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長期金利上昇で活況相場は終わるのか

広木隆のザ・相場道

米国の長期金利に市場の注目が集まっている。米バイデン政権による追加経済対策がまとまりそうなことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が一服。行動制限を緩和する州が増えるなど、経済回復期待が強まっているためだ。

もちろん、これは株式市場にはグッドニュースだ。ただ、これまで低位にあった長期金利の上昇ピッチが急なため、市場の一部に動揺も走っている。

具体的には、コロナ禍で相場を牽引してきたハイテクグロース(成長)株の急落だ。金利上昇でグロース株が売られるというのはセオリー通りだが、そもそもどういう理由なのか。

長期金利の上昇が株式に響く理由

理論的には、証券の理論価格は将来のCF(キャッシュフロー)を現在価値に割り引いたものの合計に等しい。債券の場合は将来のCFの支払いが決まっているから、価格は純粋に割引率、つまり金利の変動で決まる。割り引く分母部分の金利が上がれば価格は下がり、金利が下がれば価格は上がるというわけだ。

では長期債と短期債とではどちらが金利に対する価格感応度が高いのか。結論から先に言えば長期債だ。長期債は償還までの期間が長いため、その間に生じるCFが多い。つまり、金利が動けばそれだけ影響を受ける部分が多くなる。

もう少しかみ砕いて言おう。債券投資とは国債なら国に、社債なら企業にお金を貸して、利息を付けて返してもらうということだ。短期債ならすぐに返してもらえるが、長期債だと貸したお金が返ってくるのに時間がかかる。つまり、それだけ金利の変動リスクにさらされる期間も長くなる。金利変動の感応度が高いのも当然だ。

1回に返ってくるクーポン(利回り)の水準も考える必要がある。年限とクーポンを勘案した、貸したお金の平均回収期間のことをデュレーションという。残存期間が同じなら、利率が高い債券の方がデュレーションは短くなる。投資が早く回収されるからだ。

実はデュレーションは金利変動に対する債券価格の変化も表している。例えばデュレーションが5年の債券であれば、金利が1%上昇すれば債券価格は5%下落することになるわけだ。つまり、デュレーションの値が大きいほど、金利変動による債券価格の振れ幅が大きくなる。

この考えを株に応用してみよう。株式のデュレーションとは何か。理解しやすいのは配当利回りの逆数である。配当利回り5%の銘柄は、年に5%ずつ投資元本を返してもらうのと同じだ。投資額は20年で回収できるので、デュレーションは20年だ。

PER(株価収益率)は株価がEPS(1株当たり純利益)の何倍かを測るものだが、このEPSも株主へのリターンの原資と捉えることができる。つまり、PERが20倍なら20年、PERが100倍なら投資の回収には100年かかるということになる。グロース株は、一般的にPERが高いか配当利回りが低い株だ。すなわちデュレーションが長いわけで、よって金利感応度も高いのである。

金利上昇と株高は今回は併存できる

なぜこんな教科書的なことを述べたか。それは株と債券の違いをもう一度確認したいからだ。

証券価格は、前述したようにCFを金利で割ったものだ。ここで、債券ならばCFは固定だから金利が上昇すれば必ず価格は下がる。ところが株式の場合はどうか。金利が上がってもCF(の見通し)がさらに上昇すれば価格は下がらないのである。

金利上昇局面では通常、業績拡大期待も高まる。分子に相当するCFの代理変数(配当や利益)も上昇するだろう。金利上昇と株価上昇は併存し得るのである。今の局面は金利上昇に対して株式市場が「敬意を払って」調整しているにすぎない。つまり、本格的な調整局面ではないということだ。

筆者はこのコラムで米長期金利と米株式益回りの差である米イールドスプレッドが3%を割り込んだら危険だと再三警鐘を鳴らしてきた。実際に3%割れとなった2018年には株価は急落した。そして今またその水準に近づいている。

しかし、当時と比べ足元の金利は絶対水準が低いばかりではなく実質金利がマイナスだ。株価に本格的な調整を迫るレベルの金利ではまだないと考える。

今後半年の日経平均予想
2万9500〜3万3000円
【ここに注目】
4月下旬からの決算発表で2021年度の業績見通しを織り込めば、一段の水準切り上げがあり得る。
広木 隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
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