コロナ就活の疑問にお答え ウェブ面接はここに注意
ふつうの大学生のための就活ガイド

こんにちは、日本大学経済学部教授の安藤至大です。前回まで10回の連載を通して、就職活動という「ゲーム」のルールや構造について、また自己分析や企業研究の方法などについて解説してきました。
いま就活の準備を進めようとしている皆さんが気になるのは、2020年度からの新型コロナウイルス禍の影響ではないでしょうか。就活もオンライン選考が常態化するなど、大きく影響を受けました。就活の基本的なルールや準備すべきことはコロナ禍でも同じですが、環境の変化によって進めにくい面が出てきているのも事実です。そこで連載の最後となる今回は、コロナ禍で就活生からよく聞かれる質問について、答えていきたいと思います。
自己PRは「やり遂げたこと」じゃなくてもいい
Q1 大学1年生の頃から頑張っていたアルバイトやサークル活動は、コロナ禍により不完全な取り組みになってしまいました。また、大学のゼミもオンラインが中心となり、活動が低調な感じがします。そのため、目に見える形での実績も挙げられていませんし、自己PRとなるエピソードが圧倒的に不足していると感じています。どうしたらいいでしょうか?
コロナ禍では多くの人々と直接関わるという社会生活が制限されたことにより、自己PRにつながるようなエピソードが不足しているという話をよく聞きます。しかしこのような環境下でも、自分にできることを探して積極的な活動を続けた学生もいます。
もしゼミがオンラインになり、活動が低調になったと感じるのであれば、オンラインでも活性化する方法について考えてみる、という行動をとることができます。そして、小さなことから確実に、考えたことを実行してみましょう。例えば、オンライン上でやりとりしやすいツールを自分で探して提案するのもいいですし、オンラインでの研究発表会を企画することも考えられます。
就職活動の自己PRでは「やり遂げたこと」を話さなければいけないと思い込んでいる学生が多いようですが、現在進行形で「自ら考えて動いていること、そしてその経過で学んでいること」を伝えるのも効果的です。「今の状況で最大限できることはなんだろう?」と考えて前向きに取り組んでみてください。
ただし「感染対策をとりながら人を集めてイベントをした」といった活動を自己PRの際に伝えるのは注意が必要です。多くの人々を集めて活動したということは、企業によってはリスク管理ができない人物だと捉えられてしまう懸念もあります。
いずれにせよ、環境を理由にして後ろ向きの発想になっている学生よりも、現状に向き合って、それをどうにかして改善しようと取り組んでいる前向きな学生の方が、一緒に働く相手として魅力的ですよね。その点を意識しましょう。
Q2 オンライン面接で気をつける点はどこですか? オンライン面接では、採用担当者が就活生のどこをみて評価しているのかがわからなくて困っています。
最初に考える必要があるのは、ネット環境を整えることです。オンライン面接を実施するのに十分な性能のコンピュータとインターネット接続環境を準備して、Zoomなど実際によく使われているビデオ会議サービスを利用してみましょう。そして背景や顔の明るさ、騒音の有無など、面接時のコミュニケーションを阻害する要素がないかを把握することが重要です。もし自宅で望ましい環境を確保することが難しければ、大学の設備を使えないか、キャリアセンターに問い合わせてみるなど他の方法を検討してみてください。

