/

産業基盤を支える 「機能性金属材料」関連の割安銘柄

工藤特許探偵事務所

アルミニウムは機能性に優れた金属材料の1つ(写真はイメージ=PIXTA)

「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき、技術力に比べて株価が安い「技術割安株」を、工藤一郎国際特許事務所の力を借りて探してみた。

技術的な優位性を維持しやすい分野

単純な金属ではなく、組成・組織を最適化するなどして何らかの機能を高めたのが「機能性金属材料」だ。自動車のボディーや半導体の原材料としてはもちろん、基礎化学品として様々な製品の製造工程に使われる。製品の性能や製造コストも左右する重要な材料だ。また、模倣が難しく、技術優良企業がその優位性を維持しやすい分野でもある。以下、「YK値」(下囲み参照)に対して株価が割安な上位4銘柄を紹介する。

第1位神島化学工業。耐火性建材とマグネシウム関連製品を手掛ける。マグネシウム系事業を成長エンジンと位置付け、市場拡大を目指している。また、近年は観測機器や医療機器などに応用できる大型の透明セラミックスにも注力している。

特許面では酸化マグネシウムに強みがある。酸化マグネシウムとは、ファインセラミックスの原材料や、機能性プラスチックの添加剤となる基礎化学品の一種。耐熱性や放熱性に優れるため、輸送機器や電気製品に多く利用されている。産業の基盤を支える材料であり、堅実な事業の維持拡大が期待できる。

第2位ハリマ化成グループは、天然樹脂ロジン(松ヤニ)のトップメーカー。ロジンは樹脂や製紙薬品のほか、はんだの添加物となるフラックスにも使用されるため、金属材料関連のはんだ用合金に強みがある。世界各地に多数の製造拠点を持つグローバル企業でもある。

はんだは電子部品をプリント基板に組み付ける際に必須となる材料だ。IoT(モノのインターネット)化によりプリント基板を使う製品の普及拡大が予想され、同社のはんだに対する需要の拡大も見込める。

第3位チタン工業。その名の通りチタン関連の材料を提供する企業だ。塗料や紙製品などの製造に使用される酸化チタンや合成酸化鉄を製造。中でもトナー添加剤や化粧品材料として使用される超微粒子酸化チタンを得意としている。2019年には2次電池向けのチタン酸リチウム事業をグローバル市場で展開すべく東芝と共同出資会社を設立。新規分野も積極的に開拓している。EV(電気自動車)などの関連銘柄として注目を集めたが、技術力から見ればまだ株価は割安な状態と考えられる。

第4位UACJはアルミニウムのトップメーカー。2013年に古河スカイと住友軽金属工業が統合して誕生した。圧延品の他、各種のアルミニウム製品で世界トップクラスの生産能力を誇る。環境保護のためアルミニウムのリサイクルにも取り組む。

原子レベルで物性を制御し、高品質かつ様々な機能を持ったアルミニウムを生産する優れた技術を持っている。アルミニウムは炭素強化プラスチックと並び、自動車や航空機の軽量化に欠かせない材料。EVの普及に伴う需要拡大も見込まれており、同社の成長も期待できる。

今回取り上げた4社は産業基盤を支えるような基礎技術を有しており、その製品競争力は高い。今後も堅実な成長が期待できる企業と言えるだろう。

YK値とは? 特許価値で割安株を探す方法


「企業が保有する特許の経済価値の総和と時価総額(株価)には相関がある」という仮説に基づき割安株を探す。特許の経済価値は工藤一郎国際特許事務所が開発したYK値を用いる。YK値とは、出願された特許に対する閲覧請求や無効審判など、ライバル企業が特許の内容を調べたり、無効にするために弁理士に支払った費用から算出する。弁理士コストは50万~100万円程度、訴訟を含めた場合は数百万円程度であり、YK値はこの金額を基準として算出する。なお、実際の手続きには弁理士コスト以外も必要で、全体では弁理士コストの10倍、数千万円程度になることもある。ただし、全体のコストと弁理士コストはおおむね比例するため、弁理士コストから技術の価値は推定できる。

独自に選んだテーマごとに各社のYK値と時価総額を図のような軸を持つグラフにマッピングすると、妥当と思われる近似曲線が浮かび上がる。この近似曲線から左に大きく離れている企業(図ではA社)は、特許価値、つまり技術力比で時価総額が低い(割安)と考えられる。
同事務所によると、A社の位置は2年ほどかけて近似曲線に近づいていく傾向がある。これは、特許技術が製品化されて収益に寄与。時価総額が膨らむためと考えられる。この連載では、業種ごとの近似曲線から、左への乖離が大きいほど、株価が割安な銘柄として扱う。
工藤一郎(くどう・いちろう)
弁理士。工藤一郎国際特許事務所所長。大阪大学工学部卒。NECで磁気ヘッド開発に従事した後、知的財産部などで特許実務に携わる。2000年4月に工藤一郎国際特許事務所設立。特許の経済的価値の数値化や、特許価値の比較を容易にする技術業種分類などを開発。

[日経マネー2021年5月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年5月号 日経平均3万円からの株の勝ち方入門
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/2/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン