屋外でのんびり「チェアリング」 手軽に自然を満喫

屋外でレジャーを楽しみたいけれど、準備が大変そうで最初の一歩が踏み出せない。そういう人は椅子ひとつで始められる「チェアリング」はどうだろう。近年注目を集めている。
アウトドアというと、キャンプやバーベキューを連想する人が多そうだ。ただ初心者がいきなり挑戦するにはハードルが高いように感じられる。多くの道具をそろえたり、食材の準備をしたり、と手間や時間がかかるからだ。
チェアリングはもっと手軽にアウトドア気分を味わえる方法として広がりつつある。もともとのコンセプトは「椅子さえあればどこでも酒場」。屋外のお気に入りの場所に椅子とお酒を持っていき、居酒屋気分を楽しんでいた。
近年では必ずしも飲酒にこだわらず、落ち着ける場所に出向き、のんびりした時間を過ごすスタイルが定着してきている。家から徒歩でも、自転車や車で出かけてもよい。旅先で気持ちのいいところを見つけるのも楽しみだ。
公園や河川敷、海辺など景色のよい場所、自分がくつろげる場所があれば、原則としてどこでも候補になる。場所探し自体、楽しめるポイントになる。散歩しつつ、ここでくつろいだらよさそうという場所を見つけてみよう。運動不足を感じている人は健康づくりのウオーキングのつもりで歩き回ってみるのも手だ。
とはいえ椅子を置いて長時間とどまるのを禁止しているところは多いので注意が必要だ。私有地はもちろん、立ち入り禁止区域になっていないか確認しなければならない。米国では駐車場でバーベキューなどを楽しむ習慣がある。一方、日本では原則として椅子を出して滞在するのは歓迎されないと考えておきたい。
椅子は基本的にアウトドア用の折りたたみ式のものを準備する。散歩がてら家の近所でしようと考えるならば、やはり持ち運びが苦にならない軽量のモデルを選びたい。2リットル入りのペットボトルくらいの大きさで、重さは1キログラム以下といったコンパクトな椅子がアウトドア専門店やホームセンターなどで手に入る。
車で目的地まで行くなど、それほど持ち歩かずにすむ状況であれば、少々重くても座り心地を重視したモデルを選ぼう。例えばキャンバス生地を張った木製フレームのものはやや重いが、趣があって愛用する人が多い。
飲み物を手にゆったりとした時間を過ごしたいときはカップホルダーやポケットが付いたモデルがいいだろう。背もたれの高いリクライニングチェアを使って体を預ければ、リラックスできる。

価格はタイプやメーカーによって差があり、それこそ数千円から5万円を超すものまで様々だ。軽さ、座り心地、機能性をそれぞれどのくらい重視するか。予算に合わせて用意したい。
実際出かけて椅子に座ってからどのように時間を過ごすのか。スマートフォンなどで音楽を聴いたり、読書をしたり、ただぼーっとしたり、くつろぎ方は人それぞれだ。
自然の豊かな場所に行って深呼吸をするだけでも気分転換できる。風に揺れる木の葉や川のせせらぎ、打ち寄せる波、鳥のさえずりといった自然の音には人が心地よく感じるリズムがあることが知られている。「1/fゆらぎ」と呼ばれるもので、心身のリフレッシュに役立つとされる。木陰や河原で椅子に腰を下ろして、周囲の音を何気なく聞いているだけで気分が変わるという人も多い。
チェアリングに慣れてきたら、新たな楽しみを探すのもいいだろう。飲食が可能な場所であれば、弁当を持ってピクニック感覚を味わうのがおすすめだ。ピクニックといっても手作りにはこだわらず、コンビニエンスストアやスーパーで買ったおにぎりや総菜を持っていくので十分だ。
コーヒー豆をひくところから始め、お湯を沸かしてハンドドリップするのも楽しい。お気に入りのコーヒー器具を準備し、その日の気分で豆を選んで出かける。単なるチェアリングと少し違った体験ができそうだ。もちろん火の使用が認められている場所でなければできないので、事前に調べておく必要がある。
キャンプなどの経験がなくても、気軽に始められるのがチェアリングの魅力だ。場所選びでの注意点や周囲への配慮は忘れずに、くつろぎのひとときを過ごしたい。
(アウトドアライター 牛島 義之)
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くつろぎの時間 道具で演出

椅子ひとつで楽しめるのがチェアリングだが、ちょっとした道具を追加で用意することで、より快適な時間を演出できる。例えば折りたたみできる「テーブル」を持っていってみる。食事をしたり、飲み物を置いたりするときに便利だ。
火気厳禁の場所では「保温ボトル」にお湯を入れて持参する。コーヒーをいれたり、カップ麺を作ったりできる。ゴミは持ち帰るのが前提なので、食事後の容器などは「防水バッグ」にしまう。水気があっても安心して持ち運べる。かさばらないのがポイントだ。
[NIKKEI プラス1 2022年9月24日付]
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