スマホで「自撮り」 光の当たり方や顔との距離にコツ

スマートフォンで「自撮り」した経験はあるだろうか。記念にと構えてはみても、満足できる1枚を撮るのはなかなか難しい。やはりコツがあるようだ。写真のプロに基本を教わった。
自撮りはスマホの画面側に付いているインカメラ(フロントカメラ)を使う。カメラアプリを起動し、切り替えアイコンをタップすると、画面に自分が映る。これがインカメラで撮影できる状態だ。シャッターを示すマークをタップすれば、カシャッと音が鳴って写真を撮れる。
いざ自撮りしてみても、いつもの顔とどこか違うと感じる場合があるだろう。フォトグラファーの鈴木愛子さんはスマホのレンズに原因がある可能性を指摘する。「スマホは機種にもよるが、一般的に通常のカメラに比べて広い画角を撮影できる『広角レンズ』が使われている。手前のものは大きく、奥のものは小さく写すので、遠近感が強調されて、被写体にゆがみが出やすいと考えられる」
このためスマホで顔の真正面から撮影すると、レンズに近い鼻が大きく写りやすいそうだ。レンズから遠い耳やあごのあたりは小さく写るので、実際より面長に見えるケースが多いのだという。
鈴木さんは「自撮りでは顔からレンズをできるだけ離すよう心がけてほしい」と助言する。レンズと顔の距離が遠くなると、あごのラインがすっきりと写りやすい。スマホを顔の斜め上あたりに持ち上げて撮ると、あごのラインがシャープに、目は比較的大きく見えるという。
光の当たり方でも写真の印象は大きく変わってくる。特別なカメラの機材がなくても、自然光をうまく生かす構図を考えたい。

撮影する人の正面から当たる光は「順光」といい、被写体をくっきりと写し出すのが特徴だ。一方で撮る人の後ろから光が当たる状態は「逆光」という。人物撮影では顔が暗く写ってしまうので注意が必要だが、適度な陰影によって印象深い写真が撮れる例もある。顔の横方向から光が当たる「サイド光」は顔に立体感が生まれやすく、人物の撮影にも取り入れやすい。
「写真を撮る前にインカメラを見ながらスマホを上下左右に動かし、光の当たり方を確認してほしい。屋外で少しずつ場所を移動しながらインカメラを見ると、自然光の具合によって顔の印象が変わるのがよくわかると思う」と鈴木さんは語る。
カメラアプリには撮影後に明るさや色を調整できる機能もある。撮る段階から光を意識しつつ、状況に応じて活用してみる手はある。
撮影時の姿勢や視線にも注意したい。鈴木さんは「緊張感のない姿勢で撮ると、どことなくその雰囲気が写真に出てしまう。顔だけを撮るとしても、背筋は伸ばすよう心がけたい。猫背気味で顔やあごが前に出る人は背筋を伸ばしたうえで少しあごを引いてみてほしい」と話す。
レンズを凝視しすぎると、不自然なカメラ目線になってしまいがちだ。インカメラで光の具合とともに視線も確認するとよさそうだ。
ビジネスでもプライベートでもSNS(交流サイト)を通じて情報を発信する機会は多い。自分の顔写真を撮影したり、されたりする場面が増えているだろう。鈴木さんは「写真が苦手な人ほど自撮りを試してほしい。撮影になれていくと、自分なりに『いいな』と思える表情や顔の角度がわかってくる。自撮りであれば心ゆくまで数を重ねられる」と強調する。
そうはいっても「いい写真を撮るぞ」と意気込み、注意点にばかり意識を向けていては疲れてしまう。リラックスして楽しい雰囲気で撮影するのも同じくらい大切だ。
例えば1人での撮影だとぎこちない感じがするようなら、家族や友人を誘って2人で撮影してみよう。親しい人とちょっとした会話をしながら撮ってみると、普段の自然な表情が出やすい。
セルフタイマー機能も活用してみよう。iPhoneの場合には撮影までの時間を「3秒」か「10秒」か選べる。セットすると、画面に残りの秒数が表示される。2人で声を出して読み上げていけば、タイミングを合わせて表情をつくりやすい。
機種によっては自動的にバースト(連写)モードとなる。撮影できた写真からお気に入りを選んで残そう。
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室内では白いものを活用

室内で自撮りをするのは屋外で撮影するときよりも光のバランスが難しい。部屋の方角や窓の位置によるが、窓に向かって顔が自然光を浴びるようにして撮るか、窓が横になるようにして立って光が顔に当たるようにして撮るとよい。
もし窓がない場所や窓があっても光が足りないように感じるときは「白いもの」を活用しよう。太陽や照明の光が反射し、顔を照らしてくれる。白い壁の前に立つほか、白いシーツやテーブルクロスを顔の下に置くといった方法が考えられる。試してみよう。
(ライター 藍原 育子)
[NIKKEI プラス1 2022年5月21日付]
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