魚焼きグリル活用術 弁当のおかず、同時調理で時短も

コンロに付いている魚焼きグリル。魚を焼く以外にも、様々な調理に使えるのをご存じだろうか。新年度を迎え、料理を始めるという人にもおすすめの活用術を聞いた。
海外から赴任した外国人に台所を案内したとき、魚焼きグリルについて聞かれたことがある。「魚しか焼けないのか?」「他に用途は?」と問われるも、筆者自身は汚れるのが嫌で魚も焼いていない。「トーストはできる」と答えるのが精いっぱいだった。
「確かにトーストは外側は香ばしく、中はふわっとおいしく焼けます」と話すのは東京ガスネットワーク料理教室の栄養士、大西綾子さん。「一度に数種の料理を作りたいときには、魚焼きグリルはコンロを加勢する強い味方になりますよ」と教えてくれた。片面グリルに代わって最近主流の両面グリルは、受け皿に水を入れる必要もなく、使い勝手もいいという。
点火して1分ほどで庫内は約300度まで温まる。このため、本来の用途である焼き魚は約7分で焼き上がる。鶏モモ肉なら1枚10分ほど。皮を上にして焼くと、包丁を入れたときにサクッと音がするほど香ばしく、肉はジューシー。厚みが3センチメートルくらいの牛かたまり肉は10分焼いて火を消し、庫内に置いておけばローストビーフが完成だ。「扉を開け閉めしても庫内の温度を保ちやすいのがオーブンと違う優れた点」と大西さん。
忙しい朝にはコンロで朝食を、グリルで弁当のおかずをと同時に調理できて便利だ。教わったのは、鶏の照り焼き、巣ごもり卵、蒸しブロッコリーの3品同時調理だ。
鶏モモ肉を一口大に切ってしょうゆ、酒、砂糖、みりん各同量を合わせて漬け込む。千切りにしたキャベツとニンジンにピザ用チーズ、塩、コショウを混ぜて、アルミケースに入れ、中央をくぼませて卵1個を割り入れる。このまま焼いて、ケースごと弁当箱に入れられる。ブロッコリーは小房に分けてアルミホイルに並べ、水と塩を振って包む。水は4房に大さじ1程度。
グリルは奥が最も高温になり、手前が低めなので、火の通りにくい順に材料を奥から並べる。予熱は不要で、すべてを並べたら点火して強火にする。8分後に火を消してブロッコリーをホイルごと取り出し、鶏肉と卵は庫内に3分置いて余熱で火を通す。
鶏肉はしょうゆが少し焦げて香ばしく、卵は中までしっかり火が通っている。卵の下にたっぷり敷いた千切り野菜はカサが減り、モリモリ食べられそう。驚いたのはブロッコリー。少量の水で色よく蒸され、程よい食感になった。
「ホイルに包まずに焼き野菜にしても、うまみが凝縮しておいしくなる」と大西さんが次に教えてくれたのが、焼き野菜のマリネだ。
パプリカ、タマネギ、ナス、アスパラガス、エリンギを食べやすい大きさに切り、サラダ油をまぶして強火で焼く。油をまぶすのは、乾燥を防いで、火の通りを早くするため。砂糖大さじ2分の1、塩小さじ2分の1、コショウ少々、酢とサラダ油各大さじ2を合わせたマリネ液を用意し、焼き上がった野菜を順に入れ、しばらくおいて味をなじませる。野菜は油で炒めるのとは違い、甘みが増して、香ばしく、エリンギは水分が抜けて香りも味も濃くなった。

同様に、枝豆はホイルを敷いて強火で約5分。冷凍品なら8分くらい焼くといい。ゴマ油とおろしニンニク、塩ひとつまみをからめ、ホイルを敷いた網の上で焼けば、味付き枝豆も簡単だ。熱の対流を妨げないよう、ホイルや食材で網全体を覆わず、四隅を開けておくのがコツだ。
筆者のように、手入れが面倒だからと魚焼きグリルをあまり使わない人は多い。気になる「使用後の手入れ」について聞いたところ、「加熱中は食材の水分が水蒸気となって噴き出すので、臭いが吸着することはない。使用後に放置すると庫内に臭いが残り、汚れもこびりつく。熱が冷めたら速やかに洗うといい」(東京ガスのハウスクリーニング担当、高原美樹さん)。網と受け皿は、スポンジで食器用中性洗剤を泡立てて油汚れと焦げ付きをやさしくこすり落とす。庫内は洗剤を含ませたぬれ布巾で油汚れを落としてから、水拭きすればいい。
意外に用途の広い魚焼きグリル。新しい調理器具を買う前に一度見直してみるのもよさそうだ。
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グリルプレートやグリルパンなどと呼ばれる調理器具を使うと、魚焼きグリルの可能性が広がる。グリルを汚さずに魚が焼けるし、蓋つきのものならパエリアや蒸し焼き料理、ギョーザ、ピザもできるという。
和平フレイズ(新潟県燕市)は鉄製やセラミック加工の魚焼きグリル用グリルパンを販売。「臭いがつくし、掃除が面倒だから魚焼きグリルは使わない」という声を受けて開発したという。揚げ物の温め直しも得意で、天ぷらやカレーパンは3~4分でサクサクに。弁当作りに活用する社員も多いという。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEI プラス1 2022年4月9日付]
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