もうムダにしない 冷蔵庫の食材、上手な在庫管理法は
無駄をなくそう 節約生活のススメ

ご自宅の冷蔵庫(冷蔵室・野菜室・冷凍室)をちょっと思い浮かべてみてください。いま、庫内に何がどのくらいあるか正確に挙げられますか。最近買ってきて冷蔵・冷凍したもの、あるいは庫内から取り出して消費したものをすべて覚えていて「頭の中で完璧に在庫管理ができている」という方は恐らく、かなり少ないのではないかと思います。
もし、ご家庭の誰もが冷蔵庫の在庫管理を完璧にできていたなら、庫内にあるのにまた購入といった「ダブり買い」で無駄な出費をしてしまうこともないでしょう。同時に冷凍室の奥の方から、いつ入れたのか分からないものが見つかるようなこともないはずです。
農林水産省によると、日本の食品ロス量は1年間に約612万トン(2017年度推計値)で、これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量とか。日本人1人当たりにすると、毎日お茶わん1杯分のごはんを捨てている計算になるそうです。
「フードロス」という言葉が浸透してきたせいでしょうか、この18年度推計値では600万トンと前年度より12万トン減少しました。とはいえ、このうち、家庭系の食品ロス量だけで276万トンにのぼります。まだまだ削減余地がありそうです。
食品ロス削減にもつながる冷蔵庫の在庫管理術
家庭系の食品ロスは、食べ残しや買ってきたけれど使わないうちに傷ませてしまったもの、皮の剥きすぎなどがその原因と見られています。 せっかくお金を出して買ってきた食材を、無駄にしてしまうのは本当にもったいないことです。食べ物を無駄にしないと同時に食費を節約するうえで、まずは買ってきたものをしっかり食べきるということを意識して実践していきたいものです。
そのためにも、冷蔵庫に何があるかを日ごろからできるだけ正しく把握しておくことが重要なポイントになってきます。今回は、食品ロス削減にもつながる、冷蔵庫の在庫をできるだけ楽、かつ正確に把握して上手に在庫管理していく方法を考えてみたいと思います。
その1:在庫管理帳をつける
まずは、昔ながらの方法から。小さな手帳でいいので、専用の「在庫管理帳」としてそこに記録をつけていく方法があります。具体的には、スーパーなどで何かを買ってきたら、まずはそれを箇条書きにしていきます。そして使ったものがあれば線を引いて順に消していくわけです。この方法の利点はメモ帳のように持ち歩けること。出先でも「あれはあったっけ?」とならずに済み、必要なものを必要な分だけ買い物するのに役立ちます。
アナログですが、作業として難しいものではありません。ただし、このやり方は、買ってきたものをそのそばから書き出さないと成立しないので、どうしても手間がかかってしまいます。その気になれば、どなたでもすぐ始められますが、忙しい現代人には敬遠されがちな方法でもあります。
その2:レシートで在庫管理をする
こちらは食材を買ったときのレシートを冷蔵庫の扉などに貼っておき、使ったものから線を引いて消していく方法です。「その1」の応用といえるやり方で、買ってきたものを書き出す手間は省けます。ただ、冷凍食材など賞味期限が長いものを多く買うご家庭には不向きかもしれません。そうした食材は消費するまでにしばらく時間がかかるとあって、ややもすると冷蔵庫の扉がレシートだらけになりがち。そこから探し出して線を引いて消していくのがおっくうになり、結果的に把握しきれなくなる可能性もあります。同時にせっかく日々チェックしていても、出先で買い物前に家庭の在庫状況を確認しにくいのが難点です。
その3:スマホアプリで管理する
スマートフォン(スマホ)が普及して、家事をするのにも便利なアプリがいろいろと出ています。冷蔵庫の在庫管理というのは多くの人が課題としていたものなので、実はスマホのアプリも複数出ています。
