/

西成の住宅崩落と熱海の土石流 火災保険は下りる?

生保損保業界ウオッチ(損害保険)

写真はイメージ=PIXTA

補償が受けられるかは「何が原因か」が分かれ道

6月、大阪市西成区で民家4軒が崖下に突然崩れ落ちるという衝撃的なニュースがありました。家財もろとも住宅が崖下に崩落していく映像に、思わず息をのんだ人も多かったのではないでしょうか。

生活の基盤である住宅が突然失われるという深刻な損害。となれば、住宅の損害をカバーするために加入している火災保険で補償を受けられるのか否かは気になるところ。しかし、西成区のケースで生じた住宅や家財の損害は火災保険では補償されないのです。

火災保険は、様々な事故や災害で生じた住宅や家財の損害をカバーできます。それ故、住宅等に損害が生じた時には何らかの補償を受けられるのではと思ってしまいがち。しかし、保険金が支払われるか否かは、その損害が「どのような原因で生じたのか」で決まります。

住宅が突然失われた事態といえば、多数の住宅が土石流に飲み込まれる被害が7月に熱海市で発生しています。土石流の直接の原因となったのは、活発な梅雨前線の影響による集中豪雨でした。

集中豪雨など、雨が原因で生じた住宅等の損害は、火災保険では「水災」として補償されます。前述の土石流の他、土砂崩れや地滑りで被った住宅の損壊、あるいは洪水や高潮で被った床上浸水等の損害も対象になります。

支払われる損害保険金は、最大で住宅の建て直しに必要な金額です。水災リスクがある世帯にはかなり頼りになる補償ですが、損害認定に少し留意が必要です。

床上浸水に至った場合は損害の程度を問わず保険金が支払われますが、土石流や土砂崩れ等による住宅損壊は、住宅価額の30%以上の損害が生じることが要件。それ未満では補償が受けられないのが通例です。

地盤が原因の損害は火災・地震とも保険対象外

雨でなく、地震が原因で起きた土砂崩れや地滑り等の損害であれば地震保険でカバーできます。一方、地質や地盤、地下水などが原因で起きた地滑り等は対象外。水災、地震保険のいずれからも補償は受けられません。

水災以外にも、「不測かつ突発的な事故による損害」に対する補償が火災保険にはあります。ただしこの場合も「土地の沈下・隆起・移動等に起因する損害」を対象外としているのが通例。不測かつ突発的な事故であったとしても、地盤由来の損害は対象外になるのです。

これらを踏まえると、西成区の住宅損害は水災、および不測かつ突発的な事故のいずれの要件も満たしません。そのため火災保険では補償されないのです。

地盤に関わる損害といえば、東京都調布市の市道陥没による住宅損傷被害を思い出す人もいるでしょう。この損害も地盤由来なので火災保険の補償対象外。ただ、工事との因果関係を東日本高速道路が認めており、住民に補償が行われるもようです。

このように、第三者の行為が原因で被った損害であれば、原因をつくった側から補償を受けることになります。

特約や補償範囲などが商品によって異なる保険の比較はなかなか大変。この連載では保険に詳しいファイナンシャルプランナーが商品選びの勘どころを紹介します。
清水香(しみず・かおり)
学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険制度等研究会」委員。社会福祉士。

[日経マネー2021年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年10月号 配当生活入門
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/8/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン