コンロまわりの油汚れ アルカリ性洗剤やラップ活用で

師走が近づき、大掃除を意識する時期になってきた。特に台所のコンロまわり油汚れがたまりやすく、早めに手をつけたい。効率のよい掃除に向けた洗剤選びのコツを専門家に聞いた。
あまり時間をかけずにしっかりと汚れを落とすためにも洗剤には気を使いたい。ハウスクリーニングサービスの「クリスタルミューズ」を主宰する木村由依さんは「洗剤の液性はアルカリ性、中性、酸性とある。コンロまわりのベタベタした汚れは主に酸性なので、反対の性質のアルカリ性の洗剤で中和させれば落としやすい」と説明する。
一般的にpHが11を超えるとアルカリ性、pH8~11は弱アルカリ性と呼ぶ。洗剤の容器に「キッチン用」と書かれていても、アルカリ性とは限らない。購入するときに必ず「液性」を確認したい。
油汚れがたまりやすいのはやはりコンロの天板になる。鍋の吹きこぼれ、油の飛び散りといった汚れを放置していると、酸化してかたくなり、落ちにくくなる。
木村さんは「天板全体にアルカリ性の洗剤を塗りつけよう。ガスコンロは細かい部品や凹凸が多いので、はけを使って隅々まで塗り広げるといい」と話す。ただし使われている素材によってはアルカリ性の洗剤が向かないケースがある。使用可能か事前に確認するようにしたい。
次にブラシを使って汚れをほぐし、スポンジでこする。五徳もコンロから外して流し台に置き、同じように汚れを落としていく。つけ置き洗いをするのもよい。最後にコンロ全体をぬれた布巾やタオルなどで拭いて仕上げる。
普通の汚れであればこの手順で落とせる。しかしそれでも難しい頑固な汚れ、酸化してかたく盛り上がった汚れがあったら、再びアルカリ性の洗剤を塗り、ラップで覆ってみよう。「洗剤が乾いて蒸発してしまうのを防げるので、汚れにより浸透してくれる。固くなった汚れが緩みやすい」と木村さん。
魚を焼いて油でべとついたグリルもアルカリ性の洗剤とお湯をかけてラップで包んでおくと、汚れが落ちやすい。

家事代行サービス「カジタク」を運営するアクティア(東京・中央)の山口奈穂子さんも「台所の油汚れにはアルカリ性の洗剤がいい」と勧める。アルカリ性の洗剤はやはり洗浄力が高く、汚れ落としに重宝するという。ただし手荒れの原因になるケースがあるので注意を呼びかける。
山口さんは「IHコンロの掃除には弱アルカリ性の洗剤が適している」と考える。弱アルカリ性で研磨剤を含んだクリームクレンザーを一面につけて、丸めたラップをスポンジ代わりにしてこするとよいという。「使い終わったら簡単に処分できる手軽さも魅力」と語る。
肌や環境への影響を考え、重曹やクエン酸といった素材を活用した「ナチュラル洗剤」に注目する向きもある。山口さんは「弱アルカリ性のセスキ炭酸ソーダを試してみる手はある」と助言する。
セスキ炭酸ソーダは重曹や炭酸ナトリウムで構成されており、結晶状で水に溶けやすい。スプレー容器に水を500ミリリットル入れ、小さじ半分から1杯程度加えてよく混ぜ、汚れに吹き付けて使う。「一般的なアルカリ性洗剤に比べれば汚れを落とす力はやや弱いが、小さな子どもやペットのいる家庭では安心して使えるのが利点」と山口さん。
アルカリ性の洗剤が使えない場合にはpH6~8程度の中性洗剤を活用しよう。スポンジなどで泡立ててから塗りつける。30分ほどそのままにし、お湯でぬらした布巾やタオルで拭き取る。
洗剤の働きを十分引き出すには時間をある程度かけて汚れに浸透させる必要がある。さらには温度にも気を配りたい。油汚れはとりわけ温度が低い状態では落ちにくい。場合によってはお湯を使う、ドライヤーで温風を当てる、といった方法も有効だ。
木村さんも山口さんも「汚れが付いてしまっても、まだ温かいうちに拭き取れば洗剤を使わなくても落とせる」と指摘する。ただ普段から気をつけてはいても、見落としがあったり、忙しくてつい後回しにしてしまったりする。
だからこそ大掃除が必要になるわけだが、そうはいっても長時間かけるのは大変だ。汚れに合わせた洗剤を選び、少しずつ掃除を始めて、きれいな台所で新年を迎えよう。
◇ ◇ ◇
電子レンジもきれいに

コンロやグリルと同様、油汚れがたまりやすいのが電子レンジだ。カジタクの山口さんは「食品カスが落ちていたり、液だれがあったりと、レンジの内側は想像以上に汚れていることが多い」と指摘する。
掃除するときは温めたタオルや布巾を活用したい。ぬらして軽く絞り、レンジで1~2分温める。加熱後は注意して取り出し、レンジの内側の汚れを拭き取っていく。汚れを落とすポイントは水分と温度だという。扉をはじめ外側にべたつく汚れがあるときはマイクロファイバークロスを使うとよい。試してみよう。
(ライター 藍原 育子)
[NIKKEI プラス1 2022年11月12日付]
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