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バブルに踊らず 実体経済に基づき長期投資(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信会長

投資業界のカリスマの一人、澤上篤人氏が考える長期投資のあるべき姿を、同社最高投資責任者の草刈貴弘氏との対談形式で紹介する。

金融緩和が引き起こした「マネー膨れ」

澤上篤人(以下、澤上) この金融バブルが崩れるのは時間の問題……。こう言い続けて随分時間がたつ。まるで「オオカミおじさん」みたいだが、何と言われようと構わない。改めてバブル崩壊に対する警鐘を鳴らしておく。世界経済は幾度となくバブルとその崩壊を繰り返してきたが、今回のように中央銀行が胴元となっているバブルなんてのは初めてだよ。

草刈貴弘(以下、草刈) 歴史を振り返ってみても、これほどまでに中央銀行が市場で存在感を示すようなことはなかったですよね。

近代のバブルは中央銀行の金融緩和が原因というより、規制緩和や経済問題の後始末といった政策が原因になってきました。

澤上 米連邦準備理事会(FRB)をはじめ先進各国の中央銀行が「長期金利は2023年までは上げさせない、資金はいくらでも供給する」と断言しているのだ。

世界中の投資家にとって、これほど心強い買い安心材料はない。金利が上昇して債券市場が崩れる懸念や、企業収益が圧迫される心配などは一切無用。ならば、この上昇相場に乗って大いに稼ぐしかあるまい。買いのピッチは上がるばかりだ。

それどころか、前代未聞の金融緩和と、資金はいくらでも供給する金融政策が、経済の現場をこれでもかこれでもかと「マネー膨れ」させている。ジャブジャブのカネ余り状態でもって、景気を回復させようとしているのだ。マネー経済、ここに至れりだね。

草刈 世界中の中央銀行がコロナ対策という名目で緩和に走ったわけですから、市場が過熱するのは間違いないですよね。

コロナショック以降、FRBだけでもリーマン・ショック後に行った6年分のQE(量的緩和、第1~3弾)を上回る規模で市場にマネーを供給しています。加えてハイイールド債や関連ETFの買い入れも行いました。

確かにこれらの施策のおかげで市場は踏ん張れたわけですが、市場の最も重要な役割である「価格発見機能」をぶち壊しました。

モラルハザードについての批判もあります。中央銀行が助けてくれるなら、どんどんリスクを取って儲けたほうが勝ちということになってしまう。日銀に至っては株式市場にまで手を突っ込んでいますから。

澤上 確かに今は個人も機関投資家もカネ余りのバブル株高に酔いしれているのかもしれない。しかし、マーケットがとんでもなく巨大な火薬庫を抱え込んでいることを忘れてはならない。

なにしろ、史上空前のペースで供給されているマネーの大半は金融市場に流れ込んでいるのだ。そして前代未聞の規模とスピードで、バブルの高値をさらに買い上げている。

草刈 金融緩和はその作用を通じて実体経済を上向かせるために行うものです。需要を刺激して、投資を促し、経済を活性化して賃金上昇や消費拡大につなげていく。これが本来の姿でしょう。

ところが現代はそうではありません。緩和マネーは実体経済に向かわず、金融市場の中にとどまります。そして価格上昇が見込めそうなところに大挙して押し寄せている。買い上げる対象は株だけでなく不動産だったり、アートだったり、暗号資産だったり……。値上がりしそうなら何でもよい。

ただ、そんなものを買い上げても経済の拡大再生産にはつながりません。景気拡大には寄与せず、金融市場だけが膨れ上がっていくというおかしな状態になっています。

澤上 どれもこれも、いずれ火を噴く火薬庫にせっせと爆弾を運び込んでるようなものだよ。バブルがはじけるや否や、すさまじい売りとなって大爆発する。

バブルに踊り狂っている人たちは、はじける寸前まで値上がりしそうな資産を買いまくる。その買いまくってきた資産が全て売りに出されるのだ。先進各国を中心にあらゆる市場は想像を絶するような売り逃げ地獄となるだろう。

資産を長期投資にシフトしておこう

澤上篤人氏(写真:竹井俊晴)

澤上 株式市場も大きく崩れるのは避けられない。ただし、株式は全く下げ止まりのメドが立たない銘柄と、それほどの売りも出ず、数日で株価が底入れする銘柄とに、はっきり分かれるはずだ。

バブル相場を謳歌してきたような銘柄群は、大きく買われてきた分だけ売りが果てしなく出てくる。

一方、実体経済をベースとして地道にビジネスを展開しているような企業群は、それほどは売られないだろう。そもそもバブル買いの対象とはなってこなかったのだから、売りがほとんど出てこないのは当然のこと。それこそ我々長期投資家のよって立つところの企業群だ。

草刈 長期投資と言うと、どうしても長く持っているだけと思われてしまいますが、そういうことではないんですよね。長い目で見て時代の波に耐えられる企業なのか否かという視点が重要です。

2~3年のスパンで見た場合、株価の上下は当然のようにあります。ただ、長期的に企業価値を高め、実質的に成長している企業の株価はおのずと上昇していきます。

小刻みに売買を繰り返すトレーディングも面白いとは思います。一方、長期投資にはどっしり構えて大局に乗るという投資本来の醍醐味がありますよね。

澤上 我々長期投資家は一刻も早いバブル崩壊を待ち望んでいる。なぜなら市場が大暴落しても痛手はかすり傷程度だろうし、その上、叩き売られている株のバーゲンハンティングに打って出られるからだ。

多くの投資家はバブルに踊り狂った代償として大損を抱え、なおも暴落を続ける市場で投げ売りを迫られる。一方、我々長期投資家は暴落相場を買いで攻められるのだ。この違いは決定的だよ。

草刈 最近だと暗号資産やNFT(非代替性トークン)アート、スニーカー、トレーディングカード、それからウイスキーあたりでしょうか。値上がり期待で買っている者が大勢であれば、それはもうバブルです。お金の流れ込む先が増えて見えにくくなっているだけで、あちこちで小さな泡(フロス)が沸々と沸いている。

このバブルがはじければ、実体経済にも大きな影響が出るでしょう。ただ、生活に密着している経済の底堅さは信用しています。

澤上 その通り。いつのバブルも同じだよ。はじけた後、大混乱の焼け野原でしぶとくいぶいている経済が必ずある。それこそが実体経済であり、そこに資金を投じるのが長期投資なんだ。

草刈貴弘氏(左、写真:竹井俊晴)
澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
草刈貴弘(くさかり・たかひろ)
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)。 
日経マネー 2021年6月号 ここから上がる最強の日本株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/4/21)
価格 : 750円(税込み)
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