塩入りデトックスウオーター 熱中症にも備える
魅惑のソルトワールド(66)

早めに梅雨が終わったなと思ったら、今度は猛暑が続いている。熱中症で亡くなる人も出ているので、うかうかとはしていられない。そこで熱中症対策にも役立つ塩を使った「デトックスウオーター」を今回はご紹介したい。
デトックスウオーターとは一般にミネラルウオーターにフルーツや野菜、ハーブなどを入れてエキスを浸漬(しんし)させたニアウオーターを指す。砂糖や甘味料は一切使わずに野菜やフルーツのフレーバーや甘味がほんのり漂い、見た目の華やかさも手伝って美容にこだわる海外のセレブリティの間で流行。それが女性らの間で次第に人気を呼ぶようになった。
熱中症対策としてデトックスウオーターをすすめる理由はいくつかある。まずは「おいしい」から。単なる水と違い、ほんのり風味がついているので飲みやすい。またフルーツやハーブの香りでリラックスした気分が味わえる。その日の気分や冷蔵庫にある野菜やフルーツの在庫に応じて、アレンジが自在という点も魅力だ。果糖やブドウ糖を添加したジュースやスポーツドリンク類より低カロリーのため、ダイエット中の方でも気軽に飲めるし、飲んだ後も喉が渇かない。フルーツや野菜が持つビタミンCが水に溶け出すので、ビタミンCも豊富に摂取できるなど何かとメリットが多い。
通常時なら、そのまま飲むのがおすすめだが、猛暑の時は塩を加えるのがポイントとなる。フルーツや野菜から出たカリウムの摂取によって、体内のナトリウムも排出されてしまうからだ。デトックスウオーターの作り方はいたって簡単。1リットルのミネラルウオーターにカットしたフルーツやハーブ、野菜類を入れて冷蔵庫で4時間程度冷やす。炭酸水がお好きな方は炭酸水で作ってもいい。
1リットルのミネラルウオーターにオレンジ2個分くらいを目安に、もっとフレーバーを濃くしたければ、フルーツやハーブを多めにすればいい。夏向けのデトックスウオーターなら塩分濃度は0.5%程度(1リットルの水に対して5g程度)がいいだろう。冷蔵庫で保存すれば約1週間ほど持つ。常温で持ち歩く場合は、安全衛生面からできるだけ早めに飲むようにしたい。

夏場にはコンビニやスーパーの店頭にも塩アメや塩入りドリンクが多く並ぶようになる。熱中症予防の観点から「水と塩を摂取しましょう」と言われることが多いが、汗をかくと、なぜ塩が必要になるのか、そのワケをここでおさらいしておこう。
汗をかいた時に塩が必要になるワケ
年齢により、そのバランスは若干異なるが、私たちの体は約60%の水分と約40%のたんぱく質、脂質、無機質からなっている。体液には約0.9%の濃度で塩分が含まれ、細胞内液と細胞外液などとしてカリウムやナトリウム、クロールやリン酸などのイオン状態になって存在している。このバランスが崩れると細胞が正常に働かず、さまざまな弊害が出てくることになる。いかにしてこのバランスを保つかがカギとなる。
涼しい時期でも私たちは代謝をしながら生きているので、1日約1リットルくらいの汗をかくそうだ。それが猛暑日だったり、激しい運動をしたりした場合には、汗の量はさらに増える。汗には0.3%前後の濃度で塩分が含まれているため、1日3リットルの汗をかくと約9gの塩分が失われる計算になる。
塩分を補給せずに水分だけを補給し続けた場合、体内の塩分濃度は本来の0.9%を大幅に下回り、生命維持に重大な支障をきたすことになってしまう。それを避けるために脳から「水分を排出して体内の塩分濃度を上げて!」という指令がでる。体内に適度な塩分があってこそ、摂取した水分も保持できるということを忘れずにいてほしい。
汗をかいた時はスポーツドリンクを飲むという選択肢もあるが、結構な量の糖分が含まれているものも少なくない。糖分を短期間で多く摂取すると、急激に血糖が上がり、それを薄めるためにより水分が欲しくなる。そうすると血流が増え、それを正常に戻すためにまた排尿量が増え、脱水状態に陥りやすくなる。スポーツドリンクはアスリートなどが激しい運動をする際や、高温下で長時間労働を行うなどの発汗量が10リットルを超えるようなシーンで飲用するといい。
体内の塩分濃度を正常に保つことを目的に摂取する塩は、できるだけナトリウム以外のミネラルも含んだ塩を使うのがオススメだ。本来塩にはナトリウム以外のさまざまなミネラルが含まれている。私たちの体液のバランスは、太古の海に生命体が発生した時の海のミネラルバランスと酷似していると言われており、太古の海を体内に抱えることで生活できている。失ったミネラルを補給する時にナトリウムだけの塩を摂取すると、体内のミネラルバランスの正常化がきちんと行われないこともあるため、塩選びが重要になってくる。

自分好みのデトックスウオーターのススメ
デトックスウオーターの良いところは、自分の好きな味にできること。デトックスウオーターにおすすめの代表的なフルーツやハーブなどと、その成分・効能などを以下にご紹介しよう。個人的にはバナナとローズマリーと塩の組み合わせが気に入っている。甘味がそんなに必要でない人は、レモンとペパーミントと塩などの組み合わせがいいだろう。ぜひ自分好みのデトックスウオーターづくりにチャレンジしてみてほしい。フルーツを皮ごと入れる際は、農薬が使われていないものを選ぶようにしたい。
パイナップル=甘味、酸味、ビタミンA、B1、B2、C、G、ブロメライン、抗酸化作用、腸内環境を整える
レモン=酸味、苦味、ポリフェノール、クエン酸、ビタミンB1、レシチン、リモネン、血糖値上昇抑制、脂質の代謝改善、老化防止、高血圧抑制
スイカ=ほのかな甘味、βカロテン、ビタミンC、シトルリン、リコピン、免疫力向上、抗酸化作用、利尿作用、夏バテ改善
バナナ=濃厚な甘味、カリウム、ビタミンB6,オリゴ糖、疲労回復、むくみ改善、便秘改善、PMS(月経前症候群)の改善
キュウリ=青い香りや苦味、βカロテン、カリウム、ピラジン、シリカ、むくみ改善、血液凝固を抑制、美肌
ローズマリー=樟脳(しょうのう)のような香り、シオネール、フラボノイド、カルノシン酸、頭をすっきりとさせる、神経系の調和、精神の安定
ペパーミント=清涼な香り、メントール、サビネン、タンニン、消化促進、不眠改善、頭痛の緩和、鼻づまりの緩和
レモングラス=グリーンっぽいレモンの香り、ゲラニアール、ネラール、ゲラニオール、リモネン、ストレス解消、集中力アップ、リフレッシュ
塩=しょっぱさ、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、微量ミネラル、体液の濃度保持によって細胞を正常に働かせる
熱中症対策には冷房を上手に活用したり、日傘をさし直射日光を避けたりするほかに、塩入りデトックスウオーターを上手に活用して、元気に猛暑を乗りきっていただきたい。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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