スパイダーマン最新作 時空超え過去作品の悪役登場

スパイダーマンのシリーズ最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が公開中だ。2022年1月7日の日本公開に先駆け、21年12月17日から公開された米国では初日3日間で興行収入2億6000万ドルをあげ、歴代2位のオープニング興行成績となった。スパイダーマンを主人公とした映画は、これまでも何度か作られている。その歴史と最新作の見どころについて解説する。
[最新作のストーリーについて一部触れている文章があります。見ていない人はご注意ください]
これまで3人が演じた主人公ピーター
これまでスパイダーマンの映画は、主役を代えて3シリーズが作られている。
トビー・マグワイアが3作(『スパイダーマン1~3』)、アンドリュー・ガーフィールドが2作(『アメイジング・スパイダーマン1~2』)、そしてトム・ホランドが2作(『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』)で、新作『ノー・ウェイ・ホーム』がトム・ホランドの主演作としては3作目となる。
ただ、ホランドがスパイダーマンとして初めて登場したのは、17年公開の『ホームカミング』の1年前、16年のマーベル映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』からだ。

スパイダーマン1作目が公開されたのは02年。主人公ピーター・パーカーが同級生への恋に悩む高校生という観客が親近感を抱きやすいヒーローだったこと、舞台がニューヨークで01年の米9・11テロを経てヒーローを求める観客心理が働いたことなどから、映画は大ヒット。米国では興収4億400万ドルをあげて年間1位を記録し、日本でも興収75億円を記録した。これは日本でのアメコミヒーロー映画最大のヒットであり、今も破られていない。04年に2作目、07年に3作目が公開され、いずれも大ヒットとなったため、同じ監督(サム・ライミ)とキャストで4作目を模索したが、うまくいかず仕切り直しとなった。
しかし、主役をアンドリュー・ガーフィールドに代え、12年に公開した『アメイジング・スパイダーマン』は米国での興収が2億6200万ドル。07年『スパイダーマン3』の3億3700万ドルを大きく下回った。14年の『アメイジング・スパイダーマン2』は2億300万ドルとさらに落ち込んだ。
このテコ入れ策として、ソニー・ピクチャーズが行ったのが、マーベルとの共同製作だった。
新作ではドクター・ストレンジ登場
スパイダーマンは、もともとソニー・ピクチャーズが、コミックを発行しているマーベルから原作権を取得して映画化した作品だ。だが、マーベルは08年の『アイアンマン』から、独自に映画製作に乗り出す。キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクなど、人気ヒーローの世界観を統一する「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)を打ち出し、ヒーローが一堂に会する『アベンジャーズ』(12年)の大ヒットで、ヒーロー映画の本流であることを多くの人に印象づけた。
ソニー・ピクチャーズがマーベルとスパイダーマンを共同製作することでアベンジャーズのメンバーとの共演が可能となり、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16年)でスパイダーマンが初お披露目された。続く『スパイダーマン:ホームカミング』(17年)では「ピーターはトニー・スターク(アイアンマン)にあこがれ、アベンジャーズの一員になることを夢見ている」という設定が加味され、アイアンマンも登場した。そして、新作『ノー・ウェイ・ホーム』にはアベンジャーズのメンバーであるドクター・ストレンジが登場する。
前作『ファー・フロム・ホーム』でホログラム技術を操る悪役ミステリオを倒したピーターだが、ミステリオの残した映像をネットニュースの「デイリー・ビューグル」が世界に公開。ミステリオ殺害の容疑がかけられるとともに、ピーターがスパイダーマンであることが明かされる。マスコミは騒ぎ立て、ピーターの生活は一変。恋人MJや親友ネッドの生活も変えることになってしまう。ピーターはドクター・ストレンジの元を訪れ、自分がスパイダーマンだと知られていない世界に変えてほしいと頼む。

しかし、ストレンジが呪文を唱えると、本来の魔術が失敗。マルチバースの扉が開かれ、異なるスパイダーマン世界の悪役を呼び寄せてしまう。つまり先に解説した、別の俳優が主人公を演じた過去のスパイダーマン作品に出てきた悪役たちが現れるのだ。『スパイダーマン』に登場したグリーン・ゴブリン、『スパイダーマン2』のドック・オク、『アメイジング・スパイダーマン2』のエレクトロなどがピーターの前に立ちはだかる。


悪役を主役としたシリーズも続々
ソニー・ピクチャーズは、『スパイダーマン』の悪役を主人公にした作品も製作している。地球外生命体に寄生されたジャーナリストを主人公にした『ヴェノム』(18年)が世界的に大ヒットしたことで、悪役シリーズの製作に注力。『ヴェノム』の2作目『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が2021年12月3日に公開された(記事「映画『ヴェノム』続編 スパイダーマンの悪役に強敵」参照)。
22年には吸血鬼に変貌する科学者を主人公にした『モービウス』が公開される。こちらはマーベルとの共同製作ではなく、ソニー・ピクチャーズの単独製作。単独製作なら利益を折半することもなく、映画がヒットし続ければソニー・ピクチャーズにとって旨味は大きい。
また同社では単独でスパイダーマンのアニメ映画も製作。『スパイダーマン:スパイダーバース』を18年に公開し(日本では19年公開、記事「映画『スパイダーマン:スパイダーバース』誰でも英雄」参照)、22年には続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース (パート1)』(原題)が公開予定だ。
(ライター 相良智弘)

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