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円安・ドル高は株高要因にならないのか

広木隆のザ・相場道

円安・ドル高が進んでいる。為替相場は1年ぶりの円安・ドル高水準だ。円安は日本株相場の追い風と考えられているが、思いの外日経平均株価の上値は重い。ドル・円の為替相場は年初から一本調子で上昇している半面、日経平均は2月中旬に高値を付けてからは3万円を挟んで上値が重くなっている。この円安に対する株価の鈍さは何に起因するのだろう。

シンプルな答えは「反動」である。2020年度、日経平均は新型コロナウイルスの感染拡大による急落から持ち直し、年間上昇率は54%と48年ぶりの大きさだった。

この間、為替市場ではずっとドル安・円高が続いてきたにもかかわらず、これに逆行する格好で株価指数が大きく上昇した。その反動が今出ている。円高を無視して株高となってきたのだから、円安に転じた為替を改めて好材料視するのは都合が良過ぎるわけだ。

円高に耐えられる日本企業の変化

もう一つの答えは、そもそも為替と株価はそれほど連動していないというものだ。1971年4月から2021年3月まで四半期ごとに取った日経平均とドル・円為替レートの相関係数は0.14。相関係数は1に近いほど相関関係が強いが、これがほぼゼロということはほとんど両者に相関関係はないということになる。

1991年から30年間の両者の動きを視覚的に確認してみよう。この間、為替と株価の年間リターンの方向(上昇・下落)が一致したのは17回で、13回はばらばらに動いている。つまり株価と為替が同じ動きをする比率は56.6%。やはり両者に大きな違いはない。

2000年度以降の東証1部の最終損益の増減と為替の関係も見てみよう。円高(前年度比)になった年度は11回あるが、うち減益になったのはわずか4回。逆に言えば、円高でも増益になったのは7回もある。「円高なら減益」という常識は、実は長い間通じていないのである。

株価と為替が同じ動きをしないのは、日本企業の業績に円高耐久力が付いてきたからだと言える。日本企業は海外生産を進めたり円建て取引を増やしたりして、為替変動が業績に及ぼす影響を和らげてきた。つまり為替変動にはニュートラルな財務体質を構築してきたわけだ。それは円高の負の影響を緩和すると同時に、円安メリットも以前ほどではなくなっているということである。

長期金利の上昇はピークをつけたか

別な角度からの理由は、この円安・ドル高もいいところに来たという相場観かもしれない。年初からの円安は米国長期金利の上昇が加速したことが要因と思われる。

その長期金利の上昇は目先ピークをつけた感がある。バイデン米大統領による大型インフラ投資の発表や、約37年ぶりの高水準となった米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数の発表を受けても、米10年物国債利回りは上昇するどころか低下した。米国経済の活況はほぼ織り込んだということだろう。とすれば、それを背景とした円安・ドル高も止まる可能性がある。

ただ、円安が米長期金利の上昇によるものならまだいいかもしれない。それは、米国経済の強さを反映したものだからだ。

ここでドルインデックスを見てみよう。これはドルが主要通貨に対して高いか安いかを見る指標だ。これとドル・円相場を比較すると、昨年までは両者はほぼ同じ動きをしてきた。ところが、21年では、ドルインデックス以上に円安・ドル高が進んでいることが分かる。つまり今起きているのはドル高ではなく、円安であるということだ。

この背景として考えられるのは日本政府のコロナ対応の稚拙さではないか。緊急事態宣言を巡る迷走ぶりはともかく、決定的なのはワクチン接種率の低さ。日本は先進国の中で最低で、新興国にすら劣る。経済再開期待で買われるドル、コロナ対応の遅れで売られる円という構図が足元のドル・円相場だとすれば、日本株の買いの勢いが鈍るのも当然だろう。

とは言え、個別株は円安に反応している。TOPIX500の採用銘柄を為替感応度が大きい順に5分割すると、一番感応度が大きい群と一番低い群のリターンの差は20年末から21年3月末までで13%に及んだ。円安もそのうち一服すると予想するが、リスクヘッジとして為替感応度の高い銘柄を組み入れるのも一つのアイデアだ。

年内の日経平均予想
2万9500〜3万5000円
【ここに注目】
4月下旬からの3月期決算発表で上方修正が相次ぐ。決算が出そろう5月には3万2000円前後を予想。
広木 隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
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著者 : 日経マネー
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