海の中で水耕栽培 「ネモのガーデン」の挑戦

イタリア北西部のジェノバから車で1時間。絵のように美しいノーリ村の沖合で、透明なプラスチックでできた9つの大きな泡が水中を漂っているように見える。その中に閉じ込められた空気はハーブの香りがする。
情熱あるクレージーな取り組み
「ネモのガーデン」と呼ばれるこの奇妙な構造物は、海中温室の実現可能性を検証するための実験施設だ。プラスチックのドームでできた水中の「バイオスフィア(生物圏)」に水耕栽培装置、空気循環用のファンが設置され、植物が種から栽培されている。それぞれのドームは「『ミニチュア宇宙ステーション』のようなものだ」と語るのは、発明者のセルジオ・ガンベリーニ氏だ。米国とイタリアを拠点にスキューバダイビング用品の製造などを手掛けるオーシャン・リーフ社のCEO(最高経営責任者)でもある。

ガンベリーニ氏の願いは、乾燥した沿岸の国々で、コストのかかる海水の脱塩を行わずに、より多くの作物を栽培できるようにすることだ。写真家のルカ・ロカテッリ氏も2021年にネモのガーデンを訪れ、海中で栽培されたバジルのペーストを試食し、その型破りなアプローチに魅了された。「普通の発明だけでなく、本物の情熱を持ってクレージーなことを考える人が必要なのです」とロカテッリ氏は言う。「何かがあるかもしれませんし、ないかもしれません。(いずれにせよ)そのようなものに投資する勇敢な人がいるという事実がうれしいのです」







バジル以外に、トマトやオクラなども実験




(写真 LUCA LOCATELLI、文 MICHAEL GRESHKO、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック)
[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2022年11月26日付]
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