マニラ 大衆ブランデー 庶民の心つかみ販売量世界一

フィリピンには世界一の販売量を誇るブランデー「エンペラドール」がある。750ミリリットルの瓶1本は100ペソ(約250円)程度からで、低所得者層でも手に取りやすい。ブランドと同名の蒸留酒大手は買収も駆使して海外展開を加速しており100カ国以上で商品を販売している。
マニラにあるスーパーマーケットやコンビニで必ずと言っていいほど見かけるのが、エンペラドールのブランデーだ。100ペソから299ペソという低価格帯にアルコール度数の異なる幅広いラインアップを用意している。ブランデーの長い歴史を持つ旧宗主国のスペインの影響もあり広く親しまれている。
一説では100万店規模とされる同国の零細店サリサリストアにも、きめ細やかな販売網を持つ。高級なコニャックなどとは一線を画し、安さが相まって貧困層をも顧客基盤とすることが特徴だ。重層的な深みはないが、フィリピン人が好む、甘みが強いテイストだ。
エンペラドール社は、実業家アンドリュー・タン氏が率いる財閥大手アライアンス・グローバル・グループの一角を担う。業績は好調で21年12月期の売上高は前期比6%増の559億ペソ、純利益は同25%増の99億ペソと増収増益となった。
成長を支えるのが強固な国内基盤に加えて、積極的な海外展開を進めていることだ。英酒類専門誌ドリンクス・インターナショナルによると、20年のエンペラドールの販売量は2360万ケース(1ケースは9リットル)と蒸留酒の分野で世界5位、ブランデーでは世界一だった。
海外事業を統括するエンペラドール・インターナショナルのグレン・マンラパズ社長は、グループの海外売上高比率を約35%から、25年に50%以上に高めることを目指す。フィリピンと同じくブランデーを好むアフリカ市場などを強化する方針だ。
海外展開の加速に合わせ、エンペラドールを軸としながらも買収を通じて高価格帯のラインアップも充実させている。ウイスキーのダルモアやホワイト&マッカイ、ジュラのほかブランデーのフンダドールといった多ブランド戦略で市場を開拓する。
(マニラ=志賀優一)
[日経MJ 2022年6月6日付]
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