キャンプやバーベキューに必携の「モテ塩」はコレ
魅惑のソルトワールド(67)

コロナ禍による閉塞感の反動なのか、アウトドアでのキャンプやバーベキューが今、再びブームのようだ。日本オートキャンプ協会(東京・新宿)の最新の「オートキャンプ白書 2022」によると、コロナ禍でいったんは大きく落ち込んだオートキャンプだったが、21年には前年度比23%増とコロナ禍前の水準近くまで盛り返している。1人でキャンプを楽しむ「ソロキャン」やグランピングを満喫する人も最近は増えてきた。夏休みや秋の行楽シーズンにキャンプなどを計画されている方も多いのでは。そこで今回は、そんな時に持参すると便利な「塩」をテーマにしてみたい。
アウトドアでの楽しみの1つに食事がある。キャンプ愛好者らの増加に伴い、メスティン(アルミ製の飯ごう)やダッチオーブンなど野外でも使える調理器具もブームになっている。アウトドアでの調理は、家庭のキッチンとは事情が異なる。普段使っている調味料を丸ごと持参するわけにもいかない。そこで、おすすめしたいのがシーズニングソルトだ。
塩にハーブやスパイスなどをブレンドしたもので、名称は英語の「season(味を付ける)」と「salt(塩)」にちなむ。材料にすり込んで仕込み用に使ったり、焼いた食材につけかけしたり、オイルと混ぜてドレッシングを作ったり。汎用性が広く、シーズニングソルトが1本あれば塩、コショウ、ハーブ数種類、スパイス数種類分を兼ね、「味がばっしと決まる」し、おしゃれで華やかな雰囲気も演出できる。パパッと使っておいしい料理が完成すれば、「この人、なかなかの腕前だな」ときっと一目置かれることだろう。まさに「モテ塩」であり、アウトドアでの調理にはうってつけだ。

シーズニングソルトには洋風、和風、中華風、薫製、万能タイプなどいくつかのジャンルがある。作りたい料理に合わせて1本選んで持っていくもよし、場所を取らないので全ジャンル取りそろえて持参すれば、その場の気分に合わせて様々な料理と味が楽しめる。以下に代表的なアイテム数点とその特徴をご紹介しよう。
クレイジーソルト(日本緑茶センター)
海外のシーズニングソルトの中では、日本人に1番おなじみの定番といっていい。米国産の岩塩にペッパーやオニオン、ガーリックやタイムなどのハーブ類をブレンドしている。塩らしいしっかりしたしょっぱさも感じられるため、脂の多い鶏肉との相性が良い。事前に食材にすり込んで持参してもいい。
魔法のだし塩 ドラゴンスパイス(白松)
藻塩をベースにした珍しいシーズニングソルト。昆布粉末やしょうゆなどをブレンドすることで、アミノ酸等のうま味調味料を一切使わずに濃厚なうまみが感じられる仕上がりにしている。コリアンダーやオニオン粉末など11種類のハーブやスパイスがブレンドされており、味の骨格がしっかりしている。塩の配合量が控えめで、スパイスやハーブの香りと味が効いてくれるのも魅力の1つ。パスタや目玉焼きにかけたり、お湯で溶かしてスープにしたりと用途も広い。
セル・デ・ヴァン・メルロー(フランソワーズジャパン)
フランスの塩の名産地の1つ、イル・ド・レ島産の完全天日塩をメルローワインに漬け込んだ後、白・黒・赤の3種のコショウとタイムやセージなどのハーブをブレンドしたシーズニングソルト。香りの中に香ばしいしょうゆのニュアンスが漂い、日本人にはなじみやすい味になっている。豪快にステーキ肉を焼いて、ワインでも飲みながらまったりしたい方に特におすすめしたい。
アウトドア スパイス 「ほりにし」(Orange)
製塩メーカーではなく和歌山県の有名アウトドアショップが開発した異色のスパイス。発売から1年で約20万本を売り上げた。国産、米国産、ドイツ産の塩をベースに、ガーリックや粉末しょうゆ、約20種類ものスパイスやハーブをブレンドし、チキン調味料やアミノ酸なども加えている。尋常ではないほどの味の濃さが感じられる濃厚なBBQソースを粉末状にしたような味わいが楽しめる。
薫製に挑戦したいけれど、ちょっと手間がかかり難しそう、という方には薫製塩タイプがおすすめだ。食材にかけるだけで、口の中で即席の薫製の出来上がりだ。
沖縄の燻製塩胡椒(島酒家)
沖縄県産の海水塩と、黒コショウを桜のチップで薫製したシーズニングソルト。豚肉や卵、チーズなどを薫製風味で楽しみたい方向けにおすすめしたい。食材にかけるだけで、口の中でふわっとスモークした香りと塩味が広がる。
地中海クリスタルフレークソルト スモーク(アルテ・ヴィータ)
キプロス産のピラミッド型完全天日塩に、スモーク香料を配合している。力強いしょっぱさと強めの薫製香、サクサクとした食感が特徴。厚切りにした肉を焼いたあと、ぱらっとかけるといい。

シーズニングソルトの利点は、1本でいろいろな使い方ができるところだ。いくつか例を挙げて紹介しよう。
肉や魚の下ごしらえに
複数のハーブやスパイスを準備する必要はない。汚れを拭き取った肉や魚にお気に入りのシーズニングソルトをまぶして刷り込み、ラップなどで包んで浸透させておくだけでOK。あとは、焼いたり、煮たり、お好みの方法で加熱すればいい。
オイルと混ぜてドレッシングに
空のボトルの中にオリーブオイルとビネガー、シーズニングソルトを入れて、シャカシャカと振れば出来上がり。自家製ドレッシングの良さは何といっても、自分好みの味に仕上げられる点だ。
料理に添えて
シーズニングソルトは見栄えも華やかなものが多い。焼いた食材の横に添えておくだけで絵になる。もちろん、かけてもおいしい。肉でも魚でも野菜でも、焼いた食材の横にお気に入りのシーズニングソルトが数種類あれば、途中で種類を変えて味の変化を楽しんでみてはどうだろう。
炒め物やスープの味付けに
炒め物の味付けに使えば、まるでシェフのような気分になれること請け合いだ。難しい味付けのバランスは、全部シーズニングソルトがやってくれる。調子にのって入れすぎないようにだけ、気をつけてほしい。前述の「ドラゴンスパイス」のような塩の配合量が控えめで、うまみが強いタイプのシーズニングソルトの場合、お湯で溶かすとスパイシーでおいしいスープにもなる。具材がなくても満足できる味わいになるので、朝食などで1度試してみてほしい。
食事の満足度が上がれば、アウトドアアクティビティー全体の満足度がさらに増すことだろう。ぜひ、お気に入りの1本を見つけ、アウトドアのお供に持参してみてほしい。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
関連リンク
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。