我が家のクリスマスに キャンプで人気、ビア缶チキン

クリスマスのごちそうといえば丸鶏のローストが定番だが、少々ハードルが高い。そこで、アウトドアで人気の「ビア缶チキン」をおすすめしたい。意外に簡単で、インドアでもOKだ。
「ビア缶チキン」はバーベキューの本場、米国生まれ。中身を半分ほど残した缶ビールの上に丸鶏をかぶせて、バーベキューグリルで蒸し焼きにする豪快な料理だ。外側はパリッと香ばしく、中はビールで蒸されて、しっとりジューシーに焼き上がるのが魅力という。キャンプブームの日本でも、人気上昇中だ。
アウトドア用の料理と思われているが、家庭用のオーブンでも作れる。世界各国の料理教室を主催するニキズキッチン(東京・渋谷)でアメリカ料理の講師をしているサチさんを訪ねると、「バーベキューグリルの場合は、蓋をして蒸し焼きにするが、オーブンならその必要がない。炭火の調節なども不要で、簡単に作れる」と教えてくれた。
一般的なローストチキンと違って、詰め物は不要。丸鶏を立てた状態で焼くのがポイントだ。「立てた丸鶏から肉汁が下に落ちるので、クリスピーに焼き上がる。下にゴロゴロと大きめに切ったジャガイモやニンジンなどの野菜を置いておくと、丸鶏が倒れにくくなり、肉汁がかかった野菜が一緒にローストされておいしくなる」とサチさん。
丸鶏を購入するときは、手持ちのオーブンの高さに合わせ、中に入るサイズのものを選ぼう。個体によって異なるが、1キログラムくらいの丸鶏で高さは18センチメートルほどだ。
缶の種類によっては外側の印刷やコーティング剤が加熱され、有害物質が放出される懸念もある。ビール缶をそのまま使うより、耐熱グラスやプリン型にビールを入れて使用するほうが安心だ。
調理にかかる前に、丸鶏は冷蔵庫から出して1時間ほどおいて常温にしておく。皮をクリスピーに焼くためには、表面の水分をペーパータオルなどでしっかりと拭きとるのがコツだ。その後、表面にまんべんなくサラダ油やオリーブオイルなどを塗り、表面と内側にスパイスをもみ込む。
味付けはシンプルに塩・コショウだけ、あるいは市販のハーブソルトなどでもよい。「多民族の米国では、それぞれのルーツによって、さまざまな味付けで楽しんでいる」(サチさん)というように、バリエーションは無限だ。
例えば、スパイシーな料理を好むラテン系の人たちはスパイスにカイエンペッパーを加える。アジア系は、しょうゆとはちみつで作ったタレを塗ったり、ケチャップとウスターソースを合わせたものをバーベキューソースにしたり。好みの味を試してみるといいだろう。
「液体のバーベキューソースを塗る場合は、焼き上がりの15分くらい前にソースを塗ると、きれいな照りがでる」とサチさん。約1キログラムの丸鶏なら、焼き時間は180度で50分ほど。家庭用オーブンにはクセがあることが多いので、途中で前後を180度回転させるとムラなく焼ける。
焼き上がったら10分ほど置いて肉を休ませてから、ビールの入った容器を抜き取り、大皿に盛り付けよう。クリスマスカラーを意識して、ケールやパセリなど緑の葉で囲み、一緒にローストした野菜やトマトなどを盛り付ければ華やかなメイン料理の完成だ。

慣れていないと、丸鶏を切り分けるのも難易度が高いかもしれない。切り分けるコツは、まずモモ肉を切り離し、胸肉の真ん中に切り込みを入れてから骨に沿って切り開くようにするときれいにできる。残った骨や肉は別の料理に活用できるので、多少骨に肉が残っても気にせず、大胆に切り分けよう。
オーブンに丸鶏が入らなかったり、丸鶏を扱うのが苦手だったりする場合は、手羽元や骨付きモモ肉、胸肉などを、チャック付きのポリ袋に入れてビールや砂糖、塩とともに1時間~一晩マリネしてからスパイスをもみ込んで焼く調理法もおすすめだ。また、ビール以外に、シードルやりんごジュース、コーラ、ジンジャーエールなどでもおいしくできるという。
食べ切れなかったら、サラダやサンドイッチ、骨を使ったスープなどにリメークすれば、飽きずに食べられる。今年のクリスマスはローストチキンに挑戦。おいしく焼いて、残さず食べつくそう。
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残った骨も再利用

残ったローストチキンの活用術を管理栄養士で料理研究家の牧野直子さんに聞いた。アボカドやレタス、セロリなどとドレッシングであえるサラダは定番。身を細く割き、生春巻きの具材にするのもおすすめだ。
「わが家では、骨を水から煮出してスープをとる」と牧野さん。骨のまわりに残った肉からも味が出て、おいしいスープになる。キャベツやタマネギを加えてポトフ、トマトと野菜を加えてミネストローネにとアレンジも広がる。ご飯とほぐした身、チーズを加えてリゾット、ごま油で風味を付ければ中華がゆにも。
(ライター 土井 ゆう子)
[NIKKEIプラス1 2021年12月4日付]
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