「東証1部」なくなったってホント?株主優待に変化は
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A. 「プライム」など3市場に再編。株主優待をやめる企業が増えそう
トクニャン(以下、トク) お得情報好きなネコ、トクニャンだニャ。新年度から東京証券取引所が再編! というニュースを見たニャ~。みんな知ってる「東証1部」がもうないってホント!? 何が変わったか教えて~、FPの深野康彦さん~!
深野(以下、深) 東証1部、東証2部、ジャスダック(スタンダードとグロース)、マザーズの4市場が再編され、4月4日からは、グローバルな規模と経営の質を備えた「プライム」、それに準ずる「スタンダード」、新興企業中心の「グロース」という3つの新市場がスタート。こうした大きな市場改革は約60年ぶりのことです。
トク なんで再編することになったのかニャ?
深 海外の投資マネーも呼び込めるような魅力ある市場への改革が一番の目的。一般的に「優良企業」とされる東証1部企業ですが、近年は上場企業数が増え、再編前は2177社にも膨れ上がっていたんです。新市場の「プライム」では、流通株式時価総額100億円以上など、新規上場や上場維持のための基準をこれまでよりも厳しくすることで、市場の新陳代謝を活発にするのが狙い。プライム市場の企業は他にも、独立社外取締役の比率が3分の1以上であることや、気候変動リスクの開示などが求められます。
トク へえ~、一種のゴールみたいになっていた「東証1部」だけど、プライムだと上場後も気が抜けないニャ。それで、再編後のプライム市場はえりすぐりの銘柄がそろうピカピカの市場になったのかニャ?
深 プライム市場に移行したのは1839社。フタを開ければ旧東証1部企業の8割超で、思ったよりも「絞り込み」は進みませんでしたね。理由は、新基準を満たしていなくても、適合計画書を提出すれば、そのまま新市場に移行できる「経過措置」が設けられたからです。

TOPIXの構成銘柄も段階的に変わっていく
深 同時に株価指数にも変更が。日本株全体の値動きを表す東証株価指数(TOPIX)は、今まで東証1部の全銘柄が構成銘柄でしたが、流通時価総額が100億円未満の企業は段階的に外され、2025年の1月末には「新TOPIX」に移行します。

トク TOPIX連動のインデックス型投信を持っている人って多そうだけど、大丈夫かニャ?
深 保有する投信に大きな影響はないでしょうが、流動性が高い銘柄に絞られるので、長期的に値上がりしやすくなる可能性はあります。また、東証2部株価指数やジャスダックインデックスなどの株価指数は廃止。「プライム」「スタンダード」「グロース」、それぞれの新市場別指数が新設されます。
トク 個別株投資をしている人には、何か影響があるかニャ?
深 市場再編を機に、上場企業が本気で企業価値の向上や流動性の改善に取り組めば、投資家にとってもプラスでしょうね。現時点でプライム市場の上場基準に満たない「経過措置」銘柄が、上場を維持するためにどのような計画を立てているのかなども、銘柄選びの1つの視点となるかもしれません。
トク 再編をきっかけに、株主優待を廃止する企業が増えたっていうのはホントかニャ。
深 これはホントです。東証1部への上場を維持するのに、「株主数2000人以上」という基準がありましたが、プライム市場は800人以上へと緩和。従来、株主数を増やすために使われてきた株主優待ですが、その必要が薄れるので、今後も廃止する企業は増えるでしょうね。
トク 市場の名前が変わるだけじゃないってよく分かったニャ!
この人に聞きました

(取材・文/澤田聡子 イラスト/おおの麻里)
[日経ウーマン 2022年6月号の記事を再構成]
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