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介護への備え、まずは公的介護保険の仕組みを知ろう

介護にかかるお金と必要な備え(上)

老後のお金について考える時、気になるのが介護にかかる費用のこと。自分や配偶者に介護が必要となる前に、親の介護に直面する可能性も高い。「介護にかかるお金と必要な備え」では2回にわたり、知っておきたい介護に関する知識とかかるお金について解説する。

介護の実態を把握し、備えておこう

高齢化が進んだことにより、介護は誰にとっても身近かつ切実なものになってきている。一方で、身近な人の介護を経験したことがない場合、介護に関する知識はほとんどない、というケースは少なくない。例えば、どのぐらいの割合の人が要介護になるのか、何歳頃からが多いのか、公的介護保険の仕組みはどうなっているのか、そして介護にはどのくらいのお金がかかるのか――といったことだ。

介護が必要になるのは何歳くらいからが多いのか。厚生労働省の「介護給付費等実態統計の概況」によると、要介護の人は70代までは2割以下だが、85歳を過ぎると急増し、90歳を過ぎると、ほぼ2人に1人が要介護だということが分かる。

介護に要した期間と費用についての調査データは少ないが、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2018年度)によると、介護にかかった期間は平均約4年7カ月。だが、4~10年未満と10年以上を合わせると全体の4割以上となり、介護が長期にわたったケースも少なくない。

介護にかかった一時的費用の平均は約69万円、平均月額は7万8000円なので、月額に介護月数を掛けて一時費用を加えると、約490万円。自分の老後に備えて介護費用を準備するなら500万円が一つの目安となるだろう。

とは言え一時的な費用・月額ともかなりばらつきがあり、要介護の程度や、在宅介護か施設介護か、などによって介護にかかるお金が違ってくる。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「介護にかかる費用は人それぞれなので、平均を見てもあまり参考にならない。親に介護が必要になった時、誰が介護するのか、どのくらいお金がかけられるかをあらかじめ考えておきたい」とアドバイスする。

公的介護保険の仕組みを知る

家族が担ってきた介護を社会全体で支える仕組みとして、公的介護保険制度が2000年にスタートした。65歳以上で要介護の人は、必要に応じて様々な公的介護保険のサービスを利用でき、その費用の1割(所得によっては2割、または3割。以下同)を自己負担する。ただし、介護サービスを利用するには「要介護」であるという認定を受けなければならない。つまり介護が必要になった時、最初にするのは「要介護認定」の申請だ。

申請窓口は、介護を受ける人が住む自治体の役所の介護保険担当課。申請の前に高齢者に関する総合的な支援を行う「地域包括支援センター」に相談するのもいい。地域包括支援センターは、おおむね中学校区に1つ設置されている。自治体によっては「高齢者サポートセンター」など異なる名称になっていることがあるので要注意だ。

申請をすると、調査員が自宅(入院中であれば病院)にやって来て聞き取り調査を行う。その結果と医師の意見書を基に「非該当」「要支援1または2」「要介護1~5」のいずれかに認定される。申請から認定通知が来るまでの期間はおおむね1カ月だ。

「要支援」は、要介護ではないが何らかの社会的支援が必要な状態で、自治体などが行う介護予防サービスを利用できる。要介護1・2は部分的に介護が必要、あるいは手助けがあれば日常生活を送れる状態。要介護3だと、一人では日常生活を送るのが難しく、4だと生活全般に介護が必要。5は寝たきり、あるいは意思の疎通がほとんどできない状態と言える。

利用するサービスによってかかるお金は違う

要介護と認定されたら、在宅介護サービス、施設介護サービス、地域密着型サービスのいずれか1つを選んで利用する。

在宅介護サービスを利用する場合は、介護を受ける人の心身の状態や家族の状況に合わせて、必要なサービスを組み合わせた「ケアプラン」を作る。ケアマネジャー(介護支援専門員)に作成を依頼するのが一般的。ケアプランの作成料は現時点では無料だが、有料化が検討されている。

ケアプランに沿って、それぞれのサービスを提供する事業者と契約して、1カ月ごとに利用料の原則1割を支払う。1カ月に利用できるサービスは、要介護度別に支給限度額がある。

限度額以上に介護サービスを利用した場合の利用料(上乗せ)や、食事を届けてくれる配食サービスや紙おむつ代といった公的介護サービスではないものを利用した場合の料金(横出し)は、全額自己負担だ。1割負担分と上乗せ・横出しの合計額が、在宅介護1カ月当たりの費用となる。

在宅介護は、家族による介護が受けられれば、介護保険のサービスを限度額まで使わずに費用を「節約」することが可能。とは言え、要介護度が高くなると、上乗せや横出しが多くなりがちで、費用負担が重くなる。

施設での介護を選択した場合は、施設の種類と要介護度別に決められた公的介護保険の利用料の1割を施設に支払う。その他に、食費や光熱費などがかかる。施設内でどんな介護を受けたかにかかわらず毎月一定額を支払うことになるので、要介護度が低いと割高なこともあるが、家族の負担が少ないのは施設利用の大きなメリットだ。

地域密着型サービスは、サービスを提供している事業者と同じ市区町村に住んでいる人のみが利用できる。利用ごとに料金がかかるサービスと、毎月定額のサービスがある。公的介護保険の1カ月の自己負担が一定の額を超えたら払い戻しが受けられる「高額介護サービス費」という仕組みがあることも知っておくといい。

(ファイナンシャルプランナー・馬養雅子)

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