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迫る衆院選、政治リスクを恐れるべきか

広木隆のザ・相場道

企業業績の明暗、貧富の差、都心と地方のマンション価格など、世の中至る所で「K字」ばやりである。日米の株価もまた「K字」だ。過去最高値圏で推移する米国株と低迷が続く日本株。日本での新型コロナウイルス感染再拡大がその背景にあるのは間違いないだろう。

7月末に東京都の1日当たりの新規感染者数が初めて4000人を超え、全国では1万人超の最多を更新した。これでは経済再開期待なども急速にしぼんでしまう。感染再拡大そのものも日本株低迷の要因だが、さらに言えばそれが政治不信につながり、投資家に政治リスクを意識させるようになっている。

新型コロナの全国的な感染拡大を受けて、政府は8月2日から、緊急事態宣言の対象地域を6都府県、まん延防止等重点措置の適用を5道府県にそれぞれ拡大したが、感染に歯止めがかからないどころか、逆に急増している。緊急事態宣言の効果が薄れていることは明白なのに、飲食店への酒類提供停止や時短営業の要請、国民には自粛要請と「お願い」を繰り返すばかりだ。

こうした無策ぶりに加え、西村康稔経済財政・再生相が飲食店の酒類提供を巡って金融機関を使った「圧力」を加えようとした問題も国民の不信感を増幅させたのだろうか。菅義偉内閣の支持率は各種の世論調査で内閣発足以来の最低水準となっている。

さすがに政権交代のリスクまでは浮上していないものの、秋までに控える衆院選で自民党が20~30議席減らすシナリオは十分あるだろう。7月の東京都議会選挙の苦戦状況を見れば、最悪44議席減で自民党が単独過半数を確保できない可能性もゼロではないだろう。そうなれば菅政権は持たない。政治の安定が日本株の数少ない長所の一つだけに、それを失うことになりかねない。これが、市場が見ている政治リスクの一つだ。

衆院解散時期は不透明、内閣支持率回復後か

もう一つは衆院選の日程自体の不透明感だ。過去は衆院選が株高につながってきた。解散から総選挙の期間に日本株は上昇するというパターンが見られる。それだけ重要なイベントなのだが、肝心のスケジュールが読めないことで投資家は投資タイミングを決めあぐねている。菅首相はいつ「解散」という伝家の宝刀を抜くだろうか。低い支持率のまま解散総選挙に打って出たくはないだろう。大々的な経済対策を掲げて少しでも人気を回復させてから選挙に臨みたいはずだ。

政府・自民党は9月前半にも追加経済対策の提言を策定、衆院選後の国会で追加対策を盛り込んだ2021年度補正予算の成立を図る日程を描いているようだ。しかし、それは感染の動向次第だ。下手なタイミングで景気対策を打てば、かえって感染拡大に拍車をかけることになってしまう。

そもそも、どのような経済対策を打てるだろうか。まず「Go To」キャンペーンのような外出を促す政策は無理だし、再度の1人当たり一律10万円の特別定額給付金も消費喚起にはつながらないことは前回で立証済みだ。どんな経済対策でも、それは景気を刺激したり経済を活性化させたりするものであり、コロナ禍での自粛とは相反するものだ。従って、感染が収まらない限り、経済対策を打つことは不可能だろう。

10月21日の衆院解散を想定しておくべし

感染がいつ下火になるか。こればかりは予測不能だ。そうなると衆院選の日程も最も遅いケースを想定しておくことが必要だろう。

「最も遅いケース」とは、衆院議員の任期満了日である10月21日に解散するというものだ。法律上は可能である。すると当然、投開票日は11月にずれ込む状況になる。その場合、解散総選挙より前に来る自民党総裁選での菅首相の立場・状況はどうなるかという微妙な問題はある。しかし、できるだけ解散を先送りすればワクチン接種も進展し感染が沈静化する可能性が出てくる。菅首相にしてみれば、その可能性に賭けたいという思惑が働いても不思議ではないだろう。

10月下旬の解散は実は株式相場にとっても季節的に相性がいい。「10月末から翌春にかけて株価が上がりやすい」という経験則になぞらえた「ハロウィーン効果」はよく知られる。実際、11~12月にかけて年末高の季節性もある。日程は不確実ながら、今年の衆院選も株価反騰の起爆剤となりそうだ。

広木隆(ひろき・たかし)
国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。
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