コーヒー風味の個性派ビール 茨城・つくばブルワリー

研究機関や大学、スタートアップが集積する茨城県つくば市。研究者や起業家が集まる機会も多い。残暑が続くなか、喉を潤すのがビールだ。クラフトビール製造のつくばブルワリー(つくば市)は、ひとひねり効かせたビールで注目を集める。
8月下旬に発売したエチオピア産のコーヒー豆を副原料にした最新のクラフトビール「TSUKUBA TOMORROW BEER COFFEE ALE VER.2」は、カフェ運営のコーヒーファクトリー(同)と共同開発した。
黒くなるまでローストした大麦や茶色の麦芽を使用。濃い色で香味の強いビール「ブラウンエール」をベースに、コーヒーファクトリーが焙煎(ばいせん)した豆で風味を加えた。
浅煎りで焙煎することで香りがフルーティーになるといい、甘みと酸味の両方を持つエチオピア産豆の風味がブラウンエールの味わいと混ざり合い、爽やかな喉越しだ。
第1弾として5月に同じエチオピア産の豆を使ったコーヒービールを発売したが、今回はより浅煎りの豆を使用。かんきつ系の香りが特徴の「シトラホップ」を使って、フルーティーな香りをより感じやすくした。
アルコール度数も5.5%と低くした。つくばブルワリー代表の延時崇幸さんは「残暑に飲む大人のアイスコーヒーをイメージした」と話す。
コーヒー風味のビールを提供するのは、つくば市中心部にある同社の直営店と、市が運営するスタートアップ育成施設だ。直営店の場合、価格は1パイント(473ミリリットル)で1000円。

起業が盛んな米国では、インキュベーターの施設内で地元産ビールなどを提供している。つくば市の五十嵐立青市長は、クラフトビールをテコに「起業家や研究者、市民が集まる『たまり場』をつくり、新ビジネスを生み出す機会を増やしたい」と期待する。
つくば市は2017年、「ワイン・フルーツ酒特区」の指定を受けた。筑波山周辺には個性的なワイナリーが多い。延時さんもワイナリーを手伝っていたが「ビールを醸造するブルワリーがない」と気づき、20年9月に起業した。
地元産の材料も積極的に使っている。ワイナリーでブドウを搾った後に残る果汁を使ったブドウ風味のビールを10月後半に発売する。残った果汁は通常、廃棄するが「食品ロスを減らし、環境負荷を軽減する意味でも再利用する意義は大きい」(延時さん)。
無農薬栽培したブルーベリーを延時さん自ら収穫。濃厚な果汁が苦味と甘味、ベリーのアロマを感じさせるビールも発売した。今後も「季節ごとにつくば市産の素材を使って特徴のあるビールを造りたい」という。
今は製造能力が300リットルの醸造タンクが3基だが、23年にも施設を新設。増産に乗り出す計画だ。「県のアンテナショップで提供したり、つくば市のふるさと納税返礼品にも活用できるようにしたい」と夢は広がる。
(つくば支局長 伏井正樹)

[日本経済新聞電子版 2022年9月15日付]
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