景気や企業業績といったファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から大幅に乖離した高値を付けることだ。ならばファンダメンタルズとは何だろう。それを考えることが、冒頭の問いに対する答えにつながる。

超低金利が作る株式優位の相場

ファンダメンタルズとして多くの人が思い付くのはGDP(国内総生産)だろう。これを尺度とした指標にバフェット指数がある。国を代表する株式市場の時価総額はGDPと同じになるはずという前提に立ったものであり、100%を超えれば「バブル状態」となる。

とは言え、この考えに理論的な根拠はない。株価は企業の将来利益を反映するとした予想PER(株価収益率)の方が、まだ筋が通っている。相場がバブルかを判断する上で、バフェット指数を持ち出すのは実はあまり意味がない。

ではPERから考えるとどうか。1年先の利益を基にすれば、日本株の予想PERは20倍程度だ。その逆数である益利回りで考えると4~5%程度になる。

これを長期金利と比べた差がイールドスプレッドで、債券に対する株式の魅力度を測る指標であるともいえる。日本の長期金利はほぼゼロ。米長期金利も1%程度だから株式には十分な魅力がある。

1980年代のバブル景気や、2000年のITバブルの頃は、この指標がマイナスになっていた。不確実でリスクの高い株式の利回りが、安全資産である国債の利回りを下回る水準まで買われたわけだ。それこそが「真正のバブル」と言えるだろう。そう考えれば今の水準はまだバブルとは言えない。

給付金頼りの家計、個人消費に死角?

労働市場という別なファンダメンタルズを持ち出してみよう。雇用統計は多くの市場関係者が注目する最も重要な経済指標だ。ここで、雇用者数と米ダウ工業株30種平均株価を比較してみよう。コロナ禍において失われた雇用はまだ半分しか戻っていないのに、米株は最高値圏にある。この乖離はバブルではないのか。

しかし個人消費を反映する米小売り売上高はV字回復しており、コロナ前のトレンドから大幅に上方乖離している。株価はこちらに連動しているとも取れる。

ここで、「雇用は半分しか戻っていないのに、なぜ消費がこんなに伸びているのか」という疑問が生じるだろう。普通に考えれば、職があるから収入が得られ、それが消費を支える。ところが今は、職がなくても人々が消費にお金を回せる。政府から給付金が支給されているからだ。

そのおかげで米国では家計の可処分所得が20年春に急増した。バイデン政権が決定するであろう追加経済対策で、給付金は増額される見通しだ。失業給付の特例延長もあり、やや減速気味だった消費は再び勢いを取り戻しそうだ。

ここまで考えると、足元の株高にはファンダメンタルズの裏付けがありバブルではないと言える。ただ、もう少し考えてみよう。このファンダメンタルズは、本当に盤石なものなのだろうか。

前述したように、個人消費は政府の支援に支えられている。だが、これはいわば「疑似ベーシックインカム(最低所得保障)」だ。つまり、一時的な措置に過ぎないからいずれは限界が来る。

バイデン大統領が掲げた追加経済対策に関し、早くも共和党の反対で想定より規模が小さくなるとの見方が出ている。市場は金融政策の縮小の可能性をリスクとみるが、財政政策の「弾切れ」の方がリスクではないか。

株価水準を正当化する低金利にしても、中央銀行の異次元緩和によって作り出されたもので終わりはいつか来る。そう考えると、少なくとも今の株式相場はバブルの「とば口」にいることは間違いない。

21年前半の日経平均予想
2万7000〜3万1000円
【ここに注目】
4月下旬からの3月期決算発表で2021年度の業績回復が織り込まれる。日経平均株価は3万円超えて上昇も。
広木 隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
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