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失われた自信を求めて おじさんと違うリーダー像へ 

思い上がれない女性たち(3)

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「過去に受けた最悪のアドバイスは『Keep your head down』。頭を下げて目の前の仕事に集中していれば、おのずと結果はついてくると考えるのは幻想でした」。ゴールドマン・サックス証券で2020年まで副会長を務めたキャシー・松井さんはこう断言する。

「自分の成果や考えを周囲に知ってもらわなければ、次のステップには進めない。女性は自己アピールが苦手なんです」

女性は家庭や学校で「良い子」であることを求められがちだ。じっと努力を続けて優秀な成績を修めれば親や先生は認めてくれるが、社会ではそうはいかない。

ゴールドマン・サックス証券元副会長のキャシー・松井さん

松井さんは自分の成果を自然と周囲に伝えられる男性部下を数多く目にしてきた。メールで頻繁に報告してきたり、「少しいいですか」とエレベーターに乗り込む寸前にさりげなく話しかけてきたり。一方、女性部下はよほどの結果を残さない限りアピールせず控えめな傾向があったという。

下を向かずにアピールを

米コロンビア大学のビジネススクールの調査には、男女の自信の差を示すこんな結果がある。経営学修士号(MBA)受講生に数学のテストを実施し、1年後にその点数を思い出してもらったところ、男性は30%も高く記憶しており、女性の15%を大きく上回った。

自己アピールを「でしゃばり」と受け取られないかと恐れる女性は多い。「『アグレッシブ』という言葉は男性には肯定的に使われても、女性を指すときは必ずしも良い意味にならない」(松井さん)。では女性はどう振る舞えばいいのか。

男性と同じ姿を目指さないで

松井さんは「男性と同じやり方をする必要はない」と話す。自身も94年にゴールドマンに入社した当時、「女性であること」「(米国籍なので)外国人であること」「経験不足であること」の「3つのハンディ」によって自信を持てずに悩んだ。男性には仕事の量や速さでかなわず、数少ない女性に耳を傾ける機関投資家も少なかった。

ある時、自分の「ハンディ」を逆手にとることにした。海外投資家からみた日本市場やダイバーシティーの視点を組み込み、社会構造を長期的な視野で分析。女性の社会進出が経済成長を生むとして話題を呼んだ、99年の「ウーマノミクス」リポートにつながった。

力強く部下を率いる男性リーダーたちを見て「自分にはできないと感じる女性は多い」(松井さん)。しかし、必要とされるリーダー像も時代とともに変わっていく。新型コロナウイルスなど先が見えない事態のなかでは「周囲に柔軟に耳を傾け、多様な知見をつなぐような調整型の指導力も注目されている」。

自分なりのリーダー像を描く大前提は、自分の力量を正当に評価し自信を持つこと。「女性は鏡を見ても自分の姿がわからない。周囲が一言多く励ますことが、女性の自信を支える最大のポイントになる」と松井さんは指摘する。

自信は身につけられる「スキル」

企業や政府機関に「無意識の偏見」や「女性の自信」についての研修を実施するコンサルタントのパク・スックチャさんは、「女性の自信のなさ」は能力不足ではなくジェンダーバイアス(性的偏見)といった外的要因や思い込みからくることが多いと訴える。実際、研修を受けた女性からは「個人の性格ではなく、女性が陥りやすい考えだと知って安心した」といった声も上がる。

「女性は男性より2割自分の能力を低く見積もるといった調査もある。まずは自分の実績を2割、過大評価してほしい」(パクさん)。仕事でも日常生活でも成功体験を思い出していけば、考え方の癖を変えられる。

コンサルタントのパク・スックチャさん

なにより大事なのは「『自信=行動』と捉えて一歩踏み出すこと」。行動しないことには自信を得るための成功体験や失敗までも逃してしまう。「自信は身につけられるスキルの一つと考えて」と呼びかける。

女性活躍を推進する企業側も、次の一手として「自信」に着目している。大塚製薬は5月、入社4~5年目の女性営業職約50人を対象にパクさんの研修を取り入れた。営業部門で管理職を希望する女性はごくわずか。自信をもってステップアップを目指してほしいと考えてのことだ。

研修では女性から「管理職を目指す気はない」「自信がないと決めつけないで」といった声も出た。ダイバーシティー推進を担当する田中静江さんは「多様な考え方があっていい。『無意識のバイアス』についてまず知ってほしい」と話す。

どうすれば女性が正当な自信を持てるかという議論は、欧米を中心に活発化している。日本での認知はまだまだだが、応援する動きも着実に広がりつつある。「失われた自信」を取り戻したとき、女性活躍の新たな幕が開くはずだ。

(水口二季が担当しました)

グラフィックス 竹林香織

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思い上がれない女性たち

目の前の仕事に打ち込み、能力を身につければ道は開かれる――はずだった。活躍推進が叫ばれるなか、意欲的に働いてきた女性たちに「自信」という壁が立ちはだかっている。男性に比べ自分の能力を低く見積もりがちで、挑戦や昇進に臆病になる。女性たちが自分自身の力を認め、上を向いて進むために必要なこととは。

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