次に、オンラインで話す練習をしておくこと。ノートパソコンを使うのであれば、カメラの高さが正面に来るように設置するといいでしょう。そして相手に目線は合うのか、服装はどこまで映り込むのか、身ぶりは大げさなほうが伝わるのかなどを、実際に録画して確認してみることをおすすめします。
その際、自分のことをひいき目に見てくれる家族や友人などではなく、他の人にもその録画を見てもらって改善点の指摘を受けることが重要です。ちょっと大変かもしれませんが、ここまでやって、やっとスタートラインに立つことになります。
オンライン面接では表情や身ぶりを明確に
続いて、面接の内容についてです。オンライン面接でも、採用担当者が評価するポイントは基本的には対面と変わりません。
一方で、オンライン面接が対面と違う点は、3点あります。
・会話に微妙なタイムラグが生じる
・控室での態度や入退室での振る舞いなどは観察できない
そして、この3点がオンライン面接の難しさにもつながります。まず「顔の表情が乏しく印象に残らない」と採用担当者が感じないように、表情や身ぶりを明確にすることが求められます。「会話のテンポが合わない」と感じないように、オンラインでのコミュニケーションに慣れておく必要もあります。
そして「人柄や雰囲気よりも、話の内容や論理性などをシビアに判断される」ことを理解しておきましょう。やはり事前に面接の練習をきちんとしておくこと、この基本がオンラインではより重要になってきます。
Q3 オンラインでのグループディスカッションは、どのように進められるのでしょうか? どうやって攻略すればいいのでしょうか?
オンラインでのグループディスカッションの方法としては、最初に課題が提示されて、その後に各グループでの討議を通じて考えをまとめて報告をするなど様々な方法があります。
オンラインでのグループディスカッションも対面方式と同じく、事前の準備が必要ですし、採用担当者が見ているポイントも大きくは変わりません。しかし、オンライン特有の難しさとして、「発言が重なる」「タイムラグが起こる」といったことがあります。
要は「その場の空気感」というものが学生同士にも、採用担当者にも把握しづらいという点が難しいわけです。事前に友人同士で練習したとしても、実際に話し合いをするのは当日初めて会う人が相手ですから、さらに難易度は上がります。
そこでおすすめするのは、グループ内でのルールを最初に明確にすることです。例えば、
・2回目以降の発言は、手を挙げてから発言する
・司会、記録係、タイムキーパーなどの役割分担を明確にしておく
といったように、ディスカッションがスムーズに進むようにルールについて合意することから始めましょう。議論の内容だけでなく、効率的な進め方ができるかどうかも評価対象となるので、ルール作りを先導することであなた自身の評価も上がることが考えられます。1人で話し続けるような学生がグループ内にいることで、全員の評価が低くなるといったことの防止にもつながります。
面接でも同様ですが、オンラインツールの使い方は事前によく確認しておきましょう。議論の内容だけでなく、挙手機能やホワイトボード機能などを使いこなすことで、グループに貢献することができます。こうしたツールを積極的かつ的確に使いこなせることは、仕事をしていく上で必要なスキルにもなります。

学生側からも積極的なアプローチを
Q4 コロナ禍でOB・OG訪問に苦労しています。知り合う機会が少なく、知っている先輩もリモートワークなどの勤務状況がよくわからないため、積極的にアポイントを取ることができません。どうしたらいいでしょうか?
採用ページから先輩社員の話を聞くことができるように設定されているなど企業側がOB・OG訪問の門戸を開いている場合を除いて、コロナ禍では、ゼミやサークルのOB・OGとの接点を得ることも難しいでしょう。
しかし、厳しいようですが、これに関しては皆が同じ条件です。大学のキャリアセンターに依頼をする、ゼミの先生から紹介を受けるといったことを通じて、対応してもらえる先輩を探しましょう。オンラインでOB・OG訪問をすることも可能です。オンラインの場合には、直接会いに行かなくてもいい分、社会人側のハードルは下がったと考えることもできます。
企業側は、人口減少によるこれからの人手不足を見越して、優秀な学生を採用したいと考えています。実際に働く先輩の声を聞くための方法は必ずあるはずですから、コロナ禍では積極的な就職活動ができないと思い込むのではなく、通常期と同じようにルートを探して適切に活用しましょう。
Q5 選考が進んでいますが、これまでずっとオンライン選考です。直接、企業を訪れていないため、企業の雰囲気が正直わかりません。内定をもらったとしても、本当に入社していいのか不安です。どうやったら、企業の雰囲気を知ることができますか?
企業の雰囲気を知りたいのであれば、正直に人事担当者にそう伝えましょう。採用を予定している学生から、そういった不安を訴えられたら、希望部署の先輩社員を紹介して話を聞かせてくれたり、社内を案内してくれたり、様々な配慮をしてくれるはずです。このような依頼に対する採用担当者の反応や回答からも、その企業の雰囲気が知ることができます。
連載の第9回でも紹介した方法ですが、気になる会社があれば、その会社の前まで行って、働いている人々を観察してみるということも効果的です。社員や出入りする人の表情や服装などを確認してみることで、わかることは多いはずです。
コロナ前は売り手市場だったこともあり、企業側は社内見学や交流会など色々な機会を用意して丁寧な対応をしていたと思います。しかし、このコロナ禍で業種によっては企業経営に大きな影響があり余裕がなくなったこと、採用人数を絞らざるを得なくなったことから、これまで以上に学生の側からの積極的なアプローチが必要です。自分自身で働く会社を見極めるという気持ちをもって、取り組んでみてください。
(連載おわり)
日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。
関連リンク
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。