注目すべきは、検索サイトで「冷蔵庫 アプリ」と入力して検索をすると、次のキーワードの候補として「家族共有」が出てくることです。コロナ禍による在宅勤務の普及もあり、1人暮らしでない世帯では、食材の買い物をする役割の担い手が複数人に増えた、といったことも背景にあるのではないでしょうか。「冷蔵庫 アプリ 家族共有」で検索している人は意外に多いようです。
スマホのアプリで管理する場合も、買ったもの、消費したものを入力していきます。この「記録する」ということを忘れなければ、手帳などより見やすく管理をすることができます。また家族で情報共有できるアプリを使えば、食材の買い物を何人かで担っているご家庭の場合、ダブり買いをぐんと防ぎやすくなります。
フードロスを防ぐ 家庭での対策
ここまで述べたように、その気になれば、冷蔵庫内の在庫を常にリアルタイムで把握できる方法はないわけではありません。とはいえ、アナログでもデジタルでも、在庫管理の作業自体が面倒だ、と感じる方もいらっしゃるでしょう。
その場合はいっそのこと「細かい在庫管理はしない」と割り切ってしまうのも1つの手です。それでも食品ロスはもったいないし、食費のムダ遣いは防ぎたいところ。であるならば、目的をムダの削減に絞りアプローチを変えて、在庫をざっくりと管理しながら使い切っていく方法もあります。
その1 細かな在庫管理はせず「消費デー」を作る
ここでおすすめしたいのが「冷蔵室と野菜室を空にする日」を設ける方法です。食材は1週間のうちの6日分だけ買うようにします。そして、その週に残った食材を7日目となる日にすべて使い切るのです。この方法であれば、毎日在庫管理をしなくても食材を無駄にしてしまうリスクは低くなります。ただ、最後の1日は家庭に残っているものだけで料理を作るのですから、ある程度の料理の腕やアイデアが求められてしまうことは覚悟しましょう。
冷凍室に関しては月に1回、すべてをチェックするようにします。その際、冷凍室は賞味期限が長いものが多いので、こんなひと手間をかけてみましょう。まずは早めに消費した方が良いものをピックアップ。そして、それらをカゴなどに入れることで「見える化」して冷凍室に戻すのです。そうしておけば、どの食材から使うべきかが一目で分かり、それを起点に献立やメニューを考えやすくなります。上手に消費していけるので、食材を無駄にしてしまうこともなくなります。
その2 ロスにしやすい食材は大量消費メニューで
「在庫管理は手間がかかる」「週1の在庫消費デーに残りもので料理を作る自信がない」という方は、また別の角度から考えましょう。
先ほども述べたようにコロナ禍でリモートワークが浸透し、知り合いのフルタイム共働きのご家庭では、夫も妻も食材を買いに出るようになっているとか。しかし、その分、以前にも増してダブり買いが増えて困っているそうです。そうしたことに加えて、各ご家庭には「よく買うけれど結局、傷ませてしまいがち」「『絶対お弁当に必要だから』と思うあまり、切らさないようにダブり買いしがち」といった食材があることも。
モヤシをダメにしがち、ミニトマトをダブって買いがちなど、まずは自分のご家庭の傾向を改めてチェックしてみましょう。そして無駄にしやすい食材を把握できたら、次はその食材を大量に使うレシピをチェック。お気に入りレシピをいくつか選んでおきます。それを覚えておいて、ロスにしそうな場合は調理して食べきってしまうのです。これも1つの方法です。
たとえば、お弁当などでよく使うミニトマトを例にしてみましょう。サラダにすると少しずつしか消費できません。けれど、ゴマ油を使って卵と一緒に炒めれば中華料理っぽい炒めものとして、おいしく、手早く大量消費できます。
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以上、いろいろご提案してきましたが、どの方法が良いかは家族構成や買い物を担当する人の人数、性格によっても様々です。あなたのご家庭ではどのようにするのがベストか、ぜひ、この機会にいろいろと試してみてください。そして食品ロスを減らし、食費の節約にしっかりとつなげていきましょう。

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