ダボスで感じた世界潮流 アーティスト・スプツニ子!
ダイバーシティ進化論
1月中旬、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が開かれたダボスへ行ってきた。通例通り1月に対面開催されたのは2020年以来で、私にとっても3年ぶりのダボスだった。今回はそこで見たこと、感じたことを共有したい。
ダボス会議の名物のひとつが会議場の外の大通りに並ぶ企業のパビリオンだ。人工知能(AI)やコンサルティングなどのグローバル企業がバーを借り上げたり、仮設の建物をつくったりして自社を売り込む。3年前と比べて大きな違いだと感じたのが、今回ほぼすべての企業がESG(環境・社会・企業統治)に関連したメッセージを発していたことだ。
自社事業の単なるPRではなく、ジェンダー不平等や地球環境への取り組み、ウクライナ支援などを全面に出していた。20年にも兆候はあったのだが、真正面から社会課題に向き合う姿勢を打ち出すことが、投資を呼び込むうえで欠かせなくなっていると実感した。
そうした社会課題に向き合ううえで大事なのは現状を分析し、将来予測を可能とするデータではないか。今回の会議のテーマは「分断された世界における協力の姿」だった。今年はあちこちでデータ化の重要性も指摘されていた。分断されがちな人や企業、国同士が協力する際、客観的なデータは共通言語になると改めて考えさせられた。

ダボス会議では公式な会議やイベントのほか、各国も食事などを交えた懇談会を開く。すしや和牛、日本酒を振る舞い、日本の食や文化をアピールする「ジャパンナイト」は恒例だ。今年も政治家や企業経営者らが赤いはっぴを着て登場した。
実はジャパンナイトの関係者向け案内レターの集合写真が男性経営者ばかりだったのが気がかりだった。当日夜、赤いはっぴを着た女性が何人か壇上に立っていてほっとしたが、次は案内レターの段階から女性を入れられたらもっといい。ダイバーシティへの目配りは必須だと考える海外のリーダーたちが目にするかもしれないのだ。
20年のダボス会議では、米ゴールドマン・サックスが新規株式公開の引受業務で、上場したい欧米企業に最低1人は女性取締役を求める方針が報じられ話題になっていた。今ではそれは特別なことではない。3年で世界はだいぶ変わった。日本も意識のアップデートを速めたい。

[日本経済新聞朝刊2023年2月6日付]
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