スマホ撮影せずにはいられない 韓流グルメお薦め3店

音楽やドラマ、美容などで常に話題の韓流だが、食にも韓流ブームが到来している。かつては東京・新大久保近辺だけに見られたチーズタッカルビやハットグ、ヤンニョムチキンなどの韓国グルメは、今では至る所で見られるようになった。伸びるチーズなど、映える見た目やユニークな食べ方は、Z世代の間でも今、話題沸騰中だ。今回はスマートフォンで撮影せずにはいられない都内の人気3店をご紹介。
まずは韓流ブームの磁場となっている東京・新大久保の店。最寄りのJR山手線の新大久保駅から歩くこと数分、午前10時30分に開店するやいなや若い女性客ですぐに満席になる韓国料理店「モンナンカムジャチキン本店」(東京・新宿)では、「チーズマグマ鉄板」(1080円)が話題だ。熱々の鉄板にとろ~りとろけたチーズ、中央にはキムチチャーハン、上には目玉焼きがのっている見た目の美しい一品。
チャーハンには通常のキムチと熟成したキムチの2種類を使って、しっかり炒めることで香ばしく仕上げている。これにチーズや卵の黄身が加わることでチャーハンの辛さがまろやかになり、絶妙なおいしさになる。「SNS(交流サイト)で見つけて、このメニュー目当てに来店されるお客様が多いです。ランチだけで1日に100食売れたこともある看板メニューです」と経営するIn Style Japan営業部の文岐賢さんは語る。

ほかにも驚きのメニューがある。何やら白いムース状のクリームで覆われた一品は、生クリームだろうか? はやりのパンケーキ店でこんな光景を見たことがあるような……。
「トッポッギや中華タンメン(きしめんのように太い春雨)、タマネギなどの辛味煮込みにホイップクリームをたっぷり絞った料理です。韓国でも1~2年前から大人気で、絞ったホイップクリームがバラの花びらのようなのでロゼトッポギと呼ばれているんです」(文さん)
なんと、甘辛いトッポッギの上に、こんなにホイップクリームをたっぷりとのせるとは。恐る恐る一口食べてみると、まずふわふわのクリーム味に癒やされ、思わず笑みがこぼれる。次にもちもちとしたトッポギと一緒に味わうと何ともクセになる味わいだ。ホイップクリームに絶妙な塩加減が加わり、甘味・塩味・辛味のバランスが心地よい。あれっ? 何だか止まらない。
中華タンメンのちゅるちゅるしたかみごたえも美味で、はんぺんのような韓国おでんも入っているのでうま味が広がる。豚や鳥などの肉類は入っておらず、クリームは口に入れるとシュワ~と解けて無くなるムースのような軽さなので、想像していたよりも重くはなかった。
ディナーのシメに、数人で取り分けて食べるのに人気だそう。なるほど、たまには皆で禁断の味というのも楽しいかもしれない。1人だと勇気がいるかもしれないが、皆と食べたら楽しい思い出になりそうだ。

韓国の定番料理の盛り合わせ「チキン幸せセット」(2980円)も好評だ。日本だけでなく韓国でも大ブレイクしたハニーバターポテト味の一品や、キンパ、チーズボール、ヤンニョムチキン、ソトックソトック(ソーセージとお餅を串に刺したもの)など9種の人気料理が一度に楽しめる。これにもスマホ撮影するお客が続出だ。
鉄板の上が七変化、撮影せずにはいられない!

続いては今年2月にオープンしたばかり、JR御徒町駅から数分の韓国居酒屋「chago(チャゴ)」(東京・台東)だ。すぐに目に入るのが韓国語で書かれた店名。ピンク色のネオンなので目立つ。店内にもカラフルなネオンが壁に設置され、こちらも撮影スポット満載の店だ。BGMは世界的にも有名なあの韓国男性グループのヒット曲。まるで韓国に来たかのような感覚を覚える。
メニューは「CHAGO SET MENU」(1人前2980円・2時間制)のみ。メインの鉄板焼きを、サムギョプサル(豚)、チャドルバギ(牛)、チュクミポックム(タコ)の3種から選ぶ。これに3種から選べる前菜1品と、3種から選べる一品料理が1つ付く。さらにナムル、キムチ、包み生野菜が食べ放題で、シメのご飯(または麺)までセットとなっていて、ボリューム満点かつ、リーズナブル。今回は30~40代の女性グループでの訪問だ。
さっそく一番人気のチャドルバギを注文。チャドルバギは韓国で牛のスライス肉のこと。現地ではこれを普通に焼いて食すが、同店では独自の食べ方で楽しませる。直径30センチ以上はあろうか、かなり大ぶりな鉄板が卓上コンロに設置され、その中央にはシメジやトウミョウなどがこんもりと山盛りとなっている。その周りにはチャドルバギ(同店ではが上州牛のトモサンカクを使用)が美しく並べられて提供されるのだ。
「肉から焼いていきますね」と手際よくトングを動かすのは店長の山田さん。あっという間に肉の両面が焼かれ、数枚ずつ客の小皿に取り分けられ、ゴマ油と塩で味わうようにアドバイスしてくれる。肉は驚くほど軟らかく、うま味が濃厚で、出だしからテンションが上がる。残りの肉はいったん別の皿に移し、次は鍋の中央に置いてあったシメジなどを炒めてくれた。ジュージューという音とともに香ばしい香りが広がり、あっという間に円形の野菜炒めが鉄板の上に誕生した。
「先ほどのお肉をこの野菜の上に乗せてきますね」と山田さん。野菜と肉を一緒に炒めると肉が硬くなってしまうので、先に肉だけを焼き、別に炒めた野菜の上に後から肉をのせるのだという。そして野菜の輪の中央部分に溶き卵が投入された。想定外な光景に「おおっ!」と歓声が上がる。シャッターチャンスを逃さないようにと、必死な自分たちが何だか笑える。卵は木ベラでかき混ぜたかと思ったら、蓋をしてしばらく蒸し焼きにした。

