帽子のお手入れコツは 水分要注意、形崩れの原因に

夏の強い日差しから身を守る帽子。汗をかくと、においが気になる人も多いだろう。放置すればシミやカビの原因になる。お気に入りの品を長持ちさせるため、手入れの方法を確認しよう。
夏用の帽子は通気性のよい綿や麻、麦わらといった天然繊維が多く使われている。こうした素材はぬれると縮んだり、変形したりして、形崩れの一因になる。安易な水洗いは避けるようにしたい。
明治創業の麦わら帽子の老舗、田中帽子店(埼玉県春日部市)の中田恭兵さんは「手入れの基本は陰干しでよく乾かすこと」と話す。雨などでぬれてしまったら、まず水分をしっかり拭き取る。
帽子の内側に縫い付けられた「スベリ」と呼ばれる部分は直接肌に当たるので、汗や皮脂、女性ならファンデーションで汚れやすい。使った後は固く絞ったタオルで軽くたたくように水拭きする。汗や汚れを拭き取っておけば、表面に浮き出るシミやカビを防げて帽子が長持ちする。ファンデーションが付いたら「少量のメーク落としを直接付けて指で軽くなで、タオルで拭き取る」(中田さん)。
帽子を乾かすときは厚紙を使う手がある。頭が入る部分の外周より少し大きめの筒状にして立て、帽子を上下逆さにして置く。筒につばを引っかけるようにして収めるとよい。こうすると、形崩れを防げるほか、スベリが乾きやすいのだという。早く乾かしたいからとドライヤーの熱風を当てるのはやめよう。生地を傷めたり、麦わらなどが割れたりする恐れがある。
水洗いができない天然繊維は定期的にブラシをかけ、ほこりを落とすのも大切だ。帽子専用のものもあるが、馬毛など柔らかい洋服ブラシで代用できる。上から下に流すように軽くブラシをかける。
帽子販売大手の栗原(大阪市)が展開する専門店「オーバーライド神宮前」では「3~4年前から洗濯機洗いや手洗いが可能な帽子を増やしている」(松田みなみさん)。一見すると天然繊維のようだが、実は水洗いできる化学繊維でできた帽子も多いという。水洗いが可能かどうかはラベルを見て確認する。洗濯機で大丈夫な場合には帽子だけを入れて3分程度洗う。
松田さんは「形崩れを防ぐため、内側にタオルを詰め、帽子のサイズに合った目の粗い洗濯ネットに入れて洗ってみてほしい」と助言。すすぎと脱水の機能も使えるが、時間は短く30秒程度にする。
手洗いできる場合、自宅でしてみるのも一案だ。石原クリーニングきんすシミ抜き研究室(横浜市)の金須壮央さんは「帽子は汗や紫外線で生地が劣化し、色落ちしやすくなる。水にぬらす時間は短く、素早く洗って乾かすようにしてほしい」と説明する。
まず洗面器に水をため、洗濯用の中性洗剤を2~3滴入れる。帽子の頭を下にして水に入れ、左右に3~4回泳がせるように軽くゆする(振り洗い)。スベリ部分を軽くこすり、汚れを落とす。さらに水を替えて軽くゆすってすすぐのを2回ほど繰り返す。柔軟剤を使う場合、すすぎの水に2~3滴含ませるとよい。

水気を切るときは絞ったり、大きく振ったりはせず、タオルを内側に詰めて水分を移し、表面は丁寧に拭き取る。その後、タオルを詰めたまま風通しのよい場所で乾かす。伏せたザルや2リットルサイズのペットボトルにかぶせるなど、浮かせた状態で干そう。
水洗いが可能でも、多色だったり、色が濃かったりするもの、生地が古いものは色落ちや境界線がにじむなどのトラブルが起きやすい。ラベルが海外表記の帽子にも注意したい。金須さんは「その帽子の製造国では水洗い可能でも、日本では色落ちする例がある」と指摘する。この場合、スベリを清潔にする程度に留めたほうが安心だ。
普段の手入れにも気を配りたい。毎日のように帽子をかぶるオーバーライドの松田さんは「取り外して繰り返し洗えるテープをスベリにはっている」と話す。帽子売り場やネット販売で入手でき、週1回の頻度でテープだけ洗濯機で丸洗いしているという。
素材や形によって帽子のかぶり方、扱い方も変わってくる。「天然繊維で中心がくぼんだ中折れ帽子だと、持ち方によってはひび割れの恐れがある。着脱するときは両手でつばを持つとよい」(松田さん)。購入時に注意点を聞いておくのも大事だ。
◇ ◇ ◇
針金ハンガー曲げて干す手も

帽子を洗った後、乾かすときも注意が必要だ。ザルなどにかぶせて浮かせて乾かすケースが多いが、石原クリーニングの金須さんは針金ハンガーを使った干し方を紹介する。ハンガーの両端を折り曲げ、帽子を引っかけられるようにフック状にするそうだ。
天然繊維でできていて形崩れしやすいもの、デザイン性が高いものは収納も工夫したい。田中帽子店の中田さんは「筒状にした厚紙に逆さに入れておこう」と勧める。乾燥剤も一緒に袋に入れて密封すると、湿気や形崩れを防ぎやすいという。試してみよう。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEI プラス1 2022年7月2日付]
関連リンク
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。