イルミネーション、スマホで撮影 ピンボケ防ぐコツは

冬の街を彩るイルミネーション。しかしスマートフォンで撮ったら見たときと違う……とがっかりしたことはないだろうか。フォトグラファーに上手に撮るコツを聞いた。
「ただシャッターを押すだけでは、見たままの風景を写真にするのは難しい。特に夜間の屋外で撮るイルミネーションは、明るさが不足するので失敗しやすい」と話すのは、フォトグラファーの鈴木愛子さん。「いくつかのワザを知るとうまく撮ることができる」と教えてくれた。
写真撮影では、光や明るさがとても大切だ。まず夜間の撮影は、フラッシュをオフにしておく。フラッシュを使うと近くの被写体ばかりが明るくなり、背景のイルミネーションが暗く写ったり、不自然な明るさになったりする。
その場にいると十分に明るく感じるイルミネーションだが、写真を撮るには光量が足りていないことが多い。このため、狙った場所と違うところにピントが合ってしまう、いわゆる「ピンボケ」になりやすい。防ぐには、画面上で撮りたい物をタップして、ピントを合わせる必要がある。
また、露出調整も必要だ。最近のスマホカメラは性能が向上しているので、昼間ならカメラに備わっている「オート露出機能」でほぼ問題なく撮影できる。しかしイルミネーションは夜間であることに加え、光が安定しない。
iPhoneの場合は、画面をタップしてピントを合わせると、黄色い枠と太陽のマークが画面に表示される。この太陽マークを指で上げ下げして明るさを調整する。アンドロイドの場合は、カメラの機能設定などで露出補正する。少し面倒でも、撮るたびに露出調整することをおすすめしたい。
手ぶれにも要注意だ。暗い場所ではシャッタースピードが遅くなるので、被写体ブレが起こりやすい。スマホが傾かないよう、両手でしっかり持って固定しよう。ベンチやテーブルにスマホを置いたり、同行者の肩を借りたりして固定させるのもいい。
イルミネーション会場の広がりや奥行きを表すには、カメラアングルがカギになる。鈴木さんのおすすめは「ハイアングル」。「少し高い位置から見下ろすようにして撮ると、風景に広がりが生まれる」という。歩道橋の上など、周囲の少し高いところから撮ってもいいが、スマートフォンを持った手を高く上げて撮るだけでもハイアングルになる。周囲の人混みに注意して、自撮り棒を使うのもいいだろう。混雑時にハイアングルで撮ると、目線の高さで撮るよりも人が写り込みにくいという利点もある。
「街路樹のような横に長い風景を1枚の写真に収めたいときは、写真の中で手前と奥を意識した『対角線構図』で撮るのがいい」と鈴木さん。右上や「3カ条」の写真のように、建物などの被写体を手前に入れ、そこから斜めの方向に被写体が並ぶようにして撮影すると、視線が自然と奥へ向かって誘導され、平面の写真に奥行きが生まれる。
正面からイルミネーションを撮っても、写真には限られた範囲しか写らない。かといって全体を入れようと引いてしまうと、迫力に欠ける。対角線構図をうまく使うと、街路樹に沿って輝く電飾の迫力を十分に見せることができるのだ。

ドラマチックな一枚を撮るなら、マジックアワーを狙うのもいい。マジックアワーとは、日の出後や日の入りの少し前の数十分間のこと。太陽の残光で、淡い青やオレンジ色の柔らかい色合いの空が見られる。イルミネーションを撮影するなら、日没の数十分前から準備しよう。完全に日が暮れると背後の建物などは暗く沈んでしまうが、空の明るさが残っているマジックアワーなら、背後も比較的はっきり写すことができる。表情豊かな写真が撮れるだろう。
遠くにあるものを拡大して撮ろうと、デジタルズーム機能を使うのはNGだ。夜間は画像が荒くなりやすい。アップで撮りたい場所はズームではなく、被写体にできるだけ近づいて撮るといい。
鈴木さんのアドバイスは「写真は引き算で考える。目の前の風景をすべて写そうとするのではなく、引き立てたい被写体をしっかり決めて、範囲を絞るといい」。プロのような洗練された一枚を撮るには、あれもこれもと欲張らないことも大切だ。
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人物の正面からも光を

イルミネーション会場で人物を撮影すると、背後の電飾に比べて顔が暗く写ってしまいがちだ。人物もきれいに写すには、街灯や道路沿いの建物の照明などを利用するといい。光が人物の正面からも当たるようにして撮影すると、顔も明るくなる。補助ライトとして、同行者のスマホのライトを当てるのもおすすめだ。
明るさが足りているかは確認が難しいので、自撮りで試してから撮影するといい。またスマホカメラの「ポートレートモード」なら背景をほどよくボカしてくれるので、プロが撮ったような仕上がりになる。
(ライター 藍原 育子)
[NIKKEI プラス1 2022年1月8日付]
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