NY人気ギョーザ2割値上げ 物価高が庶民の昼食直撃

ニューヨークでエスニック料理のメニューとして人気の高いチベットのギョーザ「モモ」が物価上昇圧力の影響を受けている。お手ごろに提供されてきた一皿が、わずか半年間に2割近く値上がりした。平均価格は8個入りが7~10ドルだ。
ウーバーの運転手を務めるツェリング・ギャッツオさんは地元ニューヨーク市クイーンズ地区ジャクソン・ハイツの屋台で買うモモをドライブ中の昼食として頻繁に利用してきた。一口でほおばれるため運転手には最適のランチだった。だが、「最近は高すぎて気が引ける」と渋い口調だ。
昨年までは屋台で8個入り6ドルほどで売られていたモモが最近は平均7ドルになった。レストランによっては10ドルもする。同地区でモモを専門に販売するフードトラックは急激なインフレを示すように、値段の変更を粘着テープの上にあわてて書いたような跡が見える。
物流混乱が招いた素材価格の高騰、調味料不足など物価上昇が最終価格に響いたようだ。一見わずかな差額とはいえ、ギグエコノミーの中で働くツェリングさんにとっては1ドルの増加も懐が痛い。
モモはチベットやネパールなどヒマラヤ地方のギョーザだ。小麦粉の皮で包んだ中身は牛、鶏、野菜、チーズ、ジャガイモなどバリエーションがあり、調理方法も蒸す、焼く、スープに入れるなどさまざまだ。
チベット人たちは好みの素材を使い、包み方に特徴をつけ「我が家の味」にする。小麦粉をこねて皮を作り、素材を包みあげるまでの作業を祖父母から孫まで一家が総出で作るプロセスを大事にしている。お祝いなどの特別な行事から、通常の食卓まで国民食として位置づけられている。
ツェリングさんは10年ほど前にネパールの首都カトマンズから米国に移民してきた。「ネパールでもレストランで1個25ネパール・ルピー(24円)だったモモが最近は150ネパール・ルピーに急騰しているらしい。一般人の口に入るのかな」。世界中で急速に広がっている物価高騰に首をかしげていた。
(ニューヨーク=河内真帆)
[日経MJ 2022年2月7日付]
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