待つこと数分。その間に周りの肉と野菜を味わって待つのだが、焼いたキムチのなんとも香ばしいこと。ほお張りながらも、次の撮影アングルを探りながら各自がスタンバイする。蓋を取る瞬間は、もちろん動画撮影だ。
いざ、蓋が開くと、予想以上の湯気とふわふわな卵焼きがお目見え。これは撮影しがいがある。熱々の卵焼きや肉を、エゴマやレタスで包んで、コチュジャンを付けて味わうと、もう止まらない。今度は皆、黙々と食べることに集中だ。最後のシメのご飯(または麺)まで全部、店のスタッフが焼いてくれるのもうれしいところだ。肉もたっぷりなのだが、それ以上に野菜も種類豊富なので、おなかいっぱいでもヘルシーだった。
山田さんはこう説明する。「飲食店でご飯を食べるというより、体験しに行くというのが今の時代は大事。SNSを通して口コミで店の魅力を広げてもらうために、面白い動画が撮れるメニューや店内に工夫しました」。ちなみに選べるおつまみの中の1つ、「りんごのポテサラ」は、ピンクと白のリンゴ型のモナカがポテトサラダに乗せてあり、とてもかわいらしい。9割は女性客で、20代、30代の女性に特に人気と聞いて納得した。

居酒屋が韓流グルメ取り入れて姉妹店舗ブランドを開発

次はJR恵比寿駅から徒歩すぐ、今年3月にリニューアルオープンした「赤からソウル 恵比寿西口店」(東京・渋谷)。居酒屋の「赤から」は今年で開業19年目を迎える全国チェーン店だが、韓国料理を取り入れ姉妹店舗ブランドを開発した。
店に入るとまず、ピンク色のネオンや韓国語入りの照明などが目に入る。そして「今日はどんだけ チーズを伸ばすのかい?」と書かれた大きなのれんも発見。この店も撮影スポット満載の、Z世代に人気の映えるネオ居酒屋のようだ。
「赤から」の看板メニューといえばピリ辛味の「赤から鍋」だが、それを韓国風にアレンジしたオリジナルメニュー「赤からソウル鍋」が同店の目玉。さっそく「赤からソウル鍋」(1人前1419円)を注文すると、赤いスープに国産の牛ホルモンや油揚げ、ニラ、名古屋コーチン入りのつくね、豆腐、キャベツなどが入った鍋が卓上コンロと一緒に提供された。

赤から鍋の具材とも一部似ているが、トッポッギやキムチ、そして出だしからチーズをのせたインスタントラーメンが鍋の真ん中に入っているのが韓流らしく、見た目もインパクトがある。しばらく煮込んで蓋を開けると、とろけたチーズが麺に絡んでグツグツと煮込まれ、スマホの撮影タイムでかなり盛り上がる。
スープは小辛・中辛・大辛の3種の辛さから選べ、フレッシュトマトがたっぷりと入っているためか爽やかな酸味もあるピリ辛味だ。「赤から鍋」の辛味噌と、韓国料理のコムタンスープをブレンドさせたものだそうで、うま味がたっぷり。この赤からソウル鍋に「赤マヨきゅうり」や「韓国クリスピーチキン」「赤からソウルサラダ」など6品が付くお得なセットメニュー(1人前2519円)もある。いずれも鍋なのに1人前から注文可能で、小鍋で提供されるのがうれしい。

「赤からサムギョプサル」(1人前1639円)もユニーク。卓上の鉄板で豚バラの厚切り肉やもやしナムル、キムチをスタッフが豪快に焼いてくれるのだが、その周りの鉄板のくぼみの部分に卵の液を流し込み、ふわふわの「赤から玉子焼き」も同時に焼くのだ。サンチュで肉と卵を一緒に巻いたり、箸休めとして甘めの卵焼きを味わったりすることができる。
ほかにも、辛さが選べる「赤いUFOチキン」(1人前1199円、2人前から注文可能)は、鉄板の中央のチーズソースをたっぷりつけながら食す赤から風味の揚げ鶏。一世を風靡したチーズタッカルビのように、伸びるチーズの料理写真が撮影できるのも若者にとっては人気だ。アルコール類のリストにはマッコリやチャミスルなどもそろっている。
韓流ブームに乗っている店はどれも、エンターテインメント性に富み、映える写真がたくさん撮影できる楽しい店ばかりだった。食の韓流ブーム、この機会に一度は体験してみてはいかがだろう。
(フードライター 古滝直実)
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