食卓きれいに保ちたい 原則持ち込まず、動線考え収納

食卓の上は気づくと物があふれ、部屋全体が雑然とした雰囲気になりがちだ。すっきりした状態に保つためにどういう点に気をつけるべきなのか。整理収納の専門家に基本を聞いた。
「ダイニングテーブルは本来、食事をして、くつろぐところなので、物を何も置かないのが基本だ。ただ暮らしの中心となる場所でもあり、使いたい物を持ち込むうち、あっという間に散らかる」。整理収納アドバイザーの鈴木久美子さんはこう指摘する。
片付かないのは物を置く定位置が決まっていないケースが多い。鈴木さんは「収納場所にしまうと、どこに何があるか分からなくなる」といった相談を受けるという。結果として物がテーブルの上に出しっぱなしになる。
文房具やスマートフォンの充電器、テレビのリモコンなど、よく使う物はひとまとめにしておきたい。持ち手が付いている箱を用意しよう。食事や来客があったときには箱ごと移動できるようにする。置いてある場所がはっきりすれば、収納した後に見つからなくなって改めて買い、物が増える悪循環も防げる。
帰宅すると、郵便物や脱いだ上着、カバンなどを食卓や椅子に置く人もいるだろう。整理収納アドバイザーの中村真寿美さんが注目するのは帰宅後の動線だ。
職場から戻って家事をしたり、くつろいだりする。子どもが学校から帰って塾に出かける。中村さんは「動線をチェックしていくと、荷物をどこに置いているか現状を把握しやすくなる」と話す。
不要な郵便物やチラシはすぐに処分できるように玄関にゴミ箱や古紙回収ボックスを置いておく。コートやカバンは廊下に設置したフックに掛けたり、棚やタンスに入れたりする。動線上に荷物をしまう定位置をつくり、食卓周辺にまで持ち込まないですむ工夫をしよう。
中村さんは「同居する全員の協力がないとダイニングテーブルをきれいに保つのは難しい。みんなで話し合って物それぞれの場所を決めよう。いったん仕組みができてしまえば、片付けが楽になる」と説明する。

動線上に十分な収納場所を確保するのがなかなか難しいケースもある。そういう場合、中村さんは食卓の近くに「ざっくりボックス」を1人に1個ずつ準備しておくよう提案する。帰宅してすぐのときに荷物を仮に置いたり、食卓まわりで使いたい物を一時的に入れたりしておく箱だ。
食卓や椅子の上に物を置かないようになるうえ、箱ごと別の部屋へ持っていって片付けるのも簡単だ。「『テーブルには物を置かない』というルールはしっかり守る。ただし少しくらいはこの箱に入れておいてよい。こうした比較的緩い仕組みにした方が長続きする」と中村さん。
新型コロナウイルス禍でリモートワークが普及し、食卓が仕事場になっている人は多い。子どもの勉強場所にもなる。それでも鈴木さんは「食事の前には仕事や勉強の道具は全部片付ける。メリハリを付けるのが大事」と強調する。「続きは食後に」「明日もリモートだから」などと考え、卓上に荷物を置いたまま食事をすると、それが習慣になってしまう。
仕事や勉強の道具を片付けるのに便利なのがキャスター付きのワゴン型収納だ。パソコンや資料、参考書などを置き、簡単に動かせる。テーブルの下に収納できる大きさの品もある。収納したい物の種類、部屋や食卓の大きさや状況を考えながら選びたい。
食卓が散らからないように用意した仮の収納場所が物であふれていては元も子もない。鈴木さんは「何事も適正量が大事だ。あくまでも今使っている物の仮の置き場と考え、使い終わったら本棚など本来の場所に戻すようにしよう」と注意を促す。
中村さんも「ざっくりボックスが物であふれそうになったら、各自が自室に物を持ち帰る習慣をつけるようにしよう」と呼びかける。
食卓の配置によって物がたまりにくい状況をつくるのもよい。中村さんは「テーブルの片側が壁についていると、そこに物がたまりやすい。思い切って壁から離して置いてみるとよい」と助言する。鈴木さんも「壁側に物を寄せるだけで片付けた気になってしまう。壁とテーブルが離れていれば心理的に物を置きにくくなる」と同意する。
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壁面・テーブル下の空間活用

収納場所として壁面やテーブルの下を利用する方法もある。中村さんは「ティッシュペーパーはケースに入れて壁につるすと場所を取らない。突っ張り棒を使ってテーブルの裏に固定したり、テーブルの下に棚をつくったりもできる」と説明する。
リモコンを壁面に収納できるツールもある。鈴木さんは「エアコン、テレビ、照明とリモコンが多い場合、思い切って音声操作できるスマート家電に替える手もある。リモコンひとつで様々な家電を操作できるものもあって便利だ」と語る。
(ライター 李 香)
[NIKKEI プラス1 2023年1月7日付]
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