かわいいペット、自然な姿を撮るならスマホ 光に注意

かわいいペットの写真を撮るには、一眼レフなど本格的なカメラが必要だと思われがちだ。だが実は、スマートフォンが向いているそうだ。フォトグラファーらに上手に撮るコツを聞いた。
「カメラを構えるとそれだけで逃げてしまうような臆病なペットでも、スマートフォンならさほど警戒されない」と話すのはフォトグラファーの鈴木愛子さん。手の向きでアングルを簡単に変えられるのもスマホの利点だ。レンズを逆さまにしてローアングルから狙ったり、キャットタワーなど高いところに飛び乗った猫の目線に合わせてスマホを構えたりと、動くペットに合わせて自由自在にアングルを変えられる。
ペットを撮る前に、フラッシュは必ずオフにしておく。フラッシュはペットを驚かせてストレスを与えるだけでなく、光に敏感な動物の目を傷つけてしまうこともある。
いい写真を撮るためには光を味方につけることが大切だ。家の中で撮影するときには窓辺など家で一番明るい場所を選び、窓やカーテンを開けるといい。「白い壁の前は光がきれいにまわるのできれいに撮れる」(鈴木さん)
もうひとつ大切なのが、光の向きをよく見ること。順光(カメラと同じ方向からの光)よりも、被写体の背後から光が当たる「逆光」や、横方向から光が当たる「サイド光」で撮ると、陰影がついた雰囲気のある写真になる。いつもと違った1枚が撮りたいときには、試してみよう。
逆光で撮ると、光量が足りずに暗くなり過ぎてしまうこともある。そんなときは「HDR」を活用するといい。HDRとは「ハイダイナミックレンジ」の略称で、明るさや暗さを自動で補正してくれる機能だ。スマホの機種によっては自動で設定されるほか、一部のiPhoneなどではカメラ機能を立ち上げて画面上部「HDR」をタップすることで設定できる。
白い毛の猫や犬をそのまま撮影して白飛びしてしまったり、反対に黒い毛の場合に暗くなりすぎてしまうのを防ぐにもHDRが有効だ。写真に不慣れな人でもバランスのとれた明るい写真が撮れる。
スマホはファインダーをのぞかなくていいので、ペットの自然な表情が撮りやすいのも特長だ。犬に比べて警戒心が強い猫の場合は、好きなおもちゃやおやつを用意しておこう。猫は段ボール箱やカゴなどで丸まっていると落ち着く性質があるので、「箱やカゴをあらかじめ窓の近くなど光のあたる場所に移動させておき、そこに猫がくるのをのんびり待つのもいい」(同)

また、「早くいい写真が撮りたい!」と焦らないのもポイントだ。呼んでも来ないときには、ごろんと寝そべりながら近づいてくるのを待つ。近くにきたら声をかけながら片手で顔や尻尾など、ペットが喜ぶ箇所をなでながら撮るようにすると、いい表情が撮れる。
ブレたり、構図が偏ったりした写真ばかりになってしまったとしても、ペット写真ならではの「味」として楽しんでしまうのも一案だ。人物や他のものを撮った場合と違って、ペットの足だけが写ったような写真でも、「猫ちゃんが急に動いたのかな?」「何かに驚いて逃げたのかな?」などと見る人の想像力をかきたてる。
ユーチューブやツイッター、インスタグラムでコーギー犬の兄妹「ちい」と「むう」、マンチカン猫の「ととろ」の成長や日常を発信している「ちいむうととろ」さんは、ペットの自然な姿を映すことを心がけているという。「うちは『お手』や『お座り』を教えていないし、普段からほとんど犬や猫に指示をすることなく暮らしている。おかげで私が撮影の時に近づいてもこちらに構えることなく自然体。寝てるときは寝たまま、遊んでいるときは遊んだままでいてくれる」(ちいむうととろさん)
自慢のペットの「私にだけしか見せない」表情を撮りたいなら、動物のペースに合わせるのが一番だ。休日はペットとのんびり過ごしながら「とっておきの一枚」を狙おう。ただし、撮影するときには、いつでもすぐにシャッターボタンが押せるよう準備するのはお忘れなく。スマホを手帳型のケースに入れたままにしていて、フタをあけて構えて……という間に絶好のシャッターチャンスを逃してしまってはもったいない。
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激しい動きは動画で撮影

「かわいい表情やしぐさを撮りたい」と思ってもペットに無理強いはできない。そんなときにおすすめなのが、動画での撮影だ。突然勢いよく動き出すことが多い猫などは、のんびりしているときは写真、動き出したら動画で撮影するといい。動画からキャプチャーして静止画(写真)にすることもできる。「犬も猫も『今から激しく動くかも』というときは、スローモーションで撮るときれいに撮れる」(ちいむうととろさん)
スローモーションで撮影するときは、iPhoneならカメラを立ち上げ、「スロー」を選ぶ。
(ライター 藍原 育子)
[NIKKEIプラス1 2021年10月16日付]
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