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株が割安かの目安「株主価値」の計算法を知ろう

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(15)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。
ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営(容姿は本人と変えています)。
ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
ナナコ ゴローの妹。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

米国の著名投資家、ウォーレン・バフェットが購入対象として選びそうな「素晴らしい企業」の買い方のポイントを教わったゴローとナナコ。今回は、株を売買する際に株価が割高か割安かを判定する基準となる株主価値を試算する方法を学びます。

ゴロー 「素晴らしい企業」の買い方のポイントは、「まずまずの価格」で買うこと。理想は、株主価値の半分以下で買うことだというのは分かりました。

ナナコ 早期に株価が2倍になることが期待できるし、株主価値の半分以下の価格で買ったので、安心して株を保有できる。この本来の価値と株価との差を投資の世界では「安全域」と呼ぶんですね。

ろくすけ ちなみに、企業には株主価値、事業価値、企業価値の3つがある。それぞれどんな内容だったかな?

ゴロー 企業が営む事業の価値を示すのが事業価値。遊休地や運用目的の有価証券など、事業活動に結びつかない非事業用資産を事業価値に加えたものが企業価値。そして、企業価値から有利子負債を除いたものが株主価値です。

ナナコ 発行済み株式から市場で流通していない株式(種類株)を除いた株式の数(普通株式数)に、その時々の株価を掛けて算出する時価総額は、株主価値に対する市場での評価。いわば、株主の持ち分の値段だとも学びました。

ゴロー 事業価値は、企業が事業を通して今後各年度で上げる稼ぎを予測した上で、そこから算出するということでしたね。具体的にはどう計算するのでしょうか?

将来のFCFの総和を算出

ろくすけ では、資産運用会社などの機関投資家も実務で使っている計算方法を説明しよう。まず3~5年といった精度の高い予測ができる期間のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測する。

ナナコ キャッシュフロー(CF)は、企業が事業や投資で得た収入から外部への支出を引き、手元に残る資金の動きを示します。①営業キャッシュフロー②投資キャッシュフロー③財務キャッシュフロー――の3つがあります。FCFは、営業CFと投資CFの合計です。FCFがプラス基調だと、投資の効率が高いことになります。

ろくすけ 教えたことをしっかりと覚えているね。

ゴロー 3~5年だと高い精度で予測できるのはなぜですか?

ろくすけ それは、過去のFCFの増加率や企業が立てた中期経営計画の目標値を参考にして予測するからだ。3~5年なら、企業の事業がどうなるか比較的予測しやすいので、精度を高められる。ここで「X」という架空の企業について、5カ年の中期経営計画を基に、FCFが最終年度までに10億~20億円の間で推移すると予測したとしよう。次が今回の肝だ。その先のFCFの合計を試算するんだ。

ゴロー えっ、そんなことができるんですか?

ろくすけ 6年目以降はFCFが永久に増え続けると仮定して、将来のFCFの合計を試算する。だから、5年目までの予測に比べて精度は低くなる。この永久に増え続けると仮定して求めるFCFの総和を「継続価値(ターミナルバリュー=TV)」と呼ぶ。

ナナコ 「永久に」というフレーズは前の講義でも聞いた覚えがあります。そうか、 CFから企業の価値を算定する「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」の基本の式を使うんですね!

ろくすけ その通り。前の講義では、毎年1万円の利息を永久に支払う社債の価格や、賃貸収入が毎年1%ずつ増えていく不動産を対象にして、その現在価値をDCF法を使って求めた。今回はX社の事業価値の試算に応用する。

ナナコ 利息が変動しない社債の場合は、CFを期待収益率(割引率)で割って現在価値を算出しました。そして、賃貸収入が1%ずつ増えていく不動産の場合は、賃貸収入の増加率、すなわち、永久成長率を期待収益率から差し引いた利率でCFを割り、現在価値を求めました。

分子は6年後のFCF

ゴロー 今回はX社の6年目以降のFCFが永久に増え続けると仮定するから、期待収益率から永久成長率を差し引いた利率が分母になりますね。一方で、分子は5年目のFCFの予測値で………。

ろくすけ ちょっと待った! 分子は5年目のFCFの予測値ではなく、それに永久成長率を掛けて求めた6年目のFCFの予測値だ。

前の講義では次のように説明した。ある金融商品の元本が10万円で期待収益率が10%なら、その金融商品の1年後という将来の資産価値は、10万円×1.1(100%+期待収益率10%)=11万円。これを逆にして、1年後の資産価値の11万円から現在の価格を求めると、11万円÷1.1(100%+割引率10%)=10万円だ。このことから、期待収益率と割引率がイコールの関係にあると話した。

前者の金融商品の1年後という将来の資産価値を求める式と同様に、分子は5年目のFCFの予測値ではなく、その1年先の6年目のFCFの予測値になるんだ。

ゴロー ややっこしいですね……。

ろくすけ 期待収益率・割引率を8%、永久成長率を5%として試算すると、次の式にあるようにTVは700億円になる。ここで注意しなければならないのは、この式で求めたTVは、5年目のFCFを起点にしているから、5年後時点のTVの価値である点だ。

だから、事業価値の現在価値を求めるには、次の計算式のように、1~5年目のFCFの予測値と5年後時点のTVを、割引率を使って割り戻す必要がある。

ゴロー 5年目のFCFの予測値と5年後時点のTVは1+8%=1.08の5乗で割り、4年目のFCFの予測値は1.08の4乗で割る……。これも複雑ですね。

ナナコ そうして求めた事業価値の現在価値が530億円。ここに非事業用資産を加えて、企業価値を求める。さらにそこから有利子負債を差し引いて、ようやく株主価値が算出されるわけですね。

ろくすけ そうだ。X社の非事業用資産が20億円、有利子負債が100億円だったとすると、株主価値は450億円になる。その半分は225億円だから、時価総額がそれを下回っていたら、「理想的な価格」と判定できる。

利率の設定がポイント

ナナコ この計算では、期待収益率・割引率と永久成長率の2つをどう設定するかが重要ですね。利率によって、事業価値の大きさがかなり変わりますから。

ろくすけ それは大切なポイントだ。期待収益率・割引率と永久成長率の2つとも、企業が手掛けている事業の成長性や安定性、事業環境などを考慮して決める。企業の事業やそれを取り巻く環境を分析して、どの利率を適用するか。投資家の力量が試される。

ゴロー しかし、大変な計算ですね。もっと簡便な方法はないのでしょうか。

ろくすけ 確かに、DCF法を使って株主価値を試算するのは手間がかかる。次回は、検討の早期段階で使う簡易な株主価値の計算方法を紹介しよう。

(次回に続く)

日経マネー 2021年5月号 日経平均3万円からの株の勝ち方入門
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/3/19)
価格 : 750円(税込み)
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