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投機で乱高下する仮想通貨 その裏で進む投資の実情

米国株投資家もみあげの現地リポート(3)

仮想通貨の価格は2021年に入って軒並み上昇。その背景にあるものは?=ロイター
日本企業の駐在員として米国に滞在し、米国株式市場の動向を現地で体感。米国株投資のタイムリーな情報をブログで発信し、個人投資家の間で人気を博している会社員投資家のもみあげさん(ハンドルネーム)。このトレンドウオッチャーが旬のトピックを個人投資家の目線で分かりやすく紹介します。

今回は、米国における暗号資産(仮想通貨)の取引の実情を紹介します。4月下旬、代表的な仮想通貨であるビットコインの価格が急落しました。コロナショックで付けた底値の約5倍に上昇し、4月14日には6万4895ドル22セントの最高値を付けていました。そこから断続的に急落し、一時5万ドルを割り込んだのです。ピークからの下落幅は、最大で2割強に達しました。

その後は急騰と急落を繰り返す展開になっています。直近の急落のきっかけは、米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の一連のツイートです。「車の購入にビットコインを使用するのを停止した」などとつぶやきました。これで2月にビットコインを15億ドル(約1600億円)分購入している同社が売却に動くという観測が浮上し、ピークからの下落幅は3割超に拡大しました。5月16日には一時4万4000ドルを割り込んだ後、4万6456ドル6セントで引けました。

米国では、ビットコインだけでなく、リップルやイーサリアムなど他の仮想通貨の価格も急騰しています。仮想通貨のパロディーとして考案されたドージコインの価格は今年に入り、1セント未満から1万2000%超も上昇。5月8日には73セントの最高値を付けました(その後は40セントを割り込むまで急落し、16日には50セント前後で推移しました)。さらに、「ブロックチェーン(分散型台帳)」と呼ばれる仮想通貨の基盤技術を使って複製を困難にしたデジタル資産「NFT(非代替性トークン)」が高値で取引されるようにもなっています。

分散投資先としての購入も

4月下旬のビットコインの急落は、米国外の規制の緩い取引所で証拠金の何倍にも上る規模の取引を仕掛けていた投資家が取引の精算を余儀なくされ、大量のビットコインを投げ売りしたことが原因とみられています。

仮想通貨の売買ではこうした投機的な取引が大半を占め、それがバブルを招いているという印象を強く持たれるかもしれません。しかし、そうした一面的な見方だけでは、仮想通貨取引の実態を正しく把握できないと思います。

というのも、米国では投機的な売買だけでなく、資産形成における分散投資の一環として仮想通貨を購入する動きも拡大しているからです。

米国ではテスラのイーロン・マスクCEOや人気ラッパーのスヌープ・ドッグ氏といった著名人のツイートを受けて、仮想通貨を売買している人も多い=ロイター

「ミレニアル世代」と呼ばれる1981~96年生まれの若者たちは、SNS(交流サイト)の掲示板の書き込みや著名人のツイートを見て、仮想通貨で短期に売却益を上げる投機的な取引を手掛けています。これは、この連載の初回で紹介した米ゲーム専門店大手のゲームストップなどの株価急騰劇と同じ構図です。

一方、米国の富裕層は、米連邦準備理事会(FRB)が実施した異例の金融緩和でドルの価値が下がり、債券の利回りも極端に低下している現状を考慮。米国株も最高値圏で推移していることから、株や債券に代わる有力な投資対象として仮想通貨を購入しています。

さらに、年金基金や保険会社などの機関投資家にも、仮想通貨を購入する動きが広がっています。昨年12月には、米生命保険大手のマスミューチュアルが運用資産の一部をビットコインに振り向けたことが明らかになりました。

こうした富裕層や機関投資家の動向を受けて、大手金融機関が富裕層や機関投資家向けのサービスに仮想通貨投資を加える動きも相次いでいます。米投資銀行大手のモルガン・スタンレーはビットコインに投資するファンドを立ち上げ、米銀大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロンは仮想通貨の資産管理サービスに乗り出すことを発表しました。

関連企業は政府対応を強化

仮想通貨では見逃せない動きがもう一つあります。仮想通貨の関連企業で、連邦政府の有力OBを登用してジョー・バイデン政権や金融当局への対応を強化する取り組みが見られることです。

例えば、仮想通貨の貸し付けを手掛ける米ブロックファイは4月20日、米商品先物取引委員会(CFTC)元委員長のクリストファー・ジャンカルロ氏を取締役に迎えたと発表。5月1日には、米仮想通貨交換業大手バイナンス・ドット・USのCEOに米通貨監督庁(OCC)元長官代行のブライアン・ブルックス氏が就任しました。さらに、4月に上場した米仮想通貨交換所大手のコインベース・グローバルは、米証券取引委員会(SEC)で取引・市場部門を統括していたブレット・レッドファーン氏を資本市場担当副社長に招いています。

バイデン政権のジャネット・イエレン財務長官とFRBのジェローム・パウエル議長は共に「仮想通貨は投機的な商品」と発言し、政府とFRBは仮想通貨に好意的ではないとみられています。そうしたスタンスが仮想通貨関連企業の働きかけで和らぐ可能性もあります。仮想通貨の先行きを見通す上で、米国の富裕層と機関投資家の動向や関連企業の動きに目配りしていくことが求められます。

【今回のポイント】投機的な取引ばかりに注目すると実態を見誤る

もみあげさん
米国駐在中の会社員投資家。2018年から米国の成長企業の個別株とETFを売買。運用資産1400万円を4000万円まで増やす。個人投資家に人気のブログ「もみあげの米国株投資」のURLはhttps://www.momiage.work/。20年10月には著書『もみあげ流 米国株投資講座』(ソーテック社)を出版した。
イラスト/じゅんぺい@macsJUM
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