冬こそラム肉、家庭でも コツは火を通し過ぎないこと

最近、スーパーの精肉コーナーでラム肉を目にすることが増えている。薄切りや厚切りなど種類も豊富で、家庭でも「第4の肉」として様々な料理に取り入れられそうだ。
ラム肉料理というと、ジンギスカンが代表格だろうか。バーベキューのイメージから、暖かい季節に食べるものと思われがちだが、薬膳では羊肉は体を温める作用があるとされる。寒い時期にこそ積極的に食べたい食材だ。
羊肉の魅力を広めるためにイベントや情報発信を行っている「羊齧(ひつじかじり)協会」代表の菊池一弘さんは、「大手外食チェーンがラム肉をメニューに入れた2019年ごろから、人気が定着した」と話す。ラムは牛や豚の肉より低脂肪で、タンパク質やビタミンも豊富。「鶏ささみよりおいしいと、オリンピック選手が体づくりに食べているという話もあって、消費が増えた」(菊池さん)
東京・赤坂のフランス料理店「アマラントス」のシェフ宮島由香里さんはオーストラリア産ラムのPR大使「ラムバサダー」のひとりだ。食べやすく、家庭でも簡単にできるラム肉料理を教わった。
まずは、肉うどん風の「ラムしゃぶのフォー」。鶏ガラスープでラム肉の薄切りをしゃぶしゃぶにして取り出し、ネギとショウガのみじん切り、ナンプラーであえておく。残ったスープにネギ、モヤシ、タカノツメを入れ、塩とナンプラーで調味する。「干しシイタケの戻し汁をスープに加え、シイタケは刻んで具にするとうま味が加わってよりおいしくなる」と宮島さん。
ゆでたフォーとスープを器に入れ、ラム肉を上にのせれば出来上がり。あっさりしているが、うま味は濃く、何よりすぐにできるのがうれしい。フォーの代わりにうどんやそうめん、ナンプラーの代わりに白だしを使えば、親しみやすい和食寄りの味になる。

次は厚みのあるステーキ肉のレシピだ。牛肉ほど値段が張らず、食べ応えがある。ビリヤニ風炊き込みごはんは、前日からたれに漬け込む手間はあるが、あとは米や野菜と一緒に炊飯器で炊くだけだ。
ステーキ用ラムもも肉1枚(200グラム程度)を、おろしショウガ大さじ1、おろしニンニク小さじ1、プレーンヨーグルト大さじ2、カレー粉小さじ2、塩小さじ1とともにポリ袋に入れてマリネして、一晩おく。炊飯器に米1合半、水200ミリリットル、ラム肉と漬けだれ、中玉のトマト2個分(1センチメートル角に切る)、フライドオニオン大さじ3、ナンプラー大さじ1、ローリエ1枚、あればシナモンスティック1本を入れて炊く。
トマトがたっぷり入っているので、シナモンはかすかに香るくらい。「スパイスの強いエスニックは苦手」という人も気にならないだろう。脂肪の少ないもも肉が、やわらかく仕上がる。レモンを搾るとカレー風味が引き立ち、香ばしいフライドオニオン、トマト味のごはんとよく合う。
ラム肉入りのごちそうサラダは焼き方がポイントだ。ももか肩ロースのステーキ肉1枚(約200グラム)を2センチメートル幅に切り、塩、コショウしておく。フライパンにたっぷりのオリーブ油を温め、スライスしたニンニク2片分を焦がさないように炒め、色づいたらボウルに取り出す。
同じフライパンに肉を入れ、両面に焼き色がついたら、ニンニクを入れたボウルに移し、アルミホイルで蓋をして蒸らす。ミディアムレアの焼き上がりにしたいので、強めの火でサッと焼き付け、余熱で火を通すのがコツだ。
ひと口大に切ったキノコやズッキーニを炒め、軽く塩をして、仕上げにポン酢大さじ2を回し入れる。これを肉を入れたボウルに加え、アルミホイルをかぶせてさらに5分蒸らす。仕上げに葉野菜をボウルに入れ、ざっくり混ぜて器に盛りつける。「クレソンやケールなど、少しクセのある葉野菜がおすすめ」と宮島さん。ピンク色の断面に仕上げたラム肉と、肉のうま味を吸った野菜にポン酢の味わい、カリカリのニンニクでもりもり野菜を食べられる。ごはんのおかずにもなる。
宮島さんのアドバイスは「あまり構えず、まずはショウガ焼きや焼きそば、カレーなど、普段食べている料理をラム肉で作ってみて」。人気のジンギスカンもいいが、今年はラム肉のレパートリーを少し広げてみよう。
◇ ◇ ◇
輸入量は増えていない?

身近なスーパーで購入できるようになったラム肉。薄切り、やや厚みのある焼き肉用、ステーキ用、骨付きラムチョップなど料理に合わせて種類も選べる。羊の肉には独特の臭いがあるが、最近は食肉処理や保存状態が管理され、「臭い」というほどのクセはない。
日本で流通するのは9割超がオーストラリアなどからの輸入品だ。首都圏での消費量は増えているが、全体の輸入量は増えていないという。その理由は「最大消費地の北海道でジンギスカンを食べる人が少なくなっているため」(羊齧協会・菊池さん)だそうだ。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEI プラス1 2022年1月22日付